ハイテクばんざい!
パソコンは視覚障害者の必須アイテム
北山恵美子
これまで視覚障害者は情報障害者と言われてきました。人間は情報収集の70%を視覚に依存していますから、視覚障害者は自ら積極的に情報を求めていかなければ時代に取り残されてしまいます。取り残されるどころか、これからは日常生活に支障を来すようになるかもしれません。
情報と言えばインターネット。現在のインターネット人口は500万人と言われており、まさにIT時代の到来です。オンラインショッピング、ネットバンキング、電子メール、インターネットオークションetc…、ネット上にはさまざまな情報があふれています。今は、電話番号よりもEメールアドレスを聞かれる時代です。障害者を対象にした地方自治体のパソコン教室も盛況を極めています。
そんな時代を反映して、障害者のパソコン利用を促進するためのソフトウエアがいろいろ開発されています。視覚障害者関連で言えば、パソコンの画面を拡大して表示してくれたり、画面の状態を音声で読み上げてくれたり、印刷物や本を読み上げてくれたりします。もちろん、web上のホームページも読み上げてくれますし、チャットも音声で楽しむことができるようになりました。
今回はこれらの製品の最新情報をお届けしようと思います。これらのソフトを使えば健常者との情報格差を埋めることができるのです。なお、ここではWindows上で動作するプログラムに限定しました。
1 スクリーンリーダー
スクリーンリーダーとは、パソコンの画面を音声化してくれるソフトのことです。たとえば、パソコンが起動したときには「98リーダー、デスクトップ」と読み上げ、パソコンが起動したことを教えてくれます。また、文章の入力場面では、日本語の特徴である同音異義語を読み上げてくれます。たとえば「恵美子」という漢字は「恵むのけい」「美しいのび」「子供のこ」という具合(これを詳細読みと言います)です。また、キーボード上のどのキーを打ったかも教えてくれますし、パソコンの設定画面やエラーメッセージなども読み上げてくれるので、全盲の方でもパソコンを使うことができます。
1.PC─TALKER
Windowsが一般的になる前、視覚障害者用ソフトとして広く使われていたAOKのWindows版で、現在もっとも広く使われているスクリーンリーダーです。PC─TALKERは画面の読み上げだけでなく拡大も可能。インターネットにも対応しており、別売りのMY WORDというワープロソフトを使えば、ワープロ専用機感覚でパソコンが使えます。点字入力とフルキー入力の両方に対応しています。
2.95READER
PC─TALKERとともにスクリーンリーダーの定番ソフトです。機能的にはPC─TALKERとの違いはあまりありませんが、画面拡大機能はありません。インターネットにも対応し、ホームページや電子メールも読み上げてくれます。PC─TALKERに比べれば値段も手頃ですが、最新のWindowsのバージョンでは正常に動作しない場合もあります。
3.JAWS
IBM社が開発したスクリーンリーダー兼画面拡大ソフト。いろいろなアプリケーションに対応していることが特徴ですが、昨年の夏に販売が開始されたばかりなので評価は定まっていません。
2 インターネット関連ソフト
1.ホームページリーダー
文字通りホームページを読み上げてくれるソフト。最新バージョンでは、旧バージョンでは対応していなかったJAVAで作成されたホームページにも対応できるようになりました。テンキーだけで操作ができるので非常に便利です。
2.VE2000
ホームページを読み上げてくれるフリーウエア。JAVAで作成されたホームページも読み上げてくれるので便利なのですが、インターネットからダウンロードしてこなければ利用できません。
3 印刷物読み上げソフト
パソコンとイメージスキャナを使って印刷物や本を読ませることができます。そのためのソフトとして「ヨメール」と「よみとも2000」があります。どちらもソフトを起動し、スキャナの上に原稿をセットしてスペースキーを押すだけで読み上げを開始してくれます。ただ新聞や雑誌などの段組のある物や手書きの文字は正確に読み上げることができません。最近は「ヨメールライト」や「よみともジュニア」など、ノートパソコンとハンディスキャナを使って、電車の中で気軽に本が読めるようなシステムも開発され市販されています。
以上が視覚障害者専用に開発されたソフトですが、それらは値段も高く、一般のパソコン量販店で購入することができません。最近は市販のソフトの中にも視覚障害者に便利なソフトができているので、最後にそれらを紹介したいと思います。
まず、VIA VOICE、VOICE一太郎、SMART VOICEなどの音声入力ソフトがあります。パソコンをすべて自分の声で操作することができます。たとえば、デスクトップ画面で「メモ帳を実行」とマイクから発声するとすぐにメモ帳が起動するので、スタートボタンから階層メニューをたどってソフトを起動する手間も省けます。また、文章の読み上げ機能も充実していますし(詳細読みはできません)、ホームページや電子メールも自動的に読み上げてくれます。最近のバージョンでは、チャットも音声だけで楽しむことができるようになりました。ただ、画面の状況を読み上げてくれないので、ある程度画面が見える方が対象になります。
さらに、「Etypist」、「読んdeココ」などのOCRソフトと音声入力ソフトの読み上げ機能を組み合わせれば、「ヨメール」などと同様の機能を持たせることができます。これを使うと段組のある印刷物や手書き文字も読むことができますし経済的です。ただし、コピーや貼り付けなどのWindowsの基本操作ができることが前提になります。
これまで紹介したソフトを使用すれば、視覚障害者でも十分な情報を手に入れることができます。いまやパソコンは視覚障害者の必須アイテムなのです。
(きたやまえみこ 東京都在住・会社員)
※大学在学中に『見えにくい人の初めてのパソコン』を出版(株式会社大活字)。