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岡山
投票のバリアフリー化へ第一歩
全国に先駆けて電子投票を実施

小林保

電子投票ならではの利点を証明

 今年6月、岡山県新見市で電子機器を使って投票を行う“電子投票”が実施されました。電子投票は、投票用紙に候補者名を書いて投票箱に入れるというこれまでの方法に替え、画面表示された候補者名に触れることで投票するというものです。アメリカやベルギーなど諸外国ではすでに導入例もありますが、国内では初めての取り組みということもあり、全国が注目する中での選挙となりました。

 新見市での取り組みは、電子投票がこれまでの自書式投票にはなかった多くの利点を持っていることを証明することができました。
 その中の一つが、投票のバリアフリー化に向けた可能性を示したことです。
 選挙は、だれもが同じ条件の下で投票できることが原則です。しかしこれまでの選挙では、決して十分とは言いがたい状況でした。
 たとえば、障害のため候補者名を自書できない人は、係員に投票したい候補者名を伝え、代筆してもらう代理投票や点字投票といった投票方法しか選択の余地がなく、投票内容を他人に知られるのではないかという精神的苦痛を余儀なくされていたというのが現実でした。
 しかし、電子投票では、障害のある人も自力で比較的容易に投票ができ、また音声による投票方法が認められているため、視覚障害をおもちの人も音声情報にしたがって自力での投票が可能です。

障害のある人たちから歓迎の声

 今回、音声投票を行った視覚障害者の人にお話を聞く機会がありました。その方は、「これまで、投票の数日前から、小さく切った紙片を投票用紙に見立て、候補者名を書く練習を何度も重ねたうえで、投票に参加してきた。選挙後も、果たして自分の投票が正しく読み取ってもらえたか不安だった」と話されました。
 また、交通事故で体に重い障害をもったある方は、「事故後14年間、代理投票を行ってきたが、投票のたびに自分の政治信条を明らかにしなければならず、とてもつらかった」と話されましたが、今回は電子投票機を使って14年ぶりに自力で投票され、とても喜んでおられました。
 こうした投票のバリアフリー化については、私たちも、最初から利点として想定していたわけではなく、準備を進めていく中で障害をもつ人たちのお話を聞き、障害をもつ人たちが今までどんな気持ちで、どんな苦労をしながら投票を行ってきたかということに気づかされたというのが正直なところで、とても恥ずかしく感じましたが、今では、障害のある人たちに選挙参加への新たな道を拓くことに携われたことを誇りに感じています。
 電子投票はようやく第一歩を踏み出したにすぎず、まだまだ十分とはいえませんが、すべての人が同じように投票に参加できる仕組みを実現できる可能性も秘めています。投票のバリアフリー化がさらに進むことを心から期待しています。

(こばやしたもつ 岡山県新見市選挙管理委員会)