「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年1月号
目で見る「グランドデザイン案」
改革案のポイント
○障害者福祉のサービスを「一元化」
(サービス提供主体を市町村に一元化。障害の種類(身体障害、知的障害、精神障害)にかかわらず、共通の福祉サービスは共通の制度により提供。)
○障害者がもっと「働ける社会」に
(障害者が、企業等で働けるよう、福祉側からも支援)
○地域の限られた社会資源を活用できるよう「規制緩和」
(どんな市町村でも障害者福祉に取り組めるよう、空き教室や空き店舗の活用も視野に入れて規制を緩和する。地域社会の活性化にも貢献。)
○公平なサービス利用のための「手続きや基準の透明化、明確化」
(支援の必要度合いに応じてサービスが公平に利用できるようルールを明確化)
○利用したサービスの量等に応じた「公平な負担」
(障害者が福祉サービスを利用した場合に、低所得者に配慮しながら、公平な負担を求める。)
基本的視点
市町村を中心とするサービス提供体系の確立
- 障害者サービスについて、年齢、障害種別、疾病を越えて、サービスの提供主体を市町村を中心とする体制にする(一元化)。
- 市町村が具体的なサービス提供を効果的・効率的に実施できるように、国および都道府県は重層的な支援を行う。
福祉サービスの提供に関する事務の市町村移譲と国・都道府県による支援体制の確立
※ 障害児については、被虐待等の要保護性を有する者に係る実施主体の問題があり、概ね5年後の施行を目途に3年以内に結論を得る。
障害保健福祉サービスの計画的な整備手法の導入
このほか、次のような取り組みを進める。
○報酬請求事務等の電算化、外部化などの障害種別を超えた効果的・効率的な事務執行体制の整備の取り組み
○「精神分裂病」の「統合失調症」への名称変更などの障害等に対する国民の正しい理解を深める国の取り組み
利用者負担の見直し
- 他制度と均衡のとれた利用者負担の導入
- 受けたサービス量に応じた負担と家計に与える影響等を勘案した一定の負担上限
- 入所施設地域生活の均衡ある負担
- 負担能力の乏しい者への配慮
障害福祉サービスに係る利用者負担の見直し
サービス量と所得に着目した負担の仕組みに見直す。利用者が支払う負担料は、一定の負担上限(毎月)を設定する。しかし、設定した金額を負担することが困難な利用者に対しては、低い負担上限を設定する
地域生活と均衡のとれた入所施設の負担の見直し
通所施設での食費、入所施設での食費や光熱、水費日用品、医療費などは自己負担。また、個室利用料(症状等から個室利用が不可欠な場合を除く)にかかる施設利用料や長期入所など施設が生活の場となっている場合も自己負担。
障害に係る公費負担医療の対象者の見直し
医療費のみに着目した応益負担(精神)と所得にのみ着目した応能負担(更生・育成)を、医療費と所得に着目した負担の仕組みに統合する。
【福祉サービスに係る利用者負担の見直し】
障害福祉サービスに係る利用者負担の見直しの考え方
―実費負担+サービス量と所得に着目した負担―
〔居宅、通所〕
○応能負担(現在の平均負担率約1%) → 実費負担+サービス量と所得に着目した負担
〔入所〕
○応能負担(現在の平均負担率約10%) → 実費負担+サービス量と所得に着目した負担
負担能力の乏しい者については、経過措置も含め負担軽減措置を講ずる。
※精神関係の施設は、平成18年10月以降に、新施設・事務体系に移行したものから対象となる。それまでは、現行と同じ仕組み。
負担軽減する者の範囲(負担能力等の区分)
他制度との均衡を確保しつつ、普遍的な仕組みとする。
生活保護:生活保護世帯に属する者
低所得1:市町村民税非課税世帯であって世帯主及び世帯員のいずれも各所得がゼロであり、かつ、世帯主及び世帯員のいずれも収入が80万円(障害者基礎年金2級相当)未満である世帯に属する者
→ グループホームで単身で生活する基礎年金2級のみの者
低所得2:世帯主及び世帯員の全員が市町村民税の均等割非課税である世帯に属する者
→ 税制上の障害者控除や障害年金が非課税所得であること等から、通常の市町村民税非課税世帯よりは実収入水準は高くなる。障害者を含む3人世帯で障害基礎年金1級を受給している場合、概ね300万円以下の収入に相当。
※ 医療保険、介護保険等の他制度においては、障害のある者もない者も世帯の一員である場合には、経済的な面においては他の世帯構成員と互いに支え合う一体的な生活実態にあるという前提で、負担能力の有無を認定する際に、個人単位ではなく、「生計を一にする者」の全体の経済力を勘案しており、例えば健康保険においては、家族に保険料を求めない被扶養者制度等が設けられている。
※「生計を一にする者」の範囲については、法律事項ではないことから、法の施行時までに具体的に検討。
障害福祉サービスの利用者負担の見直し
―サービス量と所得に着目―
所得にのみ着目した応能負担から、次の観点から、サービス量と所得に着目した負担の仕組みに見直す。
○契約によりサービスを利用する者と利用しない者との公平を確保する。(障害者間の公平)
○制度運営の効率性と安定性を確保する。(障害者自らも制度を支える仕組み)
これと併せて、国、都道府県の財政責任の強化を図る。
※負担上限の該当の有無は、各サービスに係る負担額の合計で計算する。
※精神関係の施設は、平成18年10月以降に、新施設・事業体系に移行したものから対象となる。移行までは、現行と同じ仕組み。
平均的な利用者負担の例(在宅)
平均的な利用者負担の例(グループホーム/入所施設)
【障害に係る公費負担医療の利用者負担の見直し】
障害に係る公費負担医療の利用者負担の見直し(案)
―給付対象者の重点化等―
障害に係る公費負担医療の「制度面」での見直し(案)
―医療費と所得に着目―
医療費のみに着目した応益負担(精神)と所得にのみ着目した応能負担(更生・育成)を、次の観点から、「医療費と所得の双方に着目した負担」の仕組みに統合する。
○制度間の負担の不均衡を解消する。(障害者間の公平=医療費の多寡・所得の多寡に応じた負担)
○必要な医療を確保しつつ、制度運営の効率性と安定性を確保する。(障害者自らも制度を支える仕組み)
※市町村民税非課税の者のうち、食費の減免を受ければ生活保護を要しないこととなる者については、個別に認定を受けて食費を減免。
障害者の施設、事業体系や設置者、事業者要件の見直し
【見直しの方針】
○「地域生活支援」、「就労支援」といった新たな課題へ対応するため、自立訓練や就労移行支援等の地域生活への移行へ資する機能を強化するための事業を実施する。
○入所期間の長期化など本来の施設の機能と入所者の実態の乖離を解消するため、サービス体系を機能に着目して再編し、効果的・効率的にサービスが提供できる体系を確立する。
【通所・入所施設等の再編】
既存の施設を生活療養(医療型)、生活福祉(福祉型)、自立訓練(機能訓練、生活訓練)、就労移行支援、要支援障害者雇用等の機能に応じた事業として再編する。
再編後の事業の実施主体は、社会福祉法人の他、NPO法人等広く運営可能となるよう法的な整備を図る。
生活療養事業(身体)
常時介護を要する重度の障害者に対し、療養上の管理、看護、医学的管理下における介護その他日常生活の世話を行う事業(医療施設で実施)
生活福祉事業(身体・知的)
障害者支援施設等において常時介護を要する重度の障害者に対し、介護その他日常生活上の世話を行う他、レクリエーション、創作的活動、就労的活動など必要な便宜を与える事業
自立訓練事業(機能訓練)(身体)
身体機能に障害のある者に対し、有期限のプログラムに基づき、必要な治療やリハビリを行うとともに、独立生活に必要な訓練を行う事業
自立訓練事業(生活訓練)(知的・精神)
知的障害者又は精神障害者でその障害の状態から自立生活が困難な者に対し、有期限のプログラムに基づき、地域での生活を営む上での必要な訓練を行い、地域生活へ移行するための必要な訓練を行う事業
就労移行支援事業(身体・知的・精神)
企業等や就労すること又は自ら就労を行うことを希望する障害者に対し、有期限のプログラムに基づき、職場実習等の訓練を通じて一般企業等への就労に向けて、必要な知識、能力を育むための訓練を行う事業
要支援障害者雇用事業(身体・知的・精神)
一般企業での就労が困難な障害者を雇用し、その者の職業遂行を支援し、よって障害者の職業能力の向上を図る事業
※ 重度精神障害者の入所施設は、精神病床の機能分化で対応。
多機能型のイメージ
障害者の居住支援サービスの見直し
居住サポート事業:障害者の一般住宅への入居を推進していくため、緊急時の連絡先や身元保証を求める一般住居提供者等のニーズに対応する等の入居を支援する事業。障害保健福祉圏域ごとに体制整備を進める。
良質な精神医療の効率的な提供
患者の病態に応じた精神病床の機能分化の促進と地域医療体系の整備
入院患者の早期退院を促進し地域の目標値を達成するため、急性期、社会復帰リハ、重度療養等の機能分化を促進し、患者の病状等に応じた適切な医療を各病院の病棟・病室(ユニット)単位で柔軟に実施できる体制を平成18年度には実施することを目指す。
精神科救急について、輪番制など二次医療圏単位での既存体制に加えて、地域ごとの社会資源を活かして、中核的なセンター機能を持つ救急医療施設の整備を進める。
救急医療システムの考え方(案)
総合的な自立支援システムの構築
障害者のライフステージに応じ、ニーズや適性を踏まえ、個別に自立支援する。 新しい給付等の体系(総合的な自立支援システム)
移動支援サービスの見直し
【見直しの視点】
○移動支援については、突発的なニーズへの対応や複数の者の移動の同時支援など柔軟性のある支援を行うため、「地域生活支援事業」としてサービスを提供する。
○ただし、移動支援と介護を一体的に提供する必要がある一定程度以上の重度障害者については、個別給付でサービスを提供するものとする。(一定時間継続した利用を想定した単価を設定)
※なお、見直し後の下記類型と別に設けるALS等極めて重度の身体障害者、強度行動障害のある極めて重度の知的障害者、極めて重度の精神障害者に複数のサービスを包括的に提供する「重度障害者包括サービス」には、移動支援を含むものとする。
【現行】
以下の障害者を対象に、個別給付によりサービスを実施
- 身体障害者(視覚、全身性)
- 知的障害者
- 障害児
※ 精神障害者については、サービスを未実施。
【見直し後】
行動援護:自己判断能力が制限されている者が危険等を回避するための援護(移動の場合も可)
- 自閉症、てんかん等を有する重度の知的障害者(児)又は統合失調症等を有する重度の精神障害者であって、危険回避ができない、自傷、異食、徘徊等の行動障害に対する援護を必要とする者
日常生活支援:現行の日常生活支援+外出時における介護
- 重度の要介護状態にあって、かつ、四肢マヒのある身体障害者
移動支援事業:上記以外の移動支援(具体的な支援の範囲は市町村ごとに決定)
- 身体障害者
- 知的障害者・障害児
- 精神障害者
※一定程度以上の障害の状態にある者
個別給付
地域生活支援事業
〔参考〕
○身体介護サービスでの通院 ―変更なし→ ○身体介護サービスでの通院 (個別給付)
○ リフト付福祉バス事業等 ○リフト付福祉バス事業等 (地域生活支援事業)
「補装具給付事業」と「日常生活用具給付事業」のイメージ
補装具給付事業
- 身体機能の補完・代替
→義肢、装具、座位保持装置 等 - 移動の確保
→車いす、電動車いす、盲人安全つえ 等 - コミュニケーションの確保
→点字器、補聴器、人工喉頭 等 - 衛生の確保
→収尿器、ストマ用装具 等
日常生活用具給付事業
- 介護支援
→浴槽、体位変換器、移動用リフト 等 - コミュニケーション支援
→視覚障害者用ポータブルレコーダー、視覚障害者用拡大読書器、聴覚障害者用情報受信装置 等 - 在宅療養支援
→ネブライザー、電気式たん吸引器、透析液加湿器 - その他
→電磁調理器、火災警報機 等
利用者負担(応能負担)
○「福祉用具給付制度等検討会報告」(平成11年2月)に基づき、次のような視点で、現行給付品目の見直しを行い、入替(補装具→日生具、日生具→補装具)等を検討する。
- ・補装具 →
- (1)身体機能を補完・代替し、身体に装着(装用)して常用し、かつ、給付や利用等に際して専門的な知見が求められるもの
- (2)極めて重度の障害者のコミュニケーションの確保に資するものであって、費用対効果が高いもの
- (3)(1)又は(2)を満たした上で、安価でかつ一般的に普及しているものではないこと
・日常生活用具
→補装具以外の機器で、日常生活を便利又は容易ならしめるもの
○その上で、補装具給付を「個別給付」に、日常生活用具給付を「地域生活支援事業」に位置づける。
【見直し後】
個別給付
○利用者負担
→応益負担(定率)+ 一定の負担上限
一定所得以上者は給付対象外
○公費→負担実績に応じて支弁
地域生活支援事業(市町村基本事業)
○利用者負担→市町村が決定
○公費→利用実績に応じて一定額を交付
障害者自立支援給付法(仮称)
各障害者共通の自立支援のための福祉サービス体系にかかる共通部分を総合的に進める。
障害者自立支援給付法(仮称)
(障害種別に関わりのない共通の給付等に関する以下の事項について規定)
第一 総則
○目的、責務、用語の定義等
第二 自立支援給付
○自立支援給付の支給決定の手続き及び支給等
第三 地域生活支援事業
○市町村及び都道府県の実施する地域生活支援事業
第四 事業及び施設
○事業の開始及び施設の設置等
第五 障害福祉計画
○障害福祉計画の策定等
第六 費用負担
○介護給付等の費用に関する市町村、都道府県及び国の負担
第七 その他
身体障害者福祉法
- 身体障害者の定義
- 身体障害者更生相談所
- 福祉の措置
等
知的障害者福祉法
- 知的障害者更生相談所
- 福祉の措置
等
精神保健福祉法
- 精神障害者の定義
- 精神保健福祉センター
- 措置入院等
等
児童福祉法
- 児童の定義
- 児童相談所
- 福祉の措置
等
※この資料は、厚生労働省社会保障審議会障害者部会(第18回、19回、21回、22回、23回)の資料をもとに編集部が作成したものである。尚、厚生労働省HP(http://www.mhlw.go.jp/)から各部会の報告は閲覧可。