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列島縦断ネットワーキング

兵庫
ノーマライゼーション&支援費フォーラム
in 西宮

冨田昌吾

 「なにがあってもこの街―西宮―で生きていくんや!」「国がどうの制度がどうのというより、西宮の街でどう生きていくかや」。1月末に西宮市から出された強烈なメッセージです。
 平成15年1月25日(土)に兵庫県西宮市の西宮市市民会館アミティホールにて「ノーマライゼーション&支援費フォーラム in 西宮」が、西宮市、西宮市社会福祉協議会の主催で行われました。
 このフォーラムは、毎年、西宮市社会福祉協議会が「ノーマライゼーションフォーラム」として行っている取り組みに、来年度から始まる支援費制度への取り組みを西宮市が市民とともに主体となって行っていくことを広く知らせるために、「ノーマライゼーション&支援費フォーラム in 西宮」と題して行ったものです。
 西宮市は、支援費制度導入の準備として、昨年の4月から「障害新制度準備室」を設け、積極的にその準備を進めてきました。支援費の支給決定を行う際のガイドラインの検討、支援費制度を円滑に使えるための相談窓口のネットワーク化などを行ってきました。このフォーラムもそういった支援費制度を市民のサービスとするための、市の取り組みの一環です。
 当日、会場には1200人余、前列には車いす市民の方が60人ほど座り、うち西宮市の一般市民900人、市外の方300人が参加されました。会場は、熱気にあふれ、一部では殺気に満ちた雰囲気すら感じました。というのも、年始年末に国から相次いで出された市町村障害者生活支援事業、障害児(者)地域療育等支援事業の相談2事業の一般財源化、ホームヘルパーの上限問題の方針転換によって、当事者の方には不安が高まっていたことなどもあり、必要以上に関心が高まっていた状況もありました。
 実際のプログラムは、まず基調講演として北野誠一桃山学院大学教授による「ノーマライゼーションは今」と題した講演がありました。講演の中では、ご自身の西宮へのかかわりのお話から、ノーマライゼーションはお互いに知り合う地域のことであり、障害者がお客さんではだめ、お互いに対等に支えられあうしくみづくりであるということを述べられました。
 それに続いて、当初、特別講演「支援費制度のこれから」と題して、足利聖治厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課長が出席の予定でしたが、ホームヘルパー上限問題の最中で急に来られなくなり、結局、大塚晃専門官が代わりに国の支援費制度への移行準備状況などを話されました。
 午後からは、「ノーマライゼーションと支援費制度」と題して、シンポジウムが行われました。コーディネーターには、大熊由紀子大阪大学大学院教授。シンポジストは、西宮市障害者生活支援事業「ピア・サポート西宮」の玉木幸則さん、西宮のしょうがい福祉をすすめるネットワークの上田晴男さん、西宮市社会福祉協議会常務理事の大和治文さん、そして、西宮市障害新制度準備室長小川美智子さんの4人です。それに、助言者として午前中の講演者の北野誠一さんと大塚晃さんも参加されました。
 シンポジストは、どなたも西宮市でそれぞれの立場で活動を進められている方です。冒頭、コーディネーターの大熊さんが北欧のノーマライゼーションにふれながら真のノーマライゼーションとは、という問いかけからシンポジウムは始まりました。
 玉木さんは、ご自身の障害者としての立場と、相談支援事業者としての立場から、今回の一連の国の問題も含めて、改めて、地域で生きていくことについて、小川さんは西宮市の障害新制度準備室の設立経緯から、西宮市が支援費制度に向けてどう取り組みを進めているのか、大和さんは、西宮市社会福祉協議会が運営するたいへん障害の重い市民の地域活動拠点である「青葉園」の実践と相談窓口の「のまネット西宮」、そして社協の支部・分区における地域福祉活動について、そして、最後に上田さんは西宮市の障害者計画を考えるネットワークから始まった「すすめるネット」と地域の中で暮らす一人ひとりの権利擁護のしくみの必要性を述べられました。
 後半は、会場からの質問に答える形式で進みましたが、とても多くの質問が寄せられました。
 国のホームヘルパー上限問題のただ中で、ともすれば、悲壮感もただようなか、本質的に障害者が地域で暮らすとは何か、ノーマライゼーションとは何かを考え、障害のあるなしにかかわらず西宮市という自分たちの地域で住む・住み続けていくことは、国の方針に左右されるものではない、自分たちの問題であり、西宮は揺らがないんや!というメッセージを確認した、そんなフォーラムだったと思います。
 支援費制度という新たなしくみの中で、そこに語られている理念を具現化するためには、市民が市民として、互いに支え合い地域の自分たちの生活を主体的に実現していくことの重要性を改めて感じたように思います。

(とみたしょうご NPO法人 寝屋川市民たすけあいの会)