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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年5月号

動物と暮らすということ

ペット VS セラピー犬 VS 補助犬

高柳友子

2002年に成立した身体障害者補助犬法で初めて、「盲導犬・聴導犬・介助犬」の3種が「障害者の身体機能の一部を代償する手段」として法的に認められました。法律ができる前はこれらの犬の存在は単なるペットでしかなかったので、ペットとの社会参加は認められないわが国では、「補助犬」を同伴しての社会参加が果たせませんでした。一方、アニマルセラピーという補助療法としてのペットの活用も近年注目を浴びています。精神科やリハビリテーション領域で作業療法士や理学療法士などがペットの存在を患者とのコミュニケーションに活用したり、リハビリの動機付けとして用いたりする療法で、正確には動物介在療法といいます。これらの療法で活用される犬はみな、療法に協力するボランティアのペットで適性評価と教育プログラムなどを経てきた犬です。

犬には飼い主が不特定ということはあり得ません。社会に存在するすべての犬がペットであり、セラピー犬も補助犬も、飼い主が特定されるペットすなわち家庭犬であるということに変わりありません。

補助犬は常に障害者と共にいることからいつ役割が発生するか分からない点が法的位置づけを与えられた所以でもあり、オン・オフが不定期に訪れます。が、役割がないときには家庭犬として過ごしますし、セラピー犬は活動現場にいるときのみが「セラピー犬」であって、現場を離れればセラピー犬と呼ぶ必要性はなくなります。広義に動物介在活動(ふれあい活動)や動物介在教育などに介在する犬まで含めて「セラピー犬」と呼ぶ向きがありますが、それではすべてのペットが「セラピー犬」になってしまいます。逆に言うならばセラピー効果がないペットがいるとしたら、それは飼い主側の意識または飼育方法に問題があるのかもしれません。

三者の異なる点は社会とのつながり、および公衆衛生学的な基準の有無に限られます。補助犬は法的な位置づけをもち、公衆衛生学的基準に則って公的認定を受けています。補助犬以外は公的認定制度や基準はありません。セラピー犬は活動現場に定められた健康管理および行動管理基準が課せられていますが、施設によってまちまちであるのが現状です。

ペットの飼い主になるということは一つの命の保護者になることです。その責任にむしろセラピー効果があるともいえます。セラピー効果は共通し、社会的役割が異なることから公衆衛生学的基準の有無に相違点があるのが三者の違いです。

(たかやなぎともこ 特定非営利活動法人日本介助犬アカデミー専務理事、横浜市総合リハビリテーションセンター医師)