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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年3月号

平成18年度 障害保健福祉部関係予算(案)について

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課

障害保健福祉施策については、障害者自立支援法に基づき、障害の種類に関わりなく福祉サービスを一元化することや、障害者の就労の支援、費用の公平な負担などを柱とする制度の抜本的な見直しを実施し、障害者の地域における自立した生活を支援する体制を整備するものであります。

障害者の自立と共生の社会を実現し、障害者が地域で暮らせる社会にするための、新制度の主なポイントとしては、

1.障害者施策を三障害一元化

○現状では、

  • 三障害(身体、知的、精神)ばらばらの制度体系(精神障害者は支援費制度の対象外)
  • 実施主体については、都道府県、市町村に二分化

○法律による改革として、

  • 三障害の制度格差を解消し、精神障害者を対象
  • 市町村に実施主体を一元化し、都道府県はこれをバックアップ

2.利用者本位のサービス体系に再編

○現状では、

  • 障害種別ごとに複雑な施設・事業体系
  • 入所期間の長期化などにより、本来の施設目的と利用者の実態とが乖離

○法律による改革として、

  • 33種類に分かれた施設体系を6つの事業に再編。あわせて、「地域生活支援」「就労支援」のための事業や重度の障害者を対象としたサービスを創設
  • 規制緩和を進め既存の社会資源を活用

3.就労支援の抜本的強化

○現状では、

  • 養護学校卒業者の55%は福祉施設に入所
  • 就労を理由とする施設退所者は、わずか1%

○法律による改革として、

  • 新たな就労支援事業を創設
  • 雇用施策との連携を強化

4.支給決定の透明化、明確化

○現状では、

  • 全国共通の利用ルール(支援の必要度を判定する客観的基準)がない
  • 支給決定のプロセスが不透明

○法律による改革として、

  • 支援の必要度に関する客観的な尺度(障害程度区分)を導入
  • 審査会の意見聴取など支給決定プロセスを透明化

5.安定的な財源の確保

○現状では、

  • 新規利用者は急増する見込み
  • 不確実な国の費用負担の仕組み

○法律による改革として、

  • 国の費用負担の責任を強化(費用の2分の1を負担)
  • 利用者も応分の費用を負担し、皆で支える仕組み

以上のような考え方により、市町村を中心に障害の種別に関わらず、一元的にサービスを提供する体制を整備するとともに、その費用を皆で支え合うという考え方に立って、在宅サービスに関する国及び都道府県の負担を義務的なものとすると同時に利用者負担を見直すなど、障害保健福祉サービスの地域格差を解消しつつ、必要なサービスを確保するための改革を行い、新たな障害保健福祉体系を構築していくものであります。

平成18年度の障害保健福祉関係予算案については、新たな障害保健福祉施策体系の構築を図るための経費として、1.障害者の自立した地域生活を支援するための施策の推進、2.障害者サービス提供体制の整備、3.その他の福祉関係給付費等、4.自殺予防対策を含む地域精神保健福祉施策の推進、5.心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療体制の整備、を大きな柱として、総額8,131億円、対前年度606億円増、伸び率8.1%増の予算額を計上しているところであります。

1 障害者の自立した地域生活を支援するための施策の推進

(1)新たな障害福祉サービスの推進

介護給付・訓練等給付等については、今回の制度改正及び直近のサービス量の動向を踏まえ、総額約4,131億円(対前年度約370億円増、約10%増)を確保したところであります。

なお、介護給付・訓練等給付等の報酬改定についての基本的な考え方としては、最近の経済情勢等を踏まえ、平成18年4月から△1.3%の改定としたところであります。

しかし、地域生活への移行を進める観点から居宅系サービスについては、△1.0%の改定とするところであります。

また、平成18年10月から事業体系の再編が行われ、新たなサービスに取り組んでいただくことから、新サービス体系の報酬については、△1.0%の改定とすることとしています。

(2)障害者に対する良質かつ適切な医療の提供

自立支援医療については、過去の実績見込み等に基づき予算額の推計を行い、自立支援医療制度の利用者数に必要な約862億円(対前年度約207億円層、約32%増)を確保したところであります。

また、措置入院費及び医療保護入院費等についても、過去の実績等を勘案し、必要な額を確保したところであります。

(3)地域生活支援事業の実施

地域生活支援事業については、手話通訳派遣などのコミュニケーション支援事業、移動支援事業などの既存事業や地域活動支援センターなどの新規事業を含め、地域の実情に応じて柔軟かつ効率的に実施されることが好ましい事業を統合補助金として整理したところであります。

地域生活支援事業の施行は、平成18年10月であり、このための予算額として半年分の200億円を確保したところであります。

(4)発達障害者に対する支援

発達障害者支援法が平成17年4月1日から施行されたことに伴い、今後、発達障害の早期発見及び早期の発達支援、発達障害への理解の促進、専門的知識を有する人材確保等の取り組みを引き続き行うことが重要と考えているところであります。

このため、平成18年度予算案においては、在宅の発達障害児(者)とその家族等からの相談への対応及び助言指導並びに情報提供等を行う発達障害者支援センターの拡充を図ることとし、(地域生活支援事業200億円の内数)また、発達障害者の乳幼児期から成人期までの各ライフステージに対応する一貫した支援体制の整備を図るための発達障害者支援体制整備事業等についても引き続き推進することとしています。

(5)障害者自立支援法の円滑な施行の推進

障害者福祉サービスに係る月額負担上限額については、直近の経済実態を踏まえて負担額の見直しを行った医療保険制度等を参考とし、一般世帯については、40,200円で設定していたところでありますが、障害福祉サービスに係る一般世帯の月額負担上限額については、類似の制度である介護保険制度と同額の37,200円としたものであります。

その他、障害者自立支援法により、利用者は、定率負担への変更や食費等の実費徴収の導入、サービス事業者は、新たな障害福祉サービス体系への移行、地方自治体は、支給決定の仕組みの見直し等、制度改正に伴う負担が発生することとなり、平成18年度予算案においては、利用者、サービス事業者及び地方自治体の制度改正に伴う負担の軽減に資する新規事業として、「社会福祉法人等減免事業」、「障害者保健福祉推進事業等」及び「障害者就労訓練設備等整備事業」の新規事業を計上したところであります。

2 障害者サービス提供体制の整備

障害者施設の施設整備費については、障害者自立支援法に基づき、新たな障害福祉サービスについて、今後地方自治体が策定する障害福祉計画に基づき着実に整備できるよう、社会福祉施設整備費として、生活保護関係施設分も含めて94億円(対前年度7億円)を確保したところであります。

3 その他の福祉関係給付費等

(1)障害者に係る手当等の給付

障害者に係る手当等の給付(特別児童扶養手当、特別障害者手当等)について、直近の支給人員実績を勘案し、必要な額を確保したところであります。

なお、平成17年の物価が下落(△0.3%)したことにより、児童扶養手当法による児童扶養手当の額等の改定の特例に関する法律の規定に基づき、物価スライドにより手当額が引き下げられることとなります。

(2)障害児施設に係る給付費等

知的障害児施設等において、障害のある児童に対する保護、訓練等を行い、障害児の福祉の向上を図るための経費として、過去の実績等を勘案し、必要な額を確保したところであります。

4 自殺予防対策を含む地域精神保健福祉施策の推進

これまで、職場や地域において、自殺予防対策として心の健康づくりの観点から、自殺予防に向けた相談体制の充実や自殺予防の啓発等について推進しているところであります。

また、平成17年7月19日、参議院厚生労働委員会にて「自殺に関する総合対策の緊急かつ効果的な推進を求める決議」がなされ、総合的な自殺の予防対策の推進・自殺予防のためのセンターの設置などが求められていることを受け、平成18年度予算案において、自殺の予防対策や心のケア等事後対策に取り組む地域団体や民間団体等とも連携強化を図り、総合的な自殺対策を推進、支援していくことができるよう「自殺予防総合対策センター(仮称)」の設立に必要な経費を計上したところであります。

5 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療体制の整備

平成17年度においては、医療観察法の円滑な運用を図るために、先行整備を予定している病院の整備を着実に進めるとともに、関係者からの要望を踏まえ、地域の実情に応じた規格を設け、さらに整備を受け入れやすい状況としたところであります。

このような状況の中で、平成18年度予算案においては、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対する適切な医療を実施するとともに、指定医療機関の運営に必要な経費の負担、医療従事者等の養成を行う医療体制の整備を図るために必要な経費を計上したところであります。