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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年6月号

1000字提言

大型自動回転ドアのコンセプトは人に優しくない
―障害・高齢者能力の誤認による開発技術、運用の蔓延に歯止めを―

齊場三十四

3月26日、最先端技術の東京六本木ヒルズで不幸な事件が起こった。朝日新聞社提供のインターネット資料によれば42都道府県294施設に計466台設置、調査によれば270件余トラブルが起こり、人身事故は140件余、足や腰の骨折が20数件もあったとされる。一体この自動回転ドアは人に優しいものだろうか。

私が、この自動回転ドアに出会ったのは、今から25年程前、カナダのオタワ空港であった。欧州では、手動式が主流であり、近くにドアマンがいることが多く、杖障害者の私や車椅子利用者などが近づくと回転ドア横のドアを開けてくれるのが一般的だった。手動式は小型で、スペースは4分割と狭い場合が多いが、自分の歩行移動ペースに合わせての出入りなので安全だといえる。そんな時代に、大型で2分割スペースの設定で、車椅子利用も可能とする自動回転ドアに出会ったのである。安全対策の車いすマークを押すと急に減速し、私の歩行リズムに合わず、遅過ぎて歩き難く少々戸惑った記憶がある。直感的に、私は『障害者・高齢者には優しくない。日本の横引きの自動ドアの方が使い勝手のレベルは高い』と感じた。回転ドア文化のある欧州では仕方がないと思ってきた。

近年、急に設置が増え、事故を危惧してきた。私は、自動回転ドアを利用する時、転倒したら絶対外側に手足頭を残さず内側に倒れること。背中を丸めることを想定し飛び込んでいる。わが国では、超大型化、省エネで通常はゆっくり回転しているのに、人が入るとスピードが上がるといった安易な発想までまかり通っている。近くにはドアマンはいないのが一般的である。高齢社会だと言いながら、人減らしは急速に進み、大した検証もなく、一見便利との思い込み誤認コンセプトで設計開発してしまう。危険度や安心チェックより、効率性・採算性が重視された意見のみが中心になり過ぎてはいないだろうか。さらに、お題目的バリアフリー化と間違った思い込みでのコンセプトを良しとする意識のみで製作、設置、運用されると事故危険度は飛躍的に高まる。この予見性を持てなかったことが今回の事故と繋がったのであろう。

最後になったが、予見性といえば、なぜモノレール浜松町駅ホームに上がる最後のエスカレーターは、あんなに早く動かさなければならないのだろうか。あのスピードに対応仕切れず、高齢者や障害者が転倒し、事故にでもならなければ、早く回転させていることのリスクの高さを理解できないのであろう。

この誌上で、事故危険度の高さを警告しておきたい。正しい認識のうえで、すべての人に安心安全を届ける哲学を構築すべき時期だと指摘しておきたい。

図
赤外線センサーの感知できる部分
自動回転ドアと事故件数
自動回転ドアは42都道府県の病院やホテル、オフィスビルなど294施設に計466台が設置。過去の事故については、六本木ヒルズの死亡事故を除き、全国で270件が報告。人身事故は133件で、内訳は足や腰の骨折が23件及び打撲やすり傷などが110件あった。

【出典・参照資料】

http://www.asahi.com/special/doors/

(さいばみとし 佐賀大学地域医療科学教育研究センター)