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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年3月号

フォーラム2004

「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」から

室崎富恵

障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会は、障害者(児)の地域生活支援の充実を図るための方策を検討するために、昨年5月26日にスタートしました。一昨年の障害児者地域療育等支援事業、市町村生活支援事業の一般財源化問題、ホームヘルプサービスの上限問題など、「利用者主体、個の尊重、選べるサービス」という大改革をうたった支援費制度導入直前のこのような国の方向性に、全国で衝撃が走ったのは言うまでもありません。この衝撃により、結果的に「障害者(児)の地域生活支援の在り方に関する検討会」が設置され、公的な場できちんと議論されていくということに繋がる訳ですが、このことにより関係者の間に限らず、大小いろいろな場面で数多く議論がなされてきました。

しかし、今まで、大きな転換期とは言いながらも、理念に基づく実践という面では、さまざまな取り組みはなされていたものの具体的なシステムは、まだ試行的な域を出ていないという状況でした。やはり、地域生活支援というものは、より各々の地域性や個別性を重視しながら、重層的な視点で考えなければならないものであると、あらためて認識されたということが言えると思います。

このたびの検討会は、関係者からのデータに基づいた地域生活支援施策の現状と課題をヒアリングしていくという形でスタートしました。そして、その現状と課題から、今後の地域生活を支えるサービス体系の在り方について、また在宅支援3事業(ホームヘルプサービス・ショートステイ・デイサービス)についての意見、就労や地域での住まいの支援施策に関する意見、相談支援・ケアマネジメントに関する意見、サービス供給を支える基盤(財源、人材面)に関する意見がそれぞれ出され、さらに効率よく進めるために1.全身性障害者等長時間介護が必要な者に対する支援の在り方、2.視覚障害者・聴覚障害者に対する支援の在り方、3.知的障害者・障害児に対する支援の在り方という、3つの作業班を設置して検討を深めていきます。

また、全体会では1.ライフステージ等に応じたサービス体系の在り方、2.サービスを適切に供給していくためのシステムの在り方、3.サービス供給を支える基盤の在り方について、それぞれ検討していくことになります。特に財政論と介護保険の問題、そしてケアマネジメントの問題は、今後の議論の中で、重要なキーワードになると思います。

財政論について個人的には、今までの検討会における論点と同時に、義務的経費として捉えられる入所施設の経費についてもその予算配分を検討することも必要かと思います。なぜなら、スタートしたばかりの支援費制度もすでに財政的には厳しく、地域生活をする利用者の不安は払拭されていません。この財源が安定しない限り制度自体の見通しは厳しいでしょう。

そこで介護保険との統合という問題が浮上する訳ですが、一方で入所施設についても思いきった改革がなされないと国民の理解が本当に得られるのかという疑問が残ります。第三者から見ると「福祉関係者は、ノーマライゼーションとは言いながら、入所施設はちゃんと守られているじゃないか」と。検討会の中の意見では、介護保険との統合について、高齢者と障害者のライフステージの違いが課題となっています。また一方で、国の責任において財源を確保するべきという意見もあります。これは非常に大きな問題で、今後の障害者の地域生活の未来を左右することにもなる重要な検討課題です。

さらにケアマネジメントについて言えば、制度を動かすシステムとリンクする重要な課題です。障害者のケアマネジメントは、利用者への適切なサービスの提供と同時に、インフォーマルな資源との組み合わせやサービス供給基盤を整える手段として、また地域資源の評価を行う手段として有効なシステムであるということは、私たちの地域で実施した試行事業においても、またいくつかの他地域の報告でも、実践を通して実証されています。しかし、結果的に事業としては導入されなかったという経緯がありますが、私たちの県に限らず、引き続きケアマネジメント従事者養成研修は行われており、その手法の有効性や重要性は認められています。ケアマネジメントを行う機関や人材については明確になっていないという現状があり、そのこと自体が、介護保険のケアマネジャーに頼る市町村にとっては戸惑いを感じる原因にもなりました。しかし、障害児者地域療育等支援事業等におけるコーディネーターなどの存在や、地域に根ざした地域生活支援センターがすでに設置され有効に働いている地域では、確実に市町村と連携してその役割を果たしていることも事実です。ケアマネジメントの仕組みは、障害者が地域で継続した生活を行ううえで欠かせないシステムだということは、この検討会でも共通の認識だと思います。

今後、私は知的障害者・障害児に対する支援の在り方という作業班に所属し、ホームヘルプサービスやグループホームなどの在宅サービスのニーズを踏まえて、生活支援全体の課題をより明確にし、その課題を解決していくための検討を行うことになります。

昨年12月、厚生労働省は、ホームヘルプサービスやグループホームの単価見直し案を出しました。一昨年と同じ状況を重ねて、“またか”とショックを受けた利用者や関係者が大半だと思います。結果的に、白紙撤回されたとは言え、今後、この検討会で議論する重要な内容となります。

ある新聞に、施設解体宣言をした宮城県の大規模入所施設からグループホームに移行した人たちの記事が載っていました。地域に移り、活(い)き活きと生活している姿に、この思いきった政策を打ち出した宮城県や浅野知事に感動さえおぼえます。

今、国や地方自治体の財政は危機的状況です。特に国の市町村合併策は、究極の行政改革とも言えるでしょう。合併の是非は別にして、今までの国や地方自治体の在り方が大きく転換していく時期であるということに異論はないと思います。

障害の有無にかかわらず、私たちはそこに住む住民の一人であり、生活者です。私たちは本来選挙という民主的な方法で、私たちが望む地域や環境をつくってくれるだろう人材に政治を任せるという義務と責任を負っています。政治への無関心ではすまされない状況になっています。市町村合併の問題もしかりです。私たちが住む地域の問題は、自ら地域で解決していく力や障害者の地域生活を支えてくれる応援者をもっと増やしていくことも同時に必要な作業だと思います。何を豊かにするべきか、大きな視点で考える必要があると思います。

(むろさきとみえ 全日本手をつなぐ育成会副理事長・地域生活支援委員会委員長)