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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年2月号

1000字提言

世界旅行博に参加して
―アジアのよさを大切にしていこう―

蒔田麻耶

私が今回世界旅行博に参加した一つ目の理由は、横浜で開かれるということで家から近かったこと、もう一つは私が知り合いになった外国人の国の展示を見てみたいと思ったからだ。よく日本人が行くハワイとかヨーロッパなどには人垣ができていたが、それより私は、東南アジアのシンガポールとかマレーシアなどのほうがおもしろかった。知り合いができたこともあって、書物を読み、日本とどのようなかかわりがあるのかも調べていた。

立ち寄ったシンガポールの展示会場でとても印象に残ったものがあった。ヘナというものを用いていろいろな模様を描いている人がいた。ある人は手首に鎖のような模様を描いてもらったり、花の模様を描いてもらったりしていた。ヘナはもともと白髪を染めるために使われているので体に害はない。ヘナが固まると砂のようなものが手についたようになり、描いてくれた模様が指で触って分かるようになる。私も腕に模様を描いてもらった。へナが固まったあと、どのような模様を描いてもらったのかを確かめてみたら、花の模様だった。私がこれを体験してよかったと思ったのは、私のように視覚障害のあるものにとって、描いてくれたものが触ることによってよく分かるということだ。ヘナで模様を描いてくれた人も描いた人の中に視覚障害者がいて喜んでいたことを、帰国してまちで視覚障害者を見かけたら思い出すかもしれない。

もう一つ印象に残ったことは、マレーシアの田舎で玩具として使われている凧やインドネシアの芝居で使われた人形、銀の器の彫り物などを実際に触れることができたこと。これらはすべて手作りの作品で、東南アジアにはまだ手作業でものを作る人がいるということだ。今は何でも機械に頼り、手の技術というものはあまり受け継がれていかなくなる傾向にあるが、ヘナで描いた模様や銀の細工は機械には頼れない。何でも機械に頼ると便利になると思うが、これには限界があるということだ。私としては、このような手の技法は継承されていってほしいと思っている。

今の日本人が欧米志向と言われることは、少し考えていかなければならないと思う。なぜかと言うと、特に障害者を取り巻く環境は、欧米のほうがよいということは事実なのかもしれないが、日本人は欧米の人たちとは異なる。スウェーデンの福祉がよいと言われるが、それは国の人口が少ないからあのような福祉の体制ができるのであって、日本やアジアにはその国にあったそれぞれの福祉の体制が必要だと思う。

これからは日本人が欧米から学んだものを、東南アジアの国々で生かされるようになれば、本当の意味での福祉先進国だと思う。

(まきたまや 神奈川県在住)