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日本脳外傷友の会の活動

東川悦子

 「日本脳外傷友の会」は、昨年4月1日に設立されました。高次脳機能障害をもつ脳外傷の当事者・家族が各地に友の会を設立するに至る経過と問題点は、本誌でもたびたび取り上げていただきました。
 高次脳機能障害の原因として、脳血管障害等に起因する方々の会は、すでに全国失語症友の会、日本脳卒中協会、もやの会等があり、立派な活動を展開しておられます。
 わが国では、年間1万人もの交通事故による死亡者、10万人もの負傷者がいます。ところが、脊髄・頸椎損傷者の連合組織はあっても、外傷性脳損傷による高次脳機能障害者の連合組織はないのです。認知障害、行動障害等、さまざまな問題をもちながら、十分なリハビリも受けられず、また地域のサービスをも利用できないで福祉の谷間に置かれているのは、有力な組織がなく、訴えの声を上げてこなかったためでしょう。
 これでは、現状を打開することはできません。ぜひ全国ネットワークを作り、力をつけて国へ政策、制度の改善を要求したいという趣旨で「日本脳外傷友の会」が結成されたのです。
 一昨年、アメリカの脳外傷事情を視察に行き、バージニア州の家族会との交流により、すでに世界脳損傷大会が開かれ、3か国もの代表が参加していることを知りました。各国の代表と交流し、情報を交換するためには、日本からも代表を送れるような組織がなくてはなりません。このことも全国組織結成を迫られる動機に拍車をかけました。
 結成後ただちに「交通事故問題を考える国会議員の会」に設立趣意書と、当時上梓されていた原口三郎著『脳外傷…ぼくの頭はどうなってるの』(明石書店)を送りました。議員諸氏の反応は鈍く、ほとんど返信もありませんでした。それに反し、NHKテレビの「クローズアップ現代」の放映後は、各地の当事者、家族の方々から問い合わせが続々とあり、いかに多くの方々が情報もなく孤独に悩んで来られたかを知りました。その後、各地で友の会が続々と結成され、現在までに別表のように1道10県に友の会、およびその関連支部が結成されました。
 事務局、会長を一人で担う私は、各地の設立総会、本誌をはじめ関係誌への原稿書き、厚生労働省への陳情などなど東奔西走していました。神奈川県総合リハビリテーションセンター、名古屋市総合リハビリテーションセンターをはじめ、各地のさまざまな専門領域にわたる方々にご指導、ご助言をいただき、充実した諸活動が行われてきたことに感謝しております。

日本脳外傷友の会

会長 東川悦子
 平塚市長持221-1 東川方
 TEL・FAX 0463-31-0436
副会長 柴田榮機(脳外傷友の会・みずほ)
副会長 篠原節(脳外傷友の会・コロポックル)
顧問 大橋正洋(神奈川リハセンター・医師)
   阿部順子(名古屋リハ・臨床心理士)
   大漉憲一(関東学院大学講師)

会員団体

脳外傷友の会・みずほ
 会長 柴田榮機
 名古屋市瑞穂区弥富町月見が岡56エステート八事B-11
 TEL・FAX 052-836-6046
脳外傷友の会・ナナ
 会長 大塚由美子
 横浜市青葉区黒須田26-24 大塚方
 TEL・FAX 045-973-4837
脳外傷友の会・コロポックル
 代表 中野匡子
 札幌市豊平区月寒東1条17丁目5-39
 TEL 011-858-5600/FAX 858-5696
脳外傷友の会・しずおか
 会長 森口千恵子
 浜松市蜆塚3-11-1 森口方
 TEL・FAX 053-452-5860
脳外傷友の会・ぷらむ
 事務局 今村栄子
 福岡市城南区南片江1-30-15 グランディオール城南
 TEL・FAX 092-865-4877
脳外傷友の会・さいたま
 会長 三上紀男
 比企郡吉見町北吉見1693-1 三上方
 TEL・FAX 0493-54-8666
脳外傷友の会・しが
 会長 酒井助太郎
 滋賀県東浅井郡びわ町早崎1144 酒井方
 TEL 0749-72-2554/FAX 72-4547
奈良脳外傷友の会・あすか
 会長 大久保康子
 奈良市田原本町八尾62-5 大久保方
 TEL・FAX 07443-3-5980
岡山脳外傷友の会・モモ
 会長 清水正紀
 岡山市横井上1571-10 清水方
 TEL・FAX 086-294-1385
脳外傷友の会広島シェイキングハンズ
 会長 浜田小夜子
 廿日市市阿品台5-26-2 浜田方
 TEL・FAX 0829-39-3789

準会員団体

高次脳機能障害サークル・エコー
 会長 田辺和子
 狛江市元和泉2-7-1
 TEL・FAX 03-3430-8937


 昨年度、厚生労働省に陳情したことから、厚生労働省では、友の会会員を主とした実態調査が行われ、1億400万円の予算を計上して、今年度から「高次脳機能障害支援モデル事業」が実施されています。雇用対策の面でも障害者職業センターでの援助事業が始まっています。
 今年4月、情報の少ない家族に少しでも役に立つようにと、昨年から準備していた『脳外傷Q&A』(明石書店)を出版しました。
 5月、イタリアで行われた第4回世界脳損傷大会に2年前の念願がかない参加することができました。各地の友の会、当事者家族と専門家14人で参加しました。
 6月、横浜において第1回の総会および記念講演会を行いました。各地の友の会からの活動報告の後、ニューヨーク大学のベン・イーシャイ先生の講演が行われ、トラウマを克服し、意欲をもって生活を立て直すことができるリハビリシステムが存在することを知りました。このような先進的情報を得ることは、現在緒についたばかりで、方向を模索中のモデル事業にも大きな指針を与えるものと思います。モデル事業の拠点となった地域では、目下、啓発活動としてのセミナーや、専門家による検討委員会が行われているようです。
 9月7日、1道9県の友の会の代表が、坂口厚生労働大臣に陳情を行いました。障害認定、医療制度改革と、リハビリシステムの確立、モデル事業後の支援政策拡大等を要望しました。同日、一堂に会した各地の代表は、今後の活動方針を討議しました。すでに年1回の総会を各友の会所在地で順次開催することは決定していましたが、その開催資金、またネットワーク拡大のためのリーフレット作成等の活動資金を得るため、自動車業界へも製造物責任者としての援助要請をしようと決議しました。
 札幌や名古屋の会は、すでに地域作業所を運営し、生活支援、就労支援等を始めています。神奈川の会も事務局等の拠点作りを始めました。
 「日本脳外傷友の会」は、各地の会の独自性を妨げることなく情報交換し、活動を拡大していきたいと思います。さらに外傷性脳損傷以外の方々の会とも密接に連絡を取り合って、わが国の障害者施策を少しでも明るい方向に進むよう努力していきたいと思います。

(ひがしかわえつこ 日本脳外傷友の会会長)

陳情書

厚生労働大臣 坂口力 殿

  日本脳外傷友の会
  脳外傷友の会・みずほ(愛知)
  ナナ(神奈川)
  コロポックル(北海道)
  しずおか(静岡)
  さいたま(埼玉)
  ぷらむ(福岡)
  しが(滋賀)
  あすか(奈良)
  モモ(岡山)
  高次脳機能障害・サークルエコー

 公務ご多忙の折柄、私どもに、貴重な時間をお割きくださいまして、誠にありがとうございます。
 さて、現行福祉制度の狭間にある、私ども、脳外傷(外傷性脳損傷)を初めとする高次脳機能障害者に対するモデル事業を格別のご配慮により、今年度から開始していただきましたことに、当事者団体として、厚く御礼申し上げます。
 今後の事業拡充及び、福祉制度への反映を期待し、以下の事項につきまして、さらに、一層のご配慮、ご検討をお願いいたしたく、陳情申し上げます。

1 脳外傷の障害認定制度の創設をお願いします。
 脳外傷は現行福祉制度の谷間におかれた障害です。障害は多岐に渡りますが、器質性精神障害として、精神保健福祉制度の範疇で、考えていくという現行制度には、不都合が多すぎます。
 平成14年度以降、精神保健福祉のサービスも充実するとのことですが、従来のサービス体制は脳外傷者には、ほとんど、活用できません。むしろ、身体障害者の領域で、施設利用などが行われています。
 今回のモデル事業は、脳外傷などの高次脳機能障害の症例を集積し、評価・診断の基準、及び支援プログラムの確立を目指しているはずです。
 高次脳機能障害者へ身体障害者手帳の交付等が計られるよう、実践的、現実的、今後の福祉制度創設につながる研究を求めます。

2 脳外傷者の就労・生活支援システムの早期確立をおねがいします。
 脳外傷者は若年層に多く、自立に向けた就労・生活支援システムが不可欠です。
 障害者職業センターによる、就労援助事業、市町村の小規模作業所利用による福祉的就労援助等、地域・生活に密着したサポート体制の充実が計れる事業展開を求めます。

3 研究・実践体制の充実・専門家の養成に早期に取り組んでください。
 脳外傷は広汎な研究・実践体制の充実が必要です。臨床心理士・作業療法士・言語聴覚士などの不足は大きな問題です。又、社会福祉士などのケアマネージメント体制の充実も不可欠です。

4 このような、人的資源を要するリハビリシステムの確立には、現行医療保険制度の改善が不可欠です。

5 脳外傷者の増加をもたらす社会状況の改善をお願いいたします。
 交通戦争と呼ばれる、我が国の交通事故状況を改善し、事故多発地点の改善、安全性の高い車の開発などを求めます。転落等の労災事故の軽減・改善も必要です。又、今後予想される、虐待などによる子供の脳外傷に対する対策も早期に対策が必要です。

6 そのためには、道路特定財源の有効利用につき、国土交通省に働きかけていただき、事故の減少対策費に活用していただきたいとおもいます。
 又、事故予防対策として疫学的調査費として、救急病院から、リハビリテーション病院への系統的リハシステムを確立するためのデーターベースの作成、などの予算に使えるよう、ご努力をお願いします。(モデル事業の継続拡充のためにも必要なことではないでしょうか?)

7 他の省とも連係し、海外の先進的な情報の収集、研究者の海外派遣などにつとめていただきたい。
例 アメリカのジョブコーチ制度
  ニューヨーク大学ラスク研究所のT・B・Iリハビリシステム。
  ADA法

8 子供の脳外傷の場合、教育機関への復学などの問題は、医療的ケアの他に、いじめ問題などとの関連もあり、慎重な対応が求められます。
 又、虐待などによる脳外傷も多発していく傾向がある今日、教育機関との連係は、欠かせない、問題であると認識しています。行政側にまだまだ、認識が浅いのが、残念です。
早期に、文部科学省との連係施策をとられるよう、切望いたします。