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利用契約制度と所得保障

三沢了

 一般的に多くの人は働いた結果としての給与所得や営業収入ならびに不動産収入などを得ることにより、自らの生活や自らが扶養する責任のある者たちの生活を賄うことになる。しかし、障害者、特に重い障害をもつ者は生活を賄うに足るだけの給与所得や営業収入を得ることが困難な場合が多い。こうした状況を踏まえ、わが国では障害基礎年金を始めとする所得保障制度が制定されているが、まだまだ十分な水準に達しているとは言い難い。
 収入のない、あるいは少ない障害者の経済的支出を抑える手だてとして割引制度や料金免除制度が導入されているが、これらのものが障害者の社会的地位を低く押さえ込み、人としての尊厳を損なわせていることを見過ごしてはならない。
 1975年に国連で決議された「障害者の権利宣言」では、その7条において「障害者は経済的社会的保障を受け、相当の生活水準を保つ権利を有する。(後略)」と社会的に独立した個人として生きていく権利が謳(うた)われている。この権利宣言に基づく社会を実現するためには、稼得能力の多寡(たか)にかかわらず、障害者は正当な経済的活動を行使することのできる所得保障がなされ、社会一般の人々と同等に正当な契約を履行することのできる支払い能力が保障され、支払うべきものは正当に支払って生活するということを当たり前にする必要がある。
 周知の通り、社会福祉基礎構造改革によって福祉サービスが措置から利用契約に基づいて提供されるものに変わろうとしている。このことは基本的には、利用契約に基づき利用料を支払ってサービスを購入するということであり、利用者がサービスを購入できる経済的な能力があることが前提となる。利用したサービスの支払いを保障する手段として導入されようとしているものが支援費制度である。
 しかし、この支援費制度が主体的な利用契約を保障するものとなりうるか、ということになると首を傾げざるを得ない。利用者本人の主体的な契約に基づくサービス利用を保障するとすれば、サービスの内容と量を行政が決めた後の利用方法は利用者本人の判断に委ねられるべきであり、その支払方法にしても利用者本人に対する直接給付を原則とし、決定の範囲でという一定の制約はあるものの、利用者の主体的判断に基づき支払っていく方式こそが、正当な利用契約を保障していくうえではもっとも妥当な方法であると考える。

(みさわさとる  DPI日本会議)