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LD、ADHD児の発達保障
―「つながり」と教育再生の機会に―

別府悦子

 私は、現在雑誌『みんなのねがい』(全障研出版部)に「LD、ADHD児の発達保障―子ども、家庭、学校をつなぐ」という連載を執筆している。これは、ある地域の小中学校に巡回相談をしている私自身の心理職としての体験をまとめたものである。LD、ADHD、高機能自閉症などは軽度発達障害と言われるが、実際学校に出向くと、この問題がとても「軽度」とは言えないと感じている。授業中立ち歩く、突然大きな声を出す、カッとなると友だちに物を投げるなどの行動を示す子どもがいて、指導困難を引き起こしている場合があるが、一番深刻な問題は、そのことによって親・教師それぞれが責め合い、子どもが周りから疎外されることで問題が複雑化してしまっていることではないかと思っている。しかし、一方で、早い時期に教育委員会担当者と学校に出向き、子ども理解のヒントを示すことで子どもも学級も大きく変わる実践にも出合う。一人の児童への教育的配慮が、授業のわかりやすさにつながり他の児童にとっても理解の助けになる。互いに認め合う学級経営ができたというところもある。学校全体で考えることで、教師間に連帯が生まれクラスを超えての教育相談体制ができ、不登校や他の配慮が必要な児童にも好影響があったという報告も聞いた。そして、その中で保護者の学校への信頼感が高まっているのである。
 障害児への実践の蓄積の中で、こうした通常学級の子どもたちの理解、あるいは指導や対応に貢献できるものが多いことを実感している。私はこの軽度発達障害児への対応の充実が、さまざまな「つながり」と学校教育への信頼を再生する一つのチャンスになるのでは、と考えている。障害児教育が大切にしてきた一人ひとりの子どもの良さと特性をふまえた対応を考えることが、子どもを真ん中にした「つながり」を可能にするからである。自分自身も相談員としてチームや地域のネットワークという「つながり」の中で研究や実践を進めていく必要性を感じている。そして、教師が教職の誇りをもち、真の力を発揮していくためには、「つながり」を妨げる競争や管理強化の方向ではなく、気軽に問題を出し合い、実践を話し合える時間と集団が十分に保障され、その基盤となる教育条件の向上を図っていくことが必要である。大変な時代だからこそ、すべての子どもたちの発達が保障される実践と地域作りが、子どもを真ん中にした「つながり」の中で進められることを切に願っている。

(べっぷえつこ 中部学院大学)