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泊まりがけでいける家

吉浦美和

 年末年始の期間、車いす利用の留学生がわが家にホームステイした。事務局の話では、ホームステイさせたいという申し込みはたくさんあったが、いざ車いすと聞くと、みんな尻込みをされたそうで、夫婦とも車いす利用であるわが家に白羽の矢が立ったらしい。そんなに車いすの人が住める家って、日本中にないのかしらん?
 わが家はマンションの1階部分の1室を基礎工事前から注文して買ったので、かなり住みやすい家であるが、バリアフリー化の経済的負担は思ったより少なかった。
 東京の江戸川区では、住宅改造は全額公費負担と聞く。福岡市では所得制限付きの住宅改造助成や、増改築時の障害者高齢者住宅整備資金制度があるが、もともと制限のある建物の改造では制約も多く、なかなかすべての人が歳をとっても安心して住み続けられる良質の社会的資源としての住宅の蓄積にはならないのではないか。
 住環境の豊かさではスウェーデンを思い出す。ちょうど10年前になるが、21歳の車いす利用の女子学生の一人住まいにホームステイした。ストックホルム市営住宅の一件で、一般用の住居の台所セットを取り外し、車いす利用者用の台所を組み込んだのだそうだ。電動で上下し、前方に出てくる戸棚も設置可能だったが、つかまり立ちができるので希望しなかった。バスルームも一般用のままで、十分車いすで使用できる広さだった。高齢化による体の変化は標準仕様に織り込み済みだったのだ。
 もちろん、彼女がこの住宅を退去する場合にも現状復旧責任はなく、次にも車いす利用の若者が住むだろうとのことだった。
 スウェーデンでは障害によって改造が必要になると、個人住宅でも全額公費負担で改造がなされるという時代があった。ただそれでは資金がいくらあっても大変なので、すべての住宅で、ドアや廊下の幅、広い風呂場とトイレが標準規格となり、最小限の改造で住みつづけられる住宅が大量にストックされるようになった。これらの住宅が、以前から保障されていた「自分の住宅で医療やホームヘルプを受ける権利」をなお後押しすることになっている。自然で当たり前である。縦割り行政の克服や国民の保健福祉向上に努めてきた実績である。
 日本でも、もっと根本的な住宅政策を行う時期だと思う。

(よしうらみわ 電車に乗るぞ障害者の会副代表)