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列島縦断ネットワーキング

愛知
楽しくなければキャンプじゃない
~30回目を迎えるサマーキャンプ~

木下努

今年も実施
30回目のサマーキャンプ

 平成14年7月27日、28日の2日間、愛知県重度障害者の生活をよくする会(以下、よくする会)では、恒例のサマーキャンプを岐阜県ひるがの高原キャンプ場で行いました。今年で30回目を数えるこのキャンプは、昭和48年のよくする会結成以来、毎年欠かすことなく行われている名物行事です。
 私たちの先輩がキャンプを始めた昭和48年当時は「車いすでキャンプなんて…」と同じ障害をもつ仲間同士でもその反応は冷ややかだったそうです。それもそのはず、今でこそ身障トイレやスロープが設置されているキャンプ場も珍しくありませんが、当時は身障トイレなどもなく、仲間が知恵を寄せ合い、仮設トイレやスロープを製作してキャンプに臨んだそうです。
 キャンプ場は障害の有無にかかわらず、多少不便を感じる場所です。ですから最近、キャンプ場を選ぶポイントとしては最低条件として、身障トイレのあるところを選び、後はみんなで協力しながらキャンプを行っています。
 今年、ひるがの高原キャンプ場を選んだのは、身障トイレはもちろん、平坦で車いすが動きやすいこと、既存のテントでは車いすのまま入ることが不可能なので、バンガローのあるところといった点に留意しました。もちろんすべて車いすでの移動が可能なわけではありませんが、バンガローには可動式のスロープを設置できるように準備し、側溝にはベニヤ板を敷いて動きやすいように工夫しました。そして、今年のキャンプはいつもより少なめの50人定員、初めて参加する人を優先し、事前に名古屋市内の療護施設へ仲間が出かけ、参加を呼びかけました。結果は残念ながら反応がなかったのですが、今後も毎年呼びかけていきたいと思います。
 キャンプの参加者は、下は3歳の子どもから上は58歳までと年齢層も幅広く、障害をもつ仲間も脳性マヒを中心に、車いす利用者が全体の半数を占めました。

できることを分担

 さて、キャンプ当日は好天に恵まれ、総勢56人がリフト付きバスやハンディキャブなど車8台に分乗し、名古屋を出発しました。ひるがの高原に到着後、荷物を下ろし、本部テントの設営、備品分けや毛布の配布などの後、開村式を行い、四つの班に分かれ行動を開始しました。各班ではそれぞれ班長を決めたり、昼食をとりながら、備品やゴミ収集担当などの役割分担を行い、障害の有無ではなく、それぞれができることを分担してできる体制をつくりました。
 そしてみんなが楽しみにしている夕食ですが、ここ数年は、現地に着いてから各班でメニューを決め、決められた予算の中で買い物をして、夕食づくりをするというやり方をとっています。キャンプと言えばカレーライスが定番ですが、各班とも、鍋物であったり、ホイル焼きであったり、思い思いのメニューを考えました。なかには無難にカレーを選んだ班もあったようですが。
 今年の各班の予算は15,000円。これで夕食と翌朝の朝食の材料、飲み物を賄わなければなりません。お酒好きが多いよくする会、どうやってお腹と喉を満たすか、どの班も相談しながらの賑やかな買い出しでした。このメニューを決め、買い出しをするスタイルは、一人でも多くの参加者が主体的にキャンプにかかわれるようにと考え出したものです。料理は多少、失敗してもご愛敬、それよりみんなで楽しく食事づくりができることに重点を置いています。

楽しみなキャンプファイアーと大宴会

 夕食作り、夕食と済めば、いよいよキャンプファイアーです。歌やゲーム、花火など、レクリエーション担当が中心になって進行していきます。毎年、障害をもつ人たちが一緒になって楽しめる内容を考えるのには、苦労していますが、夜空の下、ファイアーを囲んでの楽しいひとときはまずまず、といったところでしょうか。
 そして、ファイアーが終われば、二次会、キャンプ参加費とは別に集めた会費で用意された食事と飲み物を囲んでの大宴会です。夕食を食べた後だというのに、バーベキューやお好み焼きがあっという間にみんなの胃袋に消えてしまいました。二次会では、他愛のない話からそれぞれの普段の生活のことや、福祉のこと、恋愛の話などなど。時間がいくらあっても足りないくらい、それこそ夜が更けるまで、あちらこちらで話をする輪ができました。今年もバンガローでは寝ずに、明け方近くまで話をしていたタフな仲間たちがいたようです。

さまざまな体験ができる場所

 このように盛りだくさんの内容の1泊2日ですが、キャンプは非日常の時間と空間です。しかし非日常だからこそ、普段の生活では味わえないさまざまな経験ができる場でもあります。長く施設や親元で生活している人の多くは、「危ないから…」「できないでしょ」「代わりにやってあげるから」と本人がやってみたいと思うことを自分の意志とは関係なく、周りに押さえられ、やれないでいることも少なくありません。ですから、よくする会のキャンプで、初めて親以外の人に介助してもらった、初めてお酒を飲んだ、朝までみんなで喋っていたという経験をした人はたくさんいます。キャンプをきっかけに仲間と出会い、その後、施設や親元を離れ、地域での自立生活へとつながっていった仲間も少なくありません。また、キャンプで知り合ったカップルがゴールインというおめでたい話もたくさんあります。
 なにはともあれ、今年もケガ人もなく無事、キャンプは終了しました。早くも「来年は海の近くがいいね」という声もあがっています。みなさんもよかったら仲間に入りませんか? 合言葉はもちろん、「楽しくなければキャンプじゃない」です。

(きのしたつとむ 愛知県重度障害者の生活をよくする会事務局長)