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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年4月号

私たちの大学生活

アメリカに留学して思うこと ―車いすの視点から

加山美佐

昨年夏よりアメリカ、イリノイ州にあるIllinois State University(ISU:イリノイ州立大学)の大学院修士課程でソーシャルワークの勉強をしています。原因不明の脊髄障害で手動の車いすを使用している私ですが、ここでは車いすで困ることよりも英語で困ることのほうが多く、日本にいた頃よりも車いすの不自由さを感じることが少なくなりました。

学校の建物にはすべて、スロープと車いす用の自動ドアが付いています。もちろんエレベーターもあるので教室までの移動には困りません。市内のバスにもすべてリフトが付いているので気軽に街の中に出られます。困ったことと言えば、この辺りの冬は気温が低いので(最低気温マイナス20℃)バスのリフトが凍ってバスから降りられなくなってしまったことや、凍結防止に道路にまかれた塩で車いすが塩だらけになることなど。願書の提出後にイリノイが寒い場所だと知り、もう少し調べるべきだった、と思ったのを思い出します。

ISUを選んだ一番の理由は、以前から興味のあったChild Life Specialistという資格をとるためのコースがあることです。今の専攻とは違うのですが、その資格に関連したクラスをとることもできます。そういった情報収集には大学のホームページがかなり役に立ちました。メールでの問い合せもできるようになっています。最終的には、夏休みを利用して学校見学に来ました。メールの返事は来ていなかったので予約なしでしたが、留学生担当の人に会うことができて、その日のうちに候補先の学部の先生2人に会えるようにアレンジしてもらうことができました。その時、大学の中に障害をもつ学生を支援するためのオフィス(Disability Concern)があること、寮にも車いす対応の部屋があることを教えてもらうことができました。

願書提出の際、障害に関して特に提出する書類はありませんでした。一応、見学の時に会った学部の担当の先生にはメールで伝えましたが、審査には関係ありません。入学許可が下りた時点で、特別な補助が必要な学生は個別にDisability Concernに連絡をとる、という流れになります。忘れたら補助はなし。用意してある選択肢の中から自分にあったものを個人の責任で選んで使うのがアメリカ流の補助の仕方のようです。

日本で学校探しをしていた時には、出願前に障害の程度を証明する書類提出を求めてきた学校や、見学に行った時点で出願を辞めてほしいと遠回しに言われた学校もありました。日本とアメリカではかなり考え方の違いがあると思います。

実際、入学してみて車いす(手動、電動含めて)を使っている学生をよく見かけます。視覚、聴覚に障害をもつ学生もかなり多いのではないでしょうか? Disability Concernには、個人の障害に合わせていろいろなサポートが用意されています。授業中のノートテイク、テストを受ける時の補助(時間延長や問題の読み上げ、解答の記入)、図書館での文献検索補助などです。こういった補助は、学生のボランティアが担当しています。

私の場合は、教室に車いす用の机を置いてもらうリクエストをしています。机といすが一体になったものを使っている教室が多いので、車いすでは使いづらいのです。その他の細かいことはクラスの人や先生にも頼めるので特に困っていることはありません。本当に英語で困ることのほうが多いのです。

どういう補助をリクエストするかは、Disability Concernに登録する時の面接で、何ができて何ができないかなど具体的に話をしながら決めました。心配していた雪についても、除雪車の通る経路が書いてある地図をもらいました。聞いてみるものです。この時初めて障害の内容についての正式な書類、(英文の診断書)を提出しました。診断書は何枚かコピーしておいて、学校以外で必要な時に今でも使っています。

Disability Concernの登録ですが、ISUでは直接オフィスに行って面接を受けることになっています。私の場合は、授業の始まる2か月前にISUに来て面接をしてもらいました。授業の開始に合わせて寮の車いす対応の部屋を使うには、事前にDisability Concernに登録しておく必要があったためです。この時、私はアメリカまで来ることを選びましたが、日本からそのためだけに来る必要があったかどうかは分かりません。

個人的意見になりますが、アメリカの事務担当の人は知り合いになるととても親切で、一度会っただけで名前を覚えてくれます。その一方で、名前を知らない外国人からのメールには、特に入学許可の下りる前はなかなか返事を送らないように思います。時間と資金面での余裕があれば、入学前に学校に来て知り合いをつくっておくことは、その後の手続きや生活にとても有利だと思います。

最後に、アメリカでの生活について一言です。ISUの場合、日本人は短期滞在の交換留学生が多いので、日本人のための生活情報(アパートや日本の食料品情報など)は限られてきます。地域や学校によっては日本語で対応してくれるオフィスのある学校もあるそうです。障害をもっていると、他の人よりも必要な情報が増えてきます。生活の便利さも考えて学校を選ぶことも大切だと思うようになりました。

(かやまみさ)