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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年6月号

列島縦断ネットワーキング

神奈川 脳性麻痺7人制サッカー
~その発祥と現在の活動について~

大西明宏

はじめに

脳性麻痺7人制サッカーは、比較的軽度な脳性マヒ者を対象として誕生したスポーツです。しかし実際は、脳性マヒ者だけを対象としているものではなく、脳卒中、脳外傷などの後天的な障害の罹患歴を持った人も選手として認定されている7人制の競技です。チームはCP―ISRAという規定の選手で構成されており、競技中の杖の使用は認められていないため、自力で走ることが可能な選手に限られます。基本的にはFIFA(国際サッカー連盟)のルールに準じて試合が行われますが、国際公式試合のルールでは、フィールドは11人制サッカーより狭くなっており、試合時間も11人制サッカールールとは異なり、前後半30分、ハーフタイム15分で構成されています。またオフサイドルールは適用されていないことや、片手でのアンダースローインが認められていることもこの競技の特徴と言えます。

世界に広がる脳性麻痺7人制サッカー

脳性麻痺7人制サッカーは1978年から国際大会が開催されるようになりました。一昨年、知的障害者のサッカー世界選手権が日本で開催されましたが、脳性麻痺7人制サッカーも、4年ごとに開催されるパラリンピックの正式種目となっています。当初、ヨーロッパを中心として広まってきましたが、現在ではヨーロッパだけでなく、米、南米、アジア地域では日本をはじめ、韓国、オーストラリア、香港、台湾などの国々で試合が行われるようになりました。パラリンピック大会は、4年間に行われた予選大会(ワールドカップ、世界選手権大会、ヨーロッパ選手権大会、パンアメリカ選手権大会)の成績により8か国が出場権を獲得しますが、日本はまだ予選突破ができないため未出場です。

またワールドカップ日韓共催年となった一昨年は、第8回フェスピック競技大会(極東・南太平洋障害者スポーツ大会)において脳性麻痺7人制サッカー大会が開催されました。しかし、出場国が日本、マレーシア、韓国の3か国と少なかったため、パラリンピック予選大会の承認は受けていません。

日本脳性麻痺7人制サッカー協会の歩み

日本脳性麻痺7人制サッカー協会は、日本国内における普及活動を目的とし、競技人口の拡大、交流会・合同練習会・競技大会の開催、選手の育成・強化をめざし、日本障害者スポーツ協会の障害者スポーツ競技団体や日本パラリンピック委員会の加盟団体として公認されています。

現在、日本脳性麻痺7人制サッカー協会には関東を中心に7チームが登録しています。その他、チームに所属していない選手、日ごろは健常者のチームで活躍する選手を含めると、80名ほどが協会に選手登録をしています。

協会では毎年、全国の選手を対象とした合同練習会、全日本選手権大会を開催しています。2004年度は、埼玉県で開催される第4回全国障害者スポーツ大会のオープン競技として参加することになっています。また、協会登録選手の中から競技力の高い選手を中心に強化チームを編成しています。強化チームは定期化した日韓親善試合のほか、対外試合、国際試合に備えて強化練習を行っています。

2001年より2チームで始まった国内大会は、2003年より、全日本選手権大会として4チームのトーナメント戦で開催され、2004年は第4回全国障害者スポーツ大会オープン競技兼全日本選手権大会として開催されます。その他、フットサル大会やサッカー教室も年間を通して行われています。2004年5月15日~16日には、チャレンジCPサッカー(独立行政法人福祉医療機構助成事業)が行われ、全国から集まった13歳~48歳の参加者30名がサッカー技術の向上をめざしました。

日本代表チームと選手たちの活動

一昨年のフェスピック競技大会では代表選手たちは健闘しましたが、惜敗してしまいました。しかし、選手たちは新たな目標を見いだして練習に励んでいます。選手たちのほとんどは普段の仕事をこなしながら、空いた時間を利用して練習に取り組んでいます。

日本では脳性麻痺7人制サッカー自体が社会的認知を得ていません。選手は全国に点在しているのですが、選手層が薄いため、定期的に人数を集めた練習ができない状況にあります。選手層が厚くなることは、日本の競技レベルの向上につながることはもちろん、まだサッカーをやったことのない人でも、今後の努力次第では、日本代表としてパラリンピック大会に出場することも夢ではないという希望を与えるものだと思っています。

今年度は7月に日本代表メンバーが決定されます。そして秋には第5回目となる日韓戦があり、初勝利に向かっての挑戦が待っています。

今後の課題と展望

各チームとも地域を中心に選手層は徐々に広がりつつありますが、前述の通り、まだごく一部の地域に限られているのが実情です。協会としては今後も一層、選手層の拡大のために活動の輪を広げること、また、国際舞台で活躍できる日本チームの育成にも力を入れ、念願のパラリンピック大会出場権の獲得へ向けて、トップ選手、日本代表チームの強化に一層取り組む必要があると考えています。

現在、チームに所属していない人も合同練習会はもちろんですが、各地域ブロック単位で大会への出場も可能となっています。サッカーに興味関心がある方は、まず協会へお問い合わせください。そして疑問や質問をぶつけてください。そして満足していただける条件が整いましたら、ぜひ協会へ選手登録をしていただきたいと思います。

「私はフィールドを駆けめぐりサッカーをしたい!」そのように思う脳性マヒの方もいらっしゃるのではないでしょうか。サッカーをこよなく愛する脳性マヒの方、および関係者の方々がいらっしゃれば、ぜひとも、日本脳性麻痺7人制サッカー協会にご連絡ください。みなさんを歓迎する仲間たちが手を広げて待っています。安心して飛び込んできてください。

また、協会では練習や大会、普及活動などに協力してくださるサポーターの方や、応援してくださるサポーターの方も大歓迎です。ホームページ、あるいは事務局までお問い合わせいただければ幸いです。

(おおにしあきひろ 神戸医療福祉専門学校三田校理学療法士科)


●日本脳性麻痺7人制サッカー協会事務局

〒212―0023

神奈川県川崎市幸区戸手本町2―396―1―212

電話・ファクス:044―555―8038

ホームページ:http://www.geocities.co.jp/Athlete/7537/

E―mail:jin212@khr.dcns.ne.jp

事務局長:山崎一世子(やまざきいよこ)