「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年10月号
1000字提言
視覚障害者の就労
中村幹夫
盲学校を早期退職した私は、鍼灸院を開業してその日その日の患者来院数を気にするのも好まなかった。
ハローワークへ出かけて求職登録したが、ホテルのマッサージが数件あるだけ、今更ながら視覚障害者の就労機会の少なさを感じさせられた。
そんな私が1998年の第1回介護支援専門員実務研修受講試験を受ける気になったのには、それほど高邁な理想や展望があった訳ではない。無線従事者1級を受験した時のように、せっかく点字受験が認められたのだから、この際いただける資格を一つ取っておこうかという感じである。
幸い、受講試験をクリアし、実務研修を終了後、再びハローワークを訪れた。
高齢者介護に熱意を持つというよりは、果たしてこの「ケアマネジャー」という資格で一般企業が視覚障害者を採用してくれるものだろうか? その関心のほうが大きかった。
予想通り、全国展開している企業は、私との面接さえも受け入れなかった。2000年2月、私に面接を申し入れてくれたのが、その年4月の介護保険制度実施に向けて新規参入した現在の会社の社長である。
せっかく機会が与えられたのだから、後はやるより仕方がない。ヒューマン・アシスタント制度を利用し、介助者とともに認定調査、アセスメント、モニタリングに出向く。データをパソコンで処理して、介助者に必要な書類への転記等の作業を依頼する。ケアマネジャーや事業所連絡会、各種研究会にもアシスタントとともに出かける。そんな私の毎日である。
気楽にこの仕事にかかわりだした私であるが、訪れた利用者が私の質問に快く答え、こころを開いてくれるのはうれしい。「障害」をもつ私に対しては、防御の姿勢を崩し、安心してものが言えるのだ。
こうして恵まれた環境にある私であるが、ヒューマン・アシスタント制度の限界も感じている。以下、課題点をあげてみる。
- たとえ私のために採用されているアシスタントとは言え、厳しい企業の中、それ以外の仕事もこなさざるを得ない。アシスタントとの時間調整が意外に面倒である。
- 事業所から障害者雇用センターに提出する報告書には、事業者及び介助者の一方的な「障害者の就労状況に関する評価」が書き込まれる。
- 視覚障害者については、在宅勤務が認められず、常勤雇用が条件となっている。
等である。
(なかむらみきお (株)新世紀ケアサービス、介護支援専門員)