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ケアについての一考察

重度身体障害者のケアについて

石田義明

 私は東京の東久留米市に住む、重度の身体障害者です。自立生活センター・グッドライフの代表をしています。今年43歳になります。障害により食事、排せつ、風呂など24時間介護者がいないと生きていくことができません。
 私は、車いすに乗っています。でも自分では動かせないのでだれかに押してもらわないと移動もできません。手の障害は、以前は自分で食べることができたのですが、今はまったくできないのが現状です。目の障害もあり、物の位置がよく分かりません。ですからなかなか介護者に物の位置とか形とか、説明できません。道とか、道順とかもよくわかりません。
 私の子どものころは、重度の障害者は就学猶予ということで学校に行けず、教育の機会を奪われてきていて、読んだり書いたりができないということがあります。そのため、介護者にそこの部分を委ねなければならないということがでてきます。今は障害と年齢のせいで内臓の働きも悪くなってきています。お腹がふくれたり、小水の出が悪くなってきています。
 私は20歳ぐらいのころから、自立生活をするためには介護者が必要だということで、障害者の仲間たちと一緒に厚生省へ交渉に行ったり、仲間と怒りを共有しながら、障害者の生活全般の改善と権利獲得を求めてビラを撒き、厚生省の前にテントを張って座り込みをしたりしました。70年代が終わろうとするころです。
 私は障害者運動の中で戦いながら生きてきました。22歳の時に実家を離れ、自立生活を始めました。生活を保障する制度が何もない中で、運動を共有するボランティアのような形で介護者を入れながら生きてきました。それは介護者を集める電話かけで1日が終わるのがざらな壮絶な生活でした。現在では、24時間介護者を雇い、介護者集めの心配もなく安定的な生活を営んでいます。
 介護サービスの内容ですが、食事の内容は自分で指示をだし、自分の食べたい物を自分の好きな時に食べています。お風呂は家で入ったり、事務所の近くの銭湯へ行ったりしています。もちろん、介護者に指示をだして自分のペースで入っています。夜、寝ているときも隣の部屋に寝ている介護者に体位交換や水分の補給、排せつなどの指示を出しています。車いすの移動も自分で指示をだし、好きな時に好きなところへ行っています。私の愛車はコロナで介護者に運転させています。この間のDPIの名古屋大会も車で行って来ました。
 現在、私はグッドライフの代表として施設や親元にいる障害者を訪ねていき、自立生活を勧めています。そして、ILプログラムを行い、どんどん施設などから地域へ障害者を引っ張り出し、アパートを借り、障害者のレベルにあわせて介護者を派遣し、私と同じ一人暮らしができる状況をつくる仕事をしています。これらもすべて自分で指示を出し、介護者と一緒になって動いています。
 お金の管理などは先に話した事情で、計算などは介護者と一緒に行っています。約束事などは介護者にノートに書いてもらっています。
 地域の中で当たり前に生きられる世の中をつくっていくのが、障害当事者主体の自立生活センターを担う我々の役目と、考えて実践しています。自立生活プログラム、ピアカウンセリングなどを、障害者の必要に応じた介護派遣サービスとともに、障害種別の枠にとらわれない形で、私たちが日々を過ごす街の風景の中に展開することがノーマライゼーションにつながると考えています。
 サービス、障害者のケア内容を自分たちでつくっていくセルフケアマネジメント、それが基本だと思っています。

(いしだよしあき 自立生活センター・グッドライフ代表)