音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年9月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編 ●使いやすいこだわりの食器棚、他●

提案:佐藤浩子 イラスト:はんだみちこ

佐藤浩子(さとうひろこ)さん

2歳よりポリオによる両下肢マヒ。補装具と松葉杖から車いす使用になって18年。気分転換は料理とファッション。芸術には趣味以上の思い入れがある。車いすで1番行きにくさを感じるのは劇場なので、劇場のバリアフリー化を願っている。

東京都文京区在住、スタジオIL文京理事。


使いやすいこだわりの食器棚

20年ほど前に、台所を全面的に改修しました。台所内のものは、すべて私の車いすの高さに合わせたオーダーメイドですが、特に食器棚は作り付けのものをデザインして注文しました。

扉はもちろん引き戸にし、中間部には引き出し式の補助テーブルをつけ、食器の出し入れや料理を盛りつける際の一時置き場として使っています。

私が考えた一番の工夫は、食器棚の下半分の収納の棚をすべてスライド式にしたことです。こうすることで、車いすに乗ったままでも、少し身をかがめて手を伸ばせば、低い部分のものも一番下の方まで、楽々と出し入れすることができます。スライド棚にはそれぞれにレールが付いているので、めいっぱい引き出しても、手前に倒れ落ちることはありませんし、それぞれの棚には、鉤の手状のストッパーを付けてています。これは、健常者の人にとっても使利なアイデアだと、誉められています。


玄関のスロープ

私のマンションは築28年で、かなり古いものですが、段差は、通路から玄関に入る所に1段、玄関から部屋に入る所に1段だけです。

補装具と松葉杖で外出していたころは、この程度の段差は、軽くクリアできましたが、すべて車いすの生活になった時、通路から玄関への段差をスロープに改修しました。その際、ドアの敷居から即スロープ状にせずに、35センチほど平らな部分を残しておきました。

なぜなら、その当時、ドアの開閉は電動式に改修したものの、施錠は手で行うものでした。外出先から帰って来た時、この平らな部分にひとまず前輪を乗せると、安定して、ストッパーをかけるのが楽になるからです。また、この部分は、外出の際にバックで下る時も、ドアの仕切りから急に滑りだすよりは、心の準備にもなって、「さあ出発」となるし、危うさも少なく安心です。

その後、さらに、ドアをワンタッチの電子ロック式に改修しましたが、夕刊が飛び出して新聞受けに入っている時など、センサーの関係で解錠の前に新聞を抜かねばならず、そんな時はやはり、この平らな部分が生きています。


車の乗り降りを安全に

私は長いこと手動式の車を運転していますが、車の乗り降りには、時間がかかり、健常者のようなわけにはいきません。車いすを積んで外出するようになってからは、ドアもさらに大きく開け放しておかなければなりません。

駐車禁止除外車両のステッカーを使って路上駐車をする時、後ろから車が来ない頃合いを見計らってはいますが、それでも、すぐ脇を他の車が走り抜けて行くこともあるので、とても緊張してしまいます。

ある時友人が、それは危険だと言って、ドアの開口内部に蛍光テープを貼るように勧めてくれました。私もそれはよいアイデアだと思い、たくさんのテープをベタベタと貼り付けています。

黄色い幅広のテープですから、昼間でも、後ろから来る車からはよく見えると思います。車いすの人の車だと認識する以前に、やはり、ドライバーの注意を喚起できるはず、と思っています。“ここは、よけてクダサ~イ”というサインのために…。