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高次脳機能障害若者の会
「ハイリハ東京」

鈴木勉

設立経過

 筆者の勤務先は、救急医療を重点医療の一つに掲げている病院なので、救命センターや脳外科から、脳外傷やくも膜下出血などによる高次脳機能障害の患者さんが、リハビリテーション科にしばしば紹介されてきます。
 患者さんの中で筆者が特に気がかりだったのは、10代や20代の若者でした。彼らは高次脳機能障害のために学業や職業に支障を来し、将来に不安を感じていました。退院後行く先もなく、家で時間をもてあましている人もいました。あるいは情緒的に不安定な人もいました。このような若者に出会ううちに、彼らを支えるには病院でのリハビリテーションだけでは十分ではなく、仲間づくりが必要だと思い始めました。筆者は以前、失語症友の会にかかわっていましたが、その中で、失語症の人が同じ障害をもつ人と知り合うことによって、元気を取り戻す様子を見てきました。高次能機能障害の人にも支え合う仲間が必要だと思ったのです。
 平成12年1月30日に、高次脳機能障害をもつ若者とその家族の最初の集まりをもちました。11家族が参加しました。その日は当事者と家族が全員自己紹介をしました。これまでのことを振り返る中で、涙を抑えられない人もいました。参加者の間に大きな共感の輪が広がるのを感じました。

活動内容

 その後会員は増加し、現在51家族となっています。年齢的には当事者が20代の会員が最も多く、次いで30代の会員です。会の運営を支援する専門職のスタッフは11人です。
 当事者の疾患は、脳外傷・脳血管障害・脳炎・低酸素脳症など多様です。疾患の種類にかかわりなく、高次脳機能障害をもつ人であればだれでも入会できます。疾患は異なっても、抱える問題は同じだからです。
 会の目的は、相互支援・情報交換にあります。活動の内容は、定例会の開催・ニュースの発行・ホームページの運営・メーリングリストによる情報交換・交通事故対策勉強会の開催、などです。会の活動をできるだけ当事者のリハビリテーションに役立てるため、いずれの活動にも当事者が加わっています。

1.定例会

 隔月に行っています。昼食をはさんで、午前10時から午後2時まで行います。今年の9月の例会で11回目になります。プログラムはそのつど変わります。たとえば、新会員の自己紹介・会員同士での話し合い・太極拳・料理・ゲーム・高次脳機能障害に関連するテレビ番組を見るなどです。

2.ニュースの編集

 定期的に編集会議を開き、隔月にニュースを発行しています。他の会とニュースの交換をしています。

3.ホームページ

 昨年10月に公開して以来、これまでに9600件のアクセスがあります。過去の定例会の内容を掲載しているほか、参考資料・リンク・掲示板のページもあります。トップページのデザインは、第5回の定例会の時にコンテストを行い、1位となった作品です。若者らしい新鮮なデザインが好評です。

4.メーリングリスト

 当事者・家族・支援スタッフが参加しています。月に100通以上のメールが交換されています。障害についての省察を含む深い内容のメール、楽しいメールとさまざまです。共感の場であったり、激励の場であったり、多様な働きをしています。

5.発足1周年記念の集い

 平成13年8月に「設立1周年記念の集い」を開催しました。テーマは「脳リハビリの確立を1日も早く願う」でした。会員全員で準備や当日の企画に取り組みました。参加者は当初の予想を上回る385人に達し、熱気と感動にあふれた会となりました。

今後の展望

 ハイリハに参加した当事者が、次第に元気になって笑顔が増えてくるのを見るのは大変うれしいものです。今後も高次脳機能障害をもつ若者にハイリハ東京への参加を呼びかけていきたいと思います。また他の会との連携を図りながら、高次脳機能障害に対する福祉サービスの確立をめざし、行政への働きかけを積極的に行うつもりです。
(この原稿をまとめるにあたり、ハイリハ東京の当事者の方にご協力いただきました。)

(すずきつとむ 東京都立墨東病院リハビリテーション科)