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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年11月号

わがまちの障害者計画 福島県群山市

郡山市長 原正夫氏に聞く
「ひとづくり」が基本のまちづくり―共生社会の実現

聞き手:樫本修
(宮城県障害者更生相談所長、本誌編集同人)


福島県郡山市基礎データ

◆面積:757.06キロメートル
◆人口:334,611人(平成17年9月1日)
◆障害者の状況(平成17年4月1日)
身体障害者手帳所持者     9,730人
(知的障害)療育手帳所持者  1,704人
精神障害者保健福祉手帳所持者   694人
◆郡山市の概況:
福島県の中央に位置し、県内の経済をリードする経済県都と呼ばれ「農業・工業・商業」がバランスよく発展している。その大きな要因は明治期の国営開拓事業にあり「安積疎水」は有名。新幹線、高速自動車道、空港等の高速交通網にも恵まれ「陸の港」として交流拠点になっている。食味ランキング特Aの米、「あさか舞」は全国有数の生産量。平成9年「中核市」移行、昨年は市制施行80周年を迎えた。
◆問い合わせ:
郡山市保健福祉部障害福祉課
〒963-8601 郡山市朝日1-23-7
TEL 024-924-2381 FAX 024-933-2290

▼原市長さんは、4月に市長に就任されたばかりですので、まずはまちづくりと障がい者福祉に対する抱負をお聞かせください。

私は、「まちづくりは地域づくりから」「地域づくりはふるさとづくりから」、そして「ふるさとづくりは人づくりから」の信念のもと、「人づくり」をすべての基本として考えています。市民との対話や交流を深め、1.「市民が主役の郡山」、2.「継続と創造の精神」、3.「ハードよりソフト」、4.「選択と集中」の四つの基本理念の考え方をもとに、まちづくりに取り組んでいます。この郡山が、強い都市力を持ち、多くの人を惹きつけ、住みたくなる魅力あるまちとなり、安全・安心で快適な生活を送ることのできる「人口50万人の広域拠点都市」となることをめざしています。

障がい者福祉においても、障がい者の方と健常者が一緒になって、互いに手を取り合って施策を進めていくことが大事だと思っています。障がい者が自立できるような環境を作り、障がいがあっても自立生活ができるように支援していきたいと思っています。障がい者が自分でできることをもっているのは自信につながりますが、周りがやらせないでしまっていることが多いですね。自分たち自身が自立していくんだという意識、どれだけ自己啓発できるのかということを学齢段階から教えることも大切です。そのためには、行政がお金を出せばいいということではなくて民間と行政がうまく連携して自立支援の施策を進めていくことが大事です。

▼いただきました資料やパンフレットをみると障害の標記がすべて障がいになっていますね。この辺りにも郡山市の障がい者福祉に対する意気込みを感じるのですが。

本市では、以前から、障がい者団体などをはじめとした市民との共働のまちづくりを推進していましたが、障がい者団体の中には、「障害」を「障碍」と表記するところがありました。「障害」に対する不快感、「害」の字のイメージの悪さ、差別、偏見を無くそうという「心のバリアフリー」の取り組みの一つとして標記の変更を行ったものです。現在は、「第二次郡山市障がい者計画」のほか、市の広報など市民向けの文書については、基本的にひらがな表記としています。

▼お話にあった第二次郡山市障がい者計画についてお伺いします。「第一次計画」から引き継がれたものや、新たな計画として入ったものをお聞かせください。

「第一次計画」(平成9~15年度)の、障害のある人もない人も共に支え合い、互いに尊重する社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念と、保健、医療、福祉など一体的なサービスを行い自立した生活が送れる社会をめざす「リハビリテーション」の理念を継承しています。

16年度策定の「第二次郡山市障がい者計画」の基本理念は、「障がいのある人もない人も、お互いに人権、人格、個性を専重し、ともに生きる社会の実現」いわゆる「共生社会の実現」です。「障がい者が自立して社会参加できる社会の推進」を基本目標とし、新たに「障がい者の自立と社会参加支援」「地域生活への移行支援」「地域生活充実の支援」「ユニバーサルデザイン社会の実現」の4つを基本施策として掲げ、施設からの地域移行などを踏まえた在宅支援施策を推進していきます。

たとえば、障がい者が地域で生きいきと自立した生活を送るために、支援費制度のホームヘルプサービスやデイサービスなどの居宅生活支援サービスのメニューをすべて整備するとともに、小規模作業所、地域生活支援など、在宅支援サービスの充実を図っています。また、障がい者の職業的自立を図るため、障がい者の就労と生活支援の推進に努め成果を上げています。

さらに、障がいのある方が地域で生活していくうえで、市民の皆様の理解が必要です。健常者との交流の拡大、各種啓発・広報事業にも力を入れて行きたいと考えています。また、この10月からは、新たに障がい児の健全育成と保護者の経済的負担の軽減を図るため、障がい児の放課後や夏休みなどの対策として「障がい児放課後クラブ事業」を実施いたしました。

▼郡山市では障がい者の地域生活支援に大変力を入れていると伺っています。その中でも特に障がい者生活支援事業を障がい当事者団体に委託していると聞いていますが、その経緯や理由を教えてください。

障がい者生活支援事業は、在宅障がい者の自立と社会参加を目的に、在宅福祉サービスの利用援助、社会資源の活用や社会生活力を高めるための支援、ピアカウンセリング、介護相談及び情報提供等を総合的に行うため、障がい当事者団体であるNPO法人「あいえるの会」に委託し、平成11年度から実施しています。本市は、当事者団体との共働のまちづくりを進めるため、当事者団体の支援をしておりましたが、ピアカウンセリングや自立生活プログラムなどを行っていた当事者団体が行うことが一番適当であると考え、「あいえるの会」にお願いをしました。

また、15年度からは、市内の障がい者が年間約3万1,000人利用している郡山市障害者福祉センターに相談事務所を移転し、さらに、相談体制の充実を図っています。

▼障がい当事者の方が相手の立場になって親身に相談を受け付けているということですね。行政との連携はうまくいっているのですか。

この事業を委託して7年目になります。相談員は2名おりますが、1名は、当初から携わっているベテラン、もう1名も3年目を迎えており、充実した体制となっています。訪問活動も市のケースワーカーに同行したり、お互いに情報提供をしたりと、良好な連携で障がい者の支援を行っています。

▼障がい者地域生活支援事業では充実したケア会議を開催しているようですね。ケア会議は、どのくらいの頻度で開催しているのですか。また、会議の構成メンバーやケアプランの中身を教えてください。

この事業は、15年度から2年間特別モデル事業の国庫補助を受け実施してきましたが、17年度は事業の必要性から市単独で継続実施しています。主に知的障がい者に対し、福祉サービスの利用などの相談支援やケア会議を開催しています。

ケア会議は、必要に応じて月に2回程度開催しています。メンバーは、障がい者本人やその保護者の参加を原則とし、市及び居宅支援事業者、医療機関、福祉施設、弁護士等障がい者の幅広いニーズに対応できる人材で構成されています。そのため、障がい者が抱える問題が明確になり、共通理解の下、ニーズに沿ったケアプランが作成されています。

▼障がい者の就業支援にも力を入れているようですが、平成16年度の実績を具体的に紹介してください。また、今年度はどのようなことに力を入れていますか。

県の委託により14年度から「地域障害者就業サポートセンター」を創設し、16年度からは国の採択を受け「県中地域障害者就業・生活支援センター」として事業を実施しています。16年度には、142人の障がい者が登録し、職場実習など延べ約2,000件に及ぶ相談や助言により、21人が就労することができました。

センターには生活支援を専門に担当する職員を配置し、就業や日常生活、社会生活上の支援を行い、就業生活における自立を図っています。就業希望の障がい者に対しては、ハローワークと連携し、事業所や職業訓練等のあっせん、仕事の悩みや職場でのトラブル等の指導および助言等を行い、就労が継続できるよう支援を行っています。

しかしせっかく就労できたにもかかわらず、離職するケースもあることから、17年度は、職場定着支援プログラムの作成をしっかり行い、就労支援、職場定着支援、生活支援の連携を深めながら、地域のさまざまな資源を有効利用し、共に生きる社会作りとネットワークの形成を深めようと考えています。また、本年4月から発達障害者支援法が施行されましたが、発達障がい者への支援も行っていきます。

▼当事者の立場になっての支援、市民と一体になった施策をたくさん聞かせていただきました。最後に、郡山市では市内9か所の公共施設にオストメイト対応トイレを設置されています。これもひとづくりを基本に「すべての人にやさしいまちづくり」が進められている事例と実感いたしました。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。