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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年7月号

自治体での取り組み 御殿場市

御殿場市ボランティア連絡協議会の取り組み

近藤八重子

平成7年に阪神・淡路大地震が発生し、大変な被害が出ました。私たちは被災された方々に励ましの手紙を送り、交流を進めていく中で物的被害はもとより、その後の生活で孤立してしまい、悲しい状況を作ったことを知りました。私は福祉ボランティアとして、障害のある方たちと一緒に活動していましたので、非常に大きな問題としてとらえました。

しかし、プライバシーの問題、守秘義務等、周囲の理解が得られず、どのように取り組んでいったらよいか分からなくなりました。当時静岡県では、東海地震のことが報道されていましたので、考えてばかりいるのではなく、実際にボランティアとしてできることからはじめようと意を決しました。

まず避難訓練に参加

まず防災訓練はもちろんのこと、避難場所さえ行ったことのない当事者13人とボランティア18人で、平成8年8月に静岡県総合防災訓練の御殿場会場に参加しました。

そのときに多くの問題が出ました。一つは訓練会場に障害者用のトイレがなかったことです。そのため、車いすの人はいったん家に帰ってまた戻ってくるという状況でした。二つ目は、御殿場市は冬は雪が降るので、建物の入り口に2段くらいの段差があります。避難地図には、そのような段差のことは明記されておらず、実際には自力で移動できない人もでました。また、知的障害の人たちも参加したのですが、中には時間が経つと落ち着かなくなる方もいます。そんな時、ほかの参加者からの心ない言葉に、協力してくれた当事者の方に辛い思いをさせてしまいました。日頃から、地域で当事者の方との交流があれば、このようなことは起こらないのに、という気持ちでいっぱいになりました。そしてますます災害時における障害者の支援の取り組みの必要性を痛感し、御殿場市ボランティア連絡協議会(以下、ボランティア連絡協議会)の中に救援システム部会を立ち上げました。そして当事者団体などに粘り強く働きかけた結果、障害者100人、災害時ボランティア57人の名簿が集まりました。このことが力になりました。

災害時社会的支援必要者救援システム

1.救援システム訓練とカード作り

ボランティア連絡協議会では、訓練の実施にあたって、要援護者1人に対し、災害時ボランティア2~4人(最低2人)を組み合わせて地図上に書きこんだカードを作りました。このチームごとに事前確認を行います。訓練の参加は当事者の健康に配慮して、さまざまな事態を想定した話し合いなどを通して、まずは仲良くなってくださいとお願いします。訓練のためだけではない、いざというときの避難誘導チームなので、事前の訓練や研修はお互いの信頼関係を深めていくうえで、とても大切なことなのです。

災害時社会的支援必要者救援システム訓練実施日程

地震発生―午前9時に地震が発生したと想定。

(1)安否確認―当事者宅へ向かい、安否を確認。

(2)避難誘導―最寄の各組避難地へ移動→各区指定の避難地へ移動

※当事者の体調等に注意し、どこまで避難するかは当事者の判断によって決める。

(3)安否確認連絡―災害時社会的支援必要者救援システム訓練本部(支所・公民館)に報告。

※実施記録は、必要事項を記入し、反省会時に回収。

(4)訓練参加―各区の地域防災訓練(救急法・炊き出し等)に参加。

※避難誘導と同様、当事者の体調等に注意し、訓練に参加。

(5)帰宅―当事者を自宅まで送る。

(6)反省会―午前11時 訓練本部(支所・公民館)に集合。

※救援担当者のほか、当事者にも参加を呼びかけ。

2.訓練の経過

当事者団体からの名簿を元に、毎年救援システム訓練を実施する地区を変えてシミュレーションを重ねていきました。こうしたことを続けていく中で、ボランティア連絡協議会の活動は、徐々に市や自主防災会等からの理解や協力も得られるようになりました。

平成11年度の救援システム訓練からは、中学生ボランティアの参加が始まり、翌年からは、高齢者が参加するなど取り組みの輪は大きく広がり、地域福祉ボランティアの協力はより力強いものとなりました。地域の防災訓練に参加して、消火訓練・非常食の試食などを体験しながら隣近所の方たちと交流し、顔の見える関係を作っていくことは、地域住民として、障害者も健常者も同じだと思います。多くの人と知り合ってほしいと思います。

平成12年には、登録を承諾された方のみの身体障害者の防災台帳も作成されました。

救援システム訓練を進めていく中で注意したことは、プライバシーの問題とカードの取り扱いでした。救援システムカードは、避難誘導チーム内で所有し、カードの台帳は厳重に保管されています。

これからのこと

訓練のシミュレーションを重ねていく中で、当事者やボランティアの方々の防災に対する意識も高まり、実際の訓練を通して、避難地図では分からないさまざまなバリアが見えてきました。その一方で、障害があっても、災害時に支援者として役割を担えることも分かりました。

災害時には弱者も強者もいないはずです。助ける人、助けられる人という構図ではなく、普段からお互いに助け合う関係を築くことが何より大切なことだと思います。

ボランティア連絡協議会が行ったことは、地域住民として、障害のある人もない人も共に支え合うきっかけづくりであり、この救援システムは、地域の中に定着して初めて有効に機能するシステムなのです。今後は、行政や地区の自主防災組織の具体的な取り組みを期待し、連携・協力して要援護者対策の一層の充実を図っていきたいと考えています。

(こんどうやえこ 御殿場市ボランティア連絡協議会)