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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年1月号

障害者施策の今後に思う

だれもが支え合いを実感できる「地域」をつくる

北海道知事
高橋はるみ

平成15年に現職に就いて以来、機会あるごとに、道内各地で、障害がある方々の意見を伺うよう努めています。その際には、広い北海道という同じ場所に住む者同士、共感をおぼえることが多くありますが、その一方、我々の普段の生活ではなかなか実感しにくい点にこそ、多くの不安があると、いつも強く感じます。

北海道では、これまでに多くの実践があります。伊達市では、知的障害のある方々が、街の中で働き・生活する姿は、当たり前のものとなっています。札幌市では、重度の身体障害のある方々が、さまざまなサポートを活用しながら、実に生き生きとした暮らしを展開されています。最近では、千歳市や道東・斜里町において、相談支援機能を核として地域で生活できる体制をつくっていこうとする動きが、自発的に生まれてきています。

道内では、人口5千人以下の町村が80以上、約4割に上り、多くの場合、広大なエリアにひろがっていますが、このような小規模自治体においては、障害種別や年齢などにかかわらず、日々の暮らしの中で困っている人、助けを必要としている人について、役場を含め、自ずと住民相互の理解があり、いざというときだけでなく、日常的に支え合いが実行されているという状況があります。これは、今や都市部ではみつけにくくなっている、大きな強みと感じています。

こうした強みを活かし、同じ社会を構成する仲間として、障害のある方々だけでなく高齢者、子ども、病気の方々などとともに、だれもが支え合いを実感できる地域社会をつくっていくことを、めざしていきたいと考えています。

こうした観点から、平成17年度においては、新しい取り組みを実施していくことを検討しています。第一に、相談支援体制の整備があります。障害種別を超えて総合的に生活を支えるための基盤として、相談支援やケアマネジメントを確保するため、市町村の役割が大変重要となっていますが、道として、これを広域的観点から支援できるよう、圏域ごとに拠点機能を立ち上げていきたいと考えています。

第二に、手厚い支援を要する方々への取り組みです。特に、医療的ケアを必要とする方々の社会的活動の場を確保するため、看護師派遣の仕組みをつくることを検討していくこととしています。このほか、雇用サイドと福祉サイドが連携した就労支援拠点の整備、「自閉症・発達障害支援センター」機能の地域的展開、地域生活支援に向けた入所施設の機能転換などをめざし、新しい取り組みを総合的に展開していきたいと考えています。

しかし、このような案は、道庁内部だけで検討していても生きたものとなりません。これまでに私自身がさまざまな場で伺ってきたご意見はもちろんのこと、毎月集まっていただいている会議(北海道障害者地域生活支援体制検討会議)をはじめとするさまざまな機会に、障害のある方々やそのご家族、支援者などと重ねてきた議論が、基本となっています。

道における新しい取り組みの多くの部分が、去る10月に厚生労働省から示された「グランドデザイン案」と同じ方向にあることを見て、自然な流れであると感じています。市町村を中心にサービスを一元化すること、もっと働ける社会に変えていくこと、効果的にサービスを利用できるように相談支援体制を構築していくこと、公的サービスの財政的基盤を安定的なものとすることなど、いずれも障害のある方々自身の声でもあるからです。

一方で、急スピードで示される改革案を前に、不安を隠せない方が多くいることも事実です。これまでに長い期間をかけて、自らの生活を何とか軌道に乗せるよう努力してこられた方々ほど、それが強いかもしれません。現在でも、必要なサービスを利用できない状況に置かれている方々が存在することを考えると、さらにサービスのすそ野を拡大していかなければなりませんが、そのためには、「障害関係者」の枠を超えて、幅広く人々の理解も獲得していかなければなりません。

障害のある方々自身が出発点であることをしっかり頭に置いたうえで、新しい姿のありようについて対話を積み重ねていくことが、鍵となるはずです。我々としては、こうした話合いのプロセスを通じて地域をつくっていくことができるよう、目に見える形で、市町村をはじめとする関係者を支援していくこととしています。

ぜひとも、障害とは無関係に生活している(ように感じている)若者も加え、活発な議論を喚起していきたいと考えています。

(たかはしはるみ)