「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年3月号
障害者自立支援法
障害福祉サービスの基盤整備について
去る2月9日に開催された第30回社会保障審議会障害者部会において、障害者自立支援法の施行準備状況等について説明が行われました。その中で障害福祉サービスの基盤整備について、障害福祉計画の基本理念をはじめ、障害福祉計画作成にあたっての見込み量の算定方法や留意点などが明らかになりましたので、資料として紹介します。
また、地域生活支援事業は、各自治体の地域の特性に応じたさまざまな事業の展開が期待されています。どのような事業が統合されるのか、また新規事業とはどのようなものなのかも併せて紹介します。
資料 平成18年2月9日:第30回社会保障審議会障害者部会で配布された資料より抜粋
障害福祉サービスの基盤整備について
~障害福祉計画の「基本指針」~
平成18年2月9日
1.障害福祉計画の「基本指針」について
○「基本指針」は、下記の事項を内容とするものであるが、具体的には、障害福祉計画作成に当たって基本となる理念、サービス見込量の算定の考え方、計画的な基盤整備を進めるための取組みなど、定めるものとする
- 障害福祉サービス及び相談支援の提供体制の確保に関する基本事項
- 市町村障害福祉計画及び都道府県障害福祉計画の作成に関する事項
- その他自立支援給付及び地域生活支援事業の円滑な実施を確保するために必要な事項
○市町村及び都道府県は、「基本指針」を踏まえ、平成23年度までの新サービス体系への移行を念頭に置きながら数値目標を設定し、平成18年度中に平成20年度までを第1期とする障害福祉計画を策定するものとする
(拡大図・テキスト)
2.障害福祉計画の基本的理念
市町村及び都道府県は、障害者の自立と社会参加を基本とする障害者基本法の理念を踏まえつつ、次に掲げる点に配慮して、障害福祉計画を作成することが必要である。
1.障害者の自己決定と自己選択の尊重
ノーマライゼーションの理念の下、障害の種別、程度を問わず、障害者が自らその居住する場所を選択し、その必要とする障害福祉サービスその他の支援を受けつつ、障害者の自立と社会参加の実現を図っていくことを基本として、障害福祉サービスの提供基盤の整備を進めること
2.市町村を基本とする仕組みへの統一と三障害の制度の一元化
障害福祉サービスに関し、市町村を基本とする仕組みに統一するとともに、従来、身体障害、知的障害、精神障害と障害種別ごとに分かれていた制度を一元化することにより、立ち後れている精神障害者などに対するサービスの充実を図り、都道府県の適切な支援等を通じて地域間で大きな格差のあるサービス水準の均てん化を図ること
3.地域生活移行や就労支援等の課題に対応したサービス基盤の整備
障害者の自立支援の観点から、地域生活移行や就労支援といった新たな課題に対応したサービス提供基盤を整えるとともに、障害者の生活を地域全体で支えるシステムを実現するため、身近な地域におけるサービス拠点づくり、NPO等によるインフォーマルサービスの提供など、地域の社会資源を最大限に活用し、基盤整備を進めること
3.障害福祉サービスの基盤整備
(1)基本的考え方
障害福祉サービスの基盤整備に当たっては、障害福祉計画の基本的理念を踏まえ、下記の点に配慮して、数値目標を設定し、計画的な整備を行うこととする
1.全国どこでも必要な訪問系サービスを保障
- 立ち後れている精神障害者などに対する訪問系サービスの充実を図り、全国どこでも必要な訪問系サービスを保障
2.希望する障害者に日中活動サービスを保障
- 小規模作業所利用者の法定サービスへの移行等を推進することにより、希望する障害者に適切な日中活動サービスを保障
3.グループホーム等の充実を図り、施設入所・入院から地域生活への移行を推進
- 地域における居住の場としてのグループホーム・ケアホームの充実を図るとともに、自立訓練事業等の推進により、施設入所・入院から地域生活への移行を進める
4.福祉施設から一般就労への移行等を推進
- 就労移行支援事業等の推進により、福祉施設から一般就労への移行を進めるとともに、福祉施設における雇用の場を拡大
(2)見込量の算定のポイント
ポイント1
○訪問系サービス、日中活動系サービス、居住系サービスのそれぞれについて、現在の利用者数を基礎としつつ、障害者のニーズ、近年の利用者の伸び、今後新たに利用が見込まれる精神障害者や小規模作業所利用者の移行などを見込んだ上で、必要なサービス量を具体的に見込むものとする。
ポイント2
○特に、地域生活や一般就労への移行を進める観点から、下記の数値目標を設定するとともに、この目標を達成するために必要なサービス見込量の設定を行う。
1 平成23年度末までに、現在の入所施設の入所者の1割以上が地域生活に移行することをめざす
⇒ これにあわせて、平成23年度末時点の施設入所者数を7%以上削減することを基本としつつ、地域の実情に応じて目標を設定する
2 平成24年度までに、精神科病院の入院患者のうち「受け入れ条件が整えば退院可能な精神障害者」(以下「退院可能精神障害者」という。平成14年患者調査で約7万人)の解消をめざす
⇒ これにあわせて、平成23年度における退院可能精神障害者数の減少目標値を設定するとともに、医療計画における基準病床数の見直しを進める
3 平成23年度中に福祉施設から一般就労に移行する者を現在の4倍以上とすることをめざす
⇒ これにあわせて、福祉サイドにおける就労支援を強化する観点から、就労継続支援利用者のうち、3割は雇用型をめざす
ポイント3
○地域生活支援事業についても、地域の実情に応じ、数値目標を設定し、その事業量の確保のための措置を明記するものとする。
4.障害福祉計画の作成に当たって留意すべき事項
障害福祉計画の作成に当たっては以下の点に留意することが必要である
1.障害者の参加
障害福祉計画の作成に当たっては、サービスを利用する障害者のニーズを適切に把握するほか、障害者の意見を反映させるために必要な措置を講ずること
2.地域社会の理解の促進
グループホームの設置などサービスの基盤整備に当たっては、障害及び障害者に対する地域社会の理解が不可欠であり、障害福祉計画の作成に当たっては、障害者本人のみならず地域住民、企業など幅広く参加を求めるほか、啓発・広報活動を積極的に進めること
3.総合的な取組み
障害者の地域生活への移行、就労支援などの推進に当たっては、福祉サイドのみならず、雇用、教育、医療といった分野を超えた総合的な取組みが不可欠であり、ハローワーク、養護学校等の行政機関、企業、医療機関といった関連する機関の参加を求め、数値目標の共有化、地域ネットワークの強化などを進めること
5.障害福祉計画の目標の達成に向けて
○計画目標の達成に向けて、国、都道府県、市町村は、諸施策の着実な実施を図るとともに、地域全体で障害者を支える力を高める観点から、障害者関係団体、福祉サービス事業者、保健・医療関係者、企業等の地域ネットワーク(地域自立支援協議会等)の構築、強化を進める。
○特に就労支援については、福祉と雇用、教育との連携が重要であり、関係機関が一体となった総合的な取り組みを進める。
(拡大図・テキスト)
6.障害福祉計画の目標の達成に向けて(その2)
○国においても、施設整備補助等を実施するに当たっては、今日、障害福祉サービスの提供基盤に大きな地域格差が存在することから、地域格差の縮小を図るとともに、各地域で基本指針に沿って基盤整備が進められるよう、運用していく。
○特に、施設入所・入院から地域生活への移行に向けた取り組みを支援するため、入所施設等が定員を削減しグループホームへの転換等に併せて建て替えを行う場合、精神科病院が病床を転換して退院促進支援のための施設を設置する場合などについて、重点的に施設整備への助成を行うなどの方策を講ずる。
○施設入所から地域生活への移行、障害者の就労支援を計画的に推進する観点から、障害福祉計画において目標値が設定される障害福祉サービスのうち、
- 障害者支援施設の入所定員、
- 利用期限に定めがない生活介護及び就労継続支援(非雇用型)
については、都道府県が設定した目標値を超えるような場合には、指定しないことができることとする。
障害者自立支援法(抄)
第三十六条
四 都道府県知事は、特定障害福祉サービス(「就労継続支援その他の厚生労働省令で定める障害福祉サービス」)につき第一項の申請があった場合において、当該都道府県又は当該申請に係るサービス事業所の所在地を含む区域(第八十九条第二項第一号の規定により都道府県が定める区域とする。)における当該申請に係る指定障害福祉サービスの量が、同条第一項の規定により当該都道府県が定める都道府県障害福祉計画において定める当該都道府県若しくは当該区域の当該指定障害福祉サービスの必要な量に既に達しているか、又は当該申請に係る事業者の指定によってこれを超えることになると認めるとき、その他の当該都道府県障害福祉計画の達成に支障を生ずるおそれがあると認めるときは、第二十九条第一項の指定をしないことができる。
第三十八条
二 都道府県知事は、前項の申請があった場合において、当該都道府県における当該申請に係る指定障害者支援施設の入所定員の総数が、第八十九条第一項の規定により当該都道府県が定める都道府県障害福祉計画において定める当該都道府県の当該指定障害者支援施設の必要入所定員総数に既に達しているか、又は当該申請に係る施設の指定によってこれを超えることになると認めるとき、その他の当該都道府県障害福祉計画の達成に支障を生ずるおそれがあると認めるときは、第二十九条第一項の指定をしないことができる。