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パソボラ・サポート群馬の活動と未来

種子田信宏

1 はじめに

 活動紹介をする前に、毎月1回開いているパソボラ・サポート群馬(以下PSG)の勉強会の様子をのぞいてみましょう。
 勉強会場からは、パソコンの画面を読み上げるスクリーンリーダーと呼ばれているソフトが出している音声が聞こえてきます。その音の出ている数台のパソコンの周りには、白杖を持ち、またサングラスをかけた視覚障害者が何人も集まっています。一部には点字ディスプレーが付けられているパソコンもあり、点字に慣れた視覚障害者が自分の手足のように使いこなしています。
 少し離れたテーブルでは、ノートパソコンを囲んでフリーソフトウェアの使い方を勉強しているグループがあり、車いすや白杖の人が会員自作のテキストを手に学習しています。テキストの中には点字版や拡大文字版もあります。パソコンを操作している人の中には、マウスの替わりとなるトラックボールやスティック状の入力装置を使っている人もいます。
 そのグループの会話は、近くのスクリーンに次々と表示されています。よく見るとタタタタッという音をたててキーボードを叩いている二人組がいます。聴覚障害者のためにその場の話しの内容をリアルタイムに表示しているのです。もちろん、その向こうには手話で会話している人たちもいます。
 私たちPSGは、平成10年に結成され、その会員は平成12年度末現在、約80人。そのうち3分の2が何らかの障害を抱えた人たちです。PSGの特徴は、前述した勉強会の様子からもわかるように、障害者自身が主体になって活動していることです。また、点字や拡大文字資料、手話通訳や文字通訳、送迎などさまざま々な配慮を行い、どのような障害者でも活動に参加できるようにしています。

2 活動紹介

 ここでは、平成12年度事業を中心に活動を紹介します。

●インターネットの活用

 基本的な会員間のコミュニケーションは、メーリングリストやホームページによって行われています。内容や障害別に8種類に設置したメーリングリストでは、毎日、活発な意見が飛び交っています。また、ホームページには、各種イベントへの参加・不参加表明用フォームやチャットルームがあり、ここでも会員同士の交流が図られています。各種書類などの資料コーナーもあります。もちろん、メーリングリストもホームページも、視覚障害者でも利用できるようにデザインされています。そのほか、月1回、Eメールを利用したメールマガジンも発行し、毎月の活動状況を広報しています。

●在宅障害者へのパソコンサポート活動

 PSGでは、依頼のあった障害者のお宅を訪問し、パソコン本体から各種特殊機器までの購入相談・設置・インストール・インターネット接続・トラブル対策などを行っています。基本的には、Eメールが使えるようになり、会のメーリングリストに参加できるようになるまでを支援します。
 また、管理者の理解が得られていて、入所者自らがやる気を持っているなど、一定の条件が整えば、施設への定期的な訪問サポートも行っています。毎月、数十件ほどのパソボラ派遣依頼があり、サポート役のメンバーは、それぞれの依頼に応じて群馬県内を駆け巡っています。PSGの一番基本的な活動です。

●定例勉強会・運営会議

 定例勉強会はだれでも無料で参加でき、基本的なパソコンの知識を身につけたり、会員同士の交流を図る場です。また、運営会議は運営にかかわりたいと思っている人ならだれでも参加でき、会の活動について討論する場です。それぞれ毎月1回ずつ行われています。

●パソコン点訳

 会の催しなどで点字資料が必要になった場合、必要なデータを点訳ソフトにかけて編集し、すぐに点字プリンタへ出力できるようにしています。

●パソコン要約筆記

 リアルタイムに字幕を作る活動です。練習会や講習会は、磁気ループが設置され、パソコンと接続可能なテレビやビデオ、プロジェクタ用スクリーンの用意された部屋で、月2回のペースで入力者の養成を行っています。また自治体や関係団体などの依頼で入力者が県内外で活動しています。

●各種独自イベントの開催

 平成12年度には、NTT東日本株式会社群馬支店のプレゼンテーションルームを利用して、インターネット体験会を3回開催しました。また視覚障害者のIT利用についてのシンポジウムの開催、スイッチボックス作成講座も行いました。

●行政・団体などの委託や各種協力

 群馬県身体障害者団体連合会主催のパソコン講習会の委託を受け、2日間にわたり、知的・精神障害者も含めた15人が受講しました。ほかに、県の在宅障害者へのパソボラ派遣事業の支援者講習やコーディネートの協力、県主催による情報化フェアではバリアフリーコーナーの企画支援、および独自ブースの設置も行いました。
 ほかにも、地元のさまざまな当事者団体とも交流しています。また障害者・高齢者の在宅就労について考える全国NPO、We CAN!に団体加盟し、日本障害者協議会の催しにも参加するなど、全国各地の団体とも交流を持っています。

3 課題と展望

 PSGの活動は、時代の波に乗ったこともあり、各方面から非常に注目されています。特に、行政からは新しい分野のパートナーとして期待され、お互いにより良い関係を築こうとしています。
 群馬県は、障害者のIT利用について積極的な施策を行っています。一昨年よりパソコン周辺機器、また昨年度よりパソコン本体についても購入補助制度が実施されています。この状況と並行するかのようにPSGは、平成13年度より県が社会福祉総合センター内に設置する「障害者情報化支援センター」の運営業務を受託する予定です。このセンターには、障害者向けのパソコンと各種機器を取りそろえ、毎日専門知識を持ったメンバーが常駐し、来訪者の対応をします。
 また高崎市では、市主催の国のIT講習事業のうち2講座を障害者向けと位置付け、その企画・運営についてもPSGで受託することになりました。パソコン要約筆記の依頼についても、個人への依頼ではなく、団体への依頼としたいという申し出が行政・団体から増えてきています。
 これまでPSGでは、水平平等の個人の集まりという考え方を持ち、任意団体としてやってきました。しかし、このように幅広く、かつ責任ある活動を期待されるようになり、任意団体としての活動に限界を感じたため、本年中にNPO認証を受けるべく準備中です。
 今後の課題として、障害者がIT技術を身につけた後どう活用するか、そこの展望が現状ではあまり語られていません。いわゆる就労問題を、これからは、先にあげたWe CAN!とともに、パソボラをつうじて在宅就労についても取り組んでいきたいと思っています。

(たねだのぶひろ パソボラ・サポート群馬副代表)