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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年8月号

ほんの森

オードリー・キング著(訳 久野研二)
障(しょう)がいって、なあに?

評者 中西由起子

一般に大人が絵本に対してもっているイメージは、大きな絵、カラフルな色遣い、優しい顔だちの主人公である。しかし、現代の子どもはどうもそれでは満足しないらしいことは、たとえば「ハッチ・ポッチ・ステーション」での60年代、70年代の歌によるミニコンサートが幼児に受け入れられるという現象からも感じていた。

『障がいって、なあに? 障がいのある人たちのゆかいなおはなし』は、ユーモラスなイラストに飾られた白地の表紙が印象的な、正方形に近い小型のサイズで、しゃれた体裁をしている。内容からいっても、児童書よりむしろ大人のための寓話でもあるが、大人のテイストをもつ今の時代の子どもなら喜んで手にする本である。

ブラックユーモアが馴染みにくいといわれる日本では、障害をねたに笑い話をつくることはしない。あくまでもまじめに障害について話す以外はない。同様な傾向をもつカナダでの障害者としての自己の経験から、著者は次のように語っている。

障がい者に起こるできごとは、障がいのない人にとっては楽しいことではなく、たいていは、緊張やいごこちの悪さ、そしてあわれみを引き起こしてしまいます。

私は、みんなが笑わないことにとまどいました。そして、こうした社会のわだかまりは、歴史、ことばや文学、障がいとともに生きることへの誤解や情報不足などから、少しずつ影響を受け、時間をかけてかたちづくられてきたことがわかったのです。(「はじめに」より)

彼女は、本書でまず障害の歴史から始まり、普通の人並みに扱われる時代となった説明をする。障害者は普通の人であるので、おかしい人、変な人、だめな人としての障害者も登場する。次に、車いす障害者の生活を楽しく扱おうとしている。彼女自身が描く障害者は区別して取り扱われてもニコニコと、時には好奇心いっぱいで楽しそうで、その行動も余裕と自信に満ちている。車いすという一般の人よりも低い視線で社会に出ていくと、他の人は気付かない点にまず目がいくことも本当である。それゆえ、きっと堂々と、彼女はトロント自立生活センターの理事として、差別の告発も行っているであろうと想像している。

本書の楽しさは、手にとってみなければわからない。障害に関心がある人にぜひ読んでほしいし、また障害に対して誤った考えをもっている人を見つけたら、本書を差し出してみてはどうだろうか。もちろん、子どもにも見せてやりたい。

(なかにしゆきこ アジア・ディスアビリティ・インスティテート代表、本誌編集委員)