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ハイテクばんざい!

紙のユニバーサルデザインを実現する
SPコードコミュニケーション『スピーチオ』

能登谷和則

『SPコード』と『スピーチオ』の概要と特長

 『SPコード』はバーコードや既存の二次元シンボルと比べ、大量の情報(18ミリメートル角に日本語で約800字)を格納できるマトリクス型二次元シンボルです。このSPコードを紙に添付し、専用読み取り機『スピーチオ』に読み取らせるとSPコードに格納されたテキストデータを音声で読み上げます。SPコード作成ソフトをインストールすると、Microsoft(r)Word上で簡単にコード作成ができるようになっています。『スピーチオ』は紙からリアルタイムに情報を得ることが難しい視覚障害者や高齢者を対象に開発されたもので、音声以外にも、点字プリンタに接続すれば点字変換ソフトを使わずに点字に、パソコンに接続すればテキストとして出力することが可能です。

図1 SPコード作成フロー

図 ↓スピーチオアイコン(青が男性声・ピンクが女性声の設定になります。)

1.SPコードに入れたい文章を、Microsoft(R) Word で入力します。
2.スピーチオツールバー上のスピーチオのアイコンをクリックします。
3.ページの右下にSPコードが作成されます。

活用例

 現在バリアフリーを推進する企業、自治体が増加し、障害者や高齢者に対する配慮が社会的に注目されています。視覚障害者数は約40万人(出典:厚生労働省統計表データベースシステムより http://www.dbtk.mhlw.go.jp/toukei/kihon/data12/3-25.htm)、ロービジョン(弱視)人口は約100万人(出典:国立身体障害者リハビリテーションセンターより http://www.rehab.go.jp/RehaNews/No217/2_story.html)と言われ、また65歳以上の高齢者数は2,272万人(平成13年:総務省統計データより)です。
 従来、こうした方々への情報伝達手段としては、印刷物の活字拡大や、あるいはボランティア団体などが朗読したカセットテープやCD、点字本でしたが、これらを作成するには、非常に手間やコストがかかるという問題がありました。しかし、印刷物作成時にあらかじめ情報をコード化することで、音声や点字で得ることができ、高齢者、視覚障害者に対する情報格差の軽減に寄与するため、自治体や福祉施設、図書館、教育機関等その他公共機関での活躍が期待されています。

(1)官公庁、地方自治体の情報伝達

 「広報誌」や「お知らせ」などの情報を通常の紙媒体、点字、音声テープに分けて毎回作成する手間とコストを省き、一つの紙媒体で晴眼者、視覚障害者、高齢者へ情報伝達ができるようになります。

(2)処方箋など即時性を求められる情報

 薬の効能や処方方法などの即時性を要求される情報を点字や音声テープなどでの提供ではなく、1枚の紙でタイムラグなく晴眼者、視覚障害者両者に提供できます。

(3)DMなどの郵便物

 電話・電気・ガス・水道などの公共料金の請求書や領収書、あるいは宅配便の不在通知などに利用できます。

(4)選挙公報

 投票所や自宅に配布される紙媒体の選挙公報などに添付すれば、その場で投票するにあたっての必要な情報を入手できます。

図2 活用例

図 処方箋 広報誌

活用状況

 この『SPコード』と『スピーチオ』は、開発メンバーとして視覚障害の方にも参加して、より視覚障害者にあった製品開発に努めていただきました。また試作機ができ上がった段階で、実際に各地のリハビリテーション施設や都道府県の視覚障害者団体等でこの仕組みを体験してもらい、大変好評でした。
 「音声化と同時に点字にも変換してくれるという点、またSPコードを自分が使うパソコンで自由に作成でき、だれでも情報発信できるという点が大変すばらしい」
 「処方箋などは口頭での提供が多いので、スピーチオがあれば役に立つと思う」
 「中途視覚障害者が点字を覚えるのは難しいが、これなら簡単に情報収集ができる」
 「点字、音声テープ・CDのほかに新しい情報伝達手段が増えた」
 など、このほか同様のご意見を多数いただきうれしい限りです。
 また今年の2月に、米国で全米盲人会連合(以下NFB)のマウラー会長およびスナイダー特別顧問が開発委員会でスピーチオの英語版デモを行い、大変好評をいただいたことにより、米国市場での販売基盤が確立、7月のNFB主催の展示会で発表することになっています。スピーチオの需要が世界規模で高まれば、個人消費者が購入しやすいレベルまで製品提供価格を低下させることが可能だと見込んでいます。
 現在、日本盲人会連合を主幹として、視覚障害者施設・団体だけではなく、企業、自治体等が配布・提供する印刷物にSPコードを添付していただき、情報のノーマライゼーションをめざした『バリアフリープロジェクト』を発足し、ご協力いただける団体・企業を募集、SPコード付き印刷物の情報拡大を図っているところです。

図3 バリアフリープロジェクト

図 バリアフリープロジェクト

 私たち晴眼者にとって一番身近な情報収集手段としての紙は、視覚障害者の方々にとっては最も遠い情報媒体です。私たちが日常手にするあらゆる紙媒体にSPコードが添付されれば、視覚障害者の方に積極的な情報収集と、仕事・学習・趣味など潤いある生活環境を提供できると確信しています。
 なお、『SPコード』を多くの方々に利用していただき、情報発信をしていただくために、SPコード公式サイト(http://www.SP-code.com)より簡易版SPコード生成ソフト (one click edition)を無料で提供しています。ぜひお試しください。

(のとやかずのり (株)廣済堂IT統括本部)