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工夫いろいろ エンジョイライフ

聴覚障害【1】
●トイレ●

提案:野田尚子(熊本県ろう者福祉協会会員)
イラスト:はんだみちこ

「ノック」で確認

 朝、目覚めたらまず行くところ、外から帰ってきたら真っ先に行くところ(?)、寝る前に行くところ…といったら、お分かりでしょうか?
 ズバリ、「トイレ」です! 私たちの生活のリズムは「トイレ」から始まるのです。その「トイレ」にまつわる聴覚障害者のちょっとした工夫をひろってみました。
 「トイレ」の中に入ってしまえば、外に何が起ころうとも私たち聴覚障害者には分からないのです。たとえば、ノックの音。公衆トイレなどは人の出入りが多く、ノックする光景もみられますね。ある聴覚障害者はトイレのドアにそっと手を当てるようです。
 ノックの音は聞こえなくても、ノックする際の振動が手に伝って分かるのです。また、隣のトイレのドアの開閉とかトイレの外の様子が少しながら振動で分かります。また、逆にノックするときも片方の手はドアに当てます。そうです。中からの返事(ノックが返ってくる)を手で確認するためです。
 このように、音をよりよく感じるには、一番感じやすい手のひらで「振動」をとらえるのも一つの方法です。
 これぞ、「手に取るように」分かる?

「フラッシュ(光)」でお知らせ

 さきほどは「振動」を使っての話でしたが、今度は光です。
 ある聴覚障害者の夫婦の場合、どちらかがトイレの中にいるときは、来客とか突然の出来事が起きたらトイレの電灯スイッチをオン・オフとパチパチさせて、その電灯の「光」で知らせるそうです。
 それほど急ぎでもなければ、ゆっくり間をおきながら電灯を1,2回点滅させて、「用が終わったら出てきて」。電灯が激しく点滅していたら「早く出てきて~!!」だそうです。
 なるほど、電灯が激しくピカピカッと光ったら思わずトイレから飛び出してしまいますよね。
 この電灯をオン・オフすることで「光」で知らせる場面はトイレに限らず、いろんな場面で使われています。聴覚障害者の集まる所、会議や講習会などでみんなの目を引きつけたいときは、この方法を使います。ほかに福祉器具「お知らせランプ」「フラッシュくん」を使っている例もあります。いずれも、目で見て分かる「光」を使った工夫です。

節水レバーで一石二鳥

 生活の中はいろんな音であふれています。人の会話、レンジや洗濯機などの電気製品の発する音、そして、水道水のほとばしる音…。その水道水を使う機会はひんぱんにありますね。トイレを使った後で止め忘れて流しっぱなしになっていたという経験はありませんか?
 私の友人のWさんも、用を済ませた後、タンクのレバーが何かのはずみで元に戻らず、気が付いたときは2時間以上も流しっぱなしだった(聞こえないので気が付くまで時間がかかった)という経験の持ち主です。
 大切な水の、無用な垂れ流しを防ぐという意味で、Wさんは市販の「ウォーターセーバー」という重石のようなものをトイレタンクの排水弁に取り付けました。「ウォーターセーバー」の重みによりレバーを上げている間は水が流れ、手を離すと確実に止まるという優れものです。それに、流すとき必要最低限の量しか流れないので、水の節約にはうってつけです。
 ほかには、来客時を除けば、ずっとドアを開けっぱなしにして中の様子が見えるようにしているという人もいるそうですよ。
 初っぱなからトイレ、トイレとごめんなさい。