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自信をもって、自分らしく…

池田まり子

 「よろしくお願いしまーす!」…障害者団体の仲間とともに駅前でビラまきをした記憶がよみがえる。今から約15年前のこと、私の自立生活ための介助者探しのものだった。
 脳性マヒのため手足と言語に障害のある私が障害者団体(脳性マヒ者が地域で生きる会)と出会ったのは18歳の夏。当時、養護学校を卒業し、リハビリ施設で過ごしていた私は、強い衝撃を受けた。「重い障害があっても街の中で介助を受けながら自分の意志で暮らしていける」「結婚・出産し子育てをしている仲間もいる」…その頃の私にとってそんな話や場面はまさに夢のようだった。それまで障害があるから何もできないと思い込んでいたが、障害をもつ仲間に「できないことは手伝ってもらえばいい。どんな生活をしていきたいか自分で考えて決めていくことが一番大切」と教えられた。
 この15年間、団体やその他の活動を通してさまざまなことを学んだ。決められた生活ではなく、自分らしい生き方を選んでいくことについて仲間同士で語り合い、行政への働きかけもしてきた。時に遅々として進まない行政サービスに苛立ち、時に行動力のある仲間から勇気をもらった。
 私自身、多くの仲間や介助者に支えられながらケア付き住宅を経て、10年間の一人暮らし、結婚・出産…と経験し、現在はホームヘルプサービスなどを利用しながら、同じ障害をもつ夫と2人の息子(3歳と1歳)の家族4人で暮らしている。以前に比べ、ホームヘルプサービスも充実し、早朝や夜間の派遣も実現して、駅前でビラまきをすることもない。しかし、ケア付き住宅に住む仲間はいまだにホームヘルプ制度を利用できないし、「本人のニーズを尊重し…」と謳(うた)っている支援費支給制度についても疑問や不安は残る。
 今、ピア・カウンセラーとして、市内の障害者生活支援センターや隣市の自立生活センターで活動しているが、その中で常に思っていることは、一人でも多くの障害者に「自信」を取り戻してほしいということ。15年前に私が衝撃を受けたように、障害があっても少し勇気を出せば、可能性は広がっていくことを知ってもらいたい。そんな気持ちでこれからも仲間同士で支え合い、そして育ち合っていきたい。
 障害者が自己実現していくには、社会がもっと変わっていく必要がある。私たちが自信をもって自分らしく暮らしていける社会は、きっと障害のない人にとっても暮らしやすいものだと信じている。

(いけだまりこ 脳性マヒ者が地域で生きる会)