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知的障害児施設の機能をより明確に

篠崎薫

 児童施設、それも知的障害児施設のような入所型の児童施設のことを考えてみましょう。
 この種の施設は、子ども自身が有する課題が重かったり、家族が抱える課題が大きかったりする場合に利用されます。本当ならその地域に子どもと家族を支える力があれば、入所型施設が利用されることは少なくなるでしょうし、また実際には利用は少なくなっていますが、それでもまだまだ利用されているのが、入所型の施設です。
 入所型児童施設には、閉鎖性や集団生活の弊害や子どもと信頼関係をつくることの困難さなど、問題がいくつかあります。さらに知的障害児施設の場合は、年齢超過もOKという仕組みがあります。だから、制度としては児童施設であっても18歳以上の利用者が相当数生活しているところが多く、だれのための何をする施設なのか、不明確になってしまう傾向があります。
 子どもの入所利用が実際に少なくなっていることは、良く解釈すれば、子どもや家族を地域で支える仕組みが少しずつ整ってきたと考えることもできますし、そうであれば歓迎すべきことです。しかし、知的障害を有するために多くの課題を抱えた子どもやその家族を支援する専門機能として知的障害児施設を捉えた場合、その機能が曖昧になったり弱くなったりすることは、地域生活を維持するうえでもマイナスと言えるのではないでしょうか。
 入所型施設である知的障害児施設であっても、地域生活支援の一翼を担う社会資源という位置付けが基本になるでしょう。そのうえで、子どもの安全・安心・安定を確保するための緊急対応として、一時的な入所利用を必要とするような子どもと家族への支援をさらに強化することが必要です。地域の関係機関と積極的に連携すること。広く相談を受け付け、子どもの課題を家族をはじめ関係者と共に考えること。家族の課題へも対応できる機能を持つこと。必要があれば柔軟な短期利用に対応できること。そのような取り組みが、結局のところ、子どもの人格を豊かに育み「子育て支援」にもつながるのではないでしょうか。
 子どもにとって信頼できる大人を、あるいは信頼できる地域をつくり出していくために、知的障害児施設は児童施設としての機能をより明確にする必要があります。

(しのざきかおる 社会福祉士)