「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年1月号
列島縦断ネットワーキング
京都 働くことを当たり前に
「アイ・コラボレーション京都」の取り組み
小森猛
浅田氏との出会い
アイ・コラボレーション京都の始まりは、2002年の夏頃、現在のアイ・コラボレーション京都の事務局長である浅田功さんから話を聞いたことがきっかけです。浅田さんは、会社経営をしていたときに、精神障害をもつ人にパソコンの指導をしていたことがあり、障害をもつ人にも理解があり、たくさんの企業の人たちとのネットワークを持っていました。
私が当時働くというイメージ、特に作業所に対するイメージは、ほとんど作業らしい作業もせずに、重度の障害をもつ人が昼間の間、家族の負担を減らすために来ている、健常者がやらないような単純作業を好きでもないのにやらされている、職員には給料が入るのに働く所員にはまともな給料が入らない、というようなものでした。このような作業所は私はやりたくはありませんでした。
私は、障害をもつ人が働くことが当たり前になれば、大きく社会を変えることになるだろう、そしてそのことが新たな経済効果を生み出すに違いないと思っていました。社会は、障害をもっている人の力に気づかなければならないし、障害をもっている人の力を十分に発揮できる教育作りをしていかなくてはならないと考えていました。浅田さんも私と同じ考えでした。
しかし、現実には、特に車いすを常時必要とする人、四肢マヒをもつ人が一般の企業に就職するのは容易ではありません。仮に就職できたとしても就職できたことに感謝して頑張りすぎたり、無理に無理を重ねて体をこわすか、会社の中で遠慮して自己主張もできずに辞めた人を何人も見てきました。就職できても継続できるかどうかはまた別です。そこで、障害をもっていても、その人が持っている力を発揮できる組織を作ろうと立ち上げました。
3人の仲間が参加
浅田さんと意気投合した私は、早速同じ障害をもつ3人の仲間にこの話をしました。3人とも働いてはいませんでした。一人は土、日はツインバスケットの練習をしているか、一人はリハビリセンターで5年間訓練の後在宅のまま、もう一人はコンピュータ学院を修了するところでした。働きたいという意欲はあっても仕事はなく、将来に不安を抱えていました。この3人も仲間に入り、5人で話し合いを重ねました。そして、アイ・コラボレーション京都でしっかり勉強して、一般企業に就職できるようにみんなで頑張ろうと目標を立てました。
アイ・コラボレーション京都の理念を次のように掲げました。
- 個々の技術、創造力を持って、明確なビジョンのもとに事業を創造、推進
- テレワーク(ネットワークを使った遠隔共同作業)による仕事スタイル
- 能力に応じた参加と、成果に応じた報酬
- 相互教育による能力の向上
発足
2003年4月1日、京田辺市の近鉄田辺駅前のオヒィスビル3階に事務所を借りてスタートしました。30坪の広々としたフロアに車いす用トイレも設置され、恵まれた環境で仕事に取り組むことができました。これには京田辺市の協力があってできたことです。必ず、支援してくれた恩返しをするんだという思いをみんながしっかりと受け止めてくれていると思います。
事業内容
○ホームページ制作などのIT関連事業
社会福祉法人聖ヨゼフ会や京都府雇用・能力開発機構などのホームページを制作
○DTP
関西創業サポートセンターなど数社のパンフレットを制作
○キャラクターデザイン制作
京田辺市市議会議員南部登志子氏のキャラクターデザイン
○パソコン教室
私たちの事業の一つに社会貢献があり、その一環として地域の小学生に2か月に1回の割合で「ふれあいパソコン教室」を開いています。12月で9回目を数え、年賀状作りを行いました。また、一般の地域の人を対象に、パソコン教室を開催しています。WORD、EXCELの初級から上級コース、インターネットをマンツーマン形式で個別にプログラムを組み、ゆっくり丁寧を心がけています。
○ホームページによる情報発信
○地域交流やイベント活動など
仲間の就職と働ける環境づくり
アイ・コラボレーション京都を一緒に立ち上げた仲間の3人は、一昨年の12月に2人、昨年4月に残りの一人も企業に就職することができました。昨年の12月にはほかの3人の就職も決まったのですが、これも最初に就職した先輩の努力があったからだと思います。
現在は、就職をした仲間のうち、5人がアイ・コラボレーション京都の事務所が入っているビルの同じフロアに企業側が仕事場として部屋を借りて、週3日はそこで働き、残りの2日は在宅勤務という形態をとっています。週3日のうち1回は本社に出勤し、もう1日は上司が仕事場に出向いて打ち合わせをするなど、お互いの連絡を密にしています。頸髄損傷など重い障害のある人が働き続けるためには、体調の管理も大切です。環境の変化が少なく体の状態に合わせて働ける環境があることは、継続して仕事ができる大切な要因の一つです。
今後の取り組み
私たちは、これまでの事業を土台に、一般企業に就職するための手だても考えていかねばなりません。さらに障害をもっていてもできるだけ長く働くことができるように社会の環境を整えることをめざしています。まずは積極的に私たちからの働きかけを行い、一般企業にアイ・コラボレーション京都の在り方、障害をもつ人の力をぜひ知っていただき、障害をもつ人への理解に努めていきたいと考えています。
●アイ・コラボレーション京都のホームページ
http://www.i-collabo-kyoto.com/
(こもりたけし アイ・コラボレーション京都代表)