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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年11月号

提言

「障害者福祉法」制度を願う

全国精神障害者団体連合会

私は、精神保健福祉法ではなく、三障害(知的、身体、精神)を統合した「障害者福祉法」がほしいと思っています。

ばらばらな施策ではなくて、三障害共通なもの、障害別に必要なものを両方含んだ福祉法がほしいです。障害者福祉法ができるまでは、今ある精神保健福祉法を充実させていく必要があると思います。

精神保健福祉法の中にでてくる、精神保健福祉審議会と精神医療審査会に精神障害者自身を入れてください。

精神障害者は自分自身のことを自分で決めたくても、親とか病院とか、その他の人とかに決められて、自立しているとは言えません。それで精神障害者はみじめなのです。どうか本人を審議会に入れてください。自分たちのことは、自分たちも含めた組織で解決していきたいのです。

精神障害者の福祉制度であるホームヘルパーなどを支援費制度に入れて、数年後、介護保険制度に移行させるという案がでているようですが、これには反対です。

他の障害者と横並びで支援費制度に入れるというところまでは分かりますが、財政難だから、介護保険に入れるというのは、分かりません。社会資源を利用するとお金がかかるというのでは、精神障害者の社会復帰は進みません。全国で7万2千人の社会的入院はどうするのでしょう。本気で退院させる気があるのでしょうか。

次に就労についてですが、今年、北海道精神障害者回復者クラブ連合会の研修会で「就労(働くということ)」というテーマで講演会とシンポジウムを行いました。講演の講師を捜すのに一苦労しました。引き受けてくれないのです。語れないのです。

私は今さらながら、精神障害者の就労が遅れているのにびっくりしました。これは厚生労働省の取り組みの遅れだと思います。

ハローワークのみどりの窓口(障害者の就労を紹介してくれるところ)に行くと、精神障害者は「障害者だと名のらなければわからないから、障害を隠して一般就労しなさい」と言うのです。こんなバカなことがあっていいのでしょうか。

私は精神障害者の場合は、個人差はありますが、1日4時間くらいの就労が適切ではないかと思っています。8時間でも働けるのですが、8時間労働の場合は必ずと言っていいほど残業があるのです。それも何時間もある場合が多く、とてもそれにはついていけないのです。

私は「精神障害者が人権を持った人間として尊重され、人並みの幸せな生活が送れるよう」に頑張っていますが、「人並みの幸せな生活」というのはどんなものかというと、朝、奥さんの作ってくれた弁当を持って、会社にでかけ、子どもを生み育て、夕方には、ゆっくりテレビを見る、そんなささやかな願いです。

私たちは病気に波があります。“きちがいみたいに働く”という言葉があるように頑張りすぎます。その反動で、落ち込んで働けなくなります。だから私はいつも言います。「ちから、七分だしにして働きなさい。全力投球はしないように」と。

人間らしく生きるためには、働くということがとても大事なことだと思います。精神障害者の就労にもっと力を入れてください。

最後に、近頃、医者も患者も入院させないのがよい医者だと思っている人が多いような気がします。

しかし、私はそうは思いません。開放病棟の時代ですが、私は入院するときは「閉鎖病棟に入院させてね」と言います。疲れ切った私を保護するのは、外界の刺激をシャットアウトしてくれて、ゆっくり休める閉鎖病棟なのです。

病院は私を保護してくれる所なのです。それに閉鎖病棟のほうが開放病棟より早く良くなって、早く退院できると思います。閉鎖病棟だからと言って、鍵をかけたり、鉄格子をつける必要はないと思います。

近頃の医者は、本人が「入院しなくてもいいでしょうか」と尋ねているのに、「地域で頑張りましょう」と言って、手遅れになって自殺してしまった例が最近ありました。また、共同作業所の所長(精神障害者)が具合が悪いので自宅療養していましたが、治らなくて共同作業所を辞めて家でぶらぶらしている例などがあります。両者とも、2~3か月入院してしっかり治せば、ぴんぴんして(回復して)働けると思います。

精神病院の中は人権が無視され、暮らしにくいところがあります。精神病院はその体質を変え、入院が苦しいものでなくならなければならないと思いますが、精神病院は私は必要なものだと思います。

精神病院が楽しい所になればいいナ…と私自身は思っています。

(山崎多美子(やまざきたみこ) NPO法人全国精神障害者団体連合会理事長)