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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年7月号

フォーラム2006

障害者雇用促進法の改正のポイント

厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課

近年、わが国においては共生社会の理念が浸透しつつあり、障害者の社会参加が進んでいることに伴い、障害者の就業に対するニーズが高まっています。平成14年末に「障害者基本計画」、「重点施策実施5か年計画」が策定され、地域における自立の促進という施策の基本的方向が示されて以降、こうした傾向は一層強まっており、関連施策も大きくかつ急速な展開が求められています。

このような状況を踏まえ、1.精神障害者に対する雇用対策の強化、2.在宅就業障害者に対する支援、3.障害者福祉施策との有機的な連携等を主な内容とした「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案」が第162回通常国会に提出され、平成17年6月29日に成立しました(同年7月6日公布、平成18年4月1日(一部については平成17年10月1日)より施行)。

改正法の主な内容は以下のとおりです。

1 精神障害者に対する雇用対策の強化

障害者雇用率制度や障害者雇用納付金制度の適用に当たって、精神障害者(精神障害者保健福祉手帳所持者)を各企業の雇用率(実雇用率)に算定することとしました(精神障害者である短時間労働者については1人につき0.5人分とカウント。なお、法定雇用率は従来どおり1.8%)。

精神障害者については、将来的には雇用義務制度の対象とすることも考えられるところですが、現段階では、精神障害者の雇用に対する事業主の理解と雇用管理ノウハウが十分に普及しているとは言い難い状況にあることから、雇用義務制度の本格的な実施を図る前に、精神障害者を雇用している企業の努力を評価することによって、事業主の理解と雇用管理ノウハウの普及を図るべく、今回、精神障害者を実雇用率の算定対象とすることとしたものです。

また、各企業等において、精神障害者をはじめとする障害者の把握・確認に当たって、障害者本人の意に反した制度の適用等が行われないよう、有識者等による検討会議を経て「プライバシーに配慮した障害者の把握・確認ガイドライン」が策定されました。

2 在宅就業障害者に対する支援

昨今、障害者がIT技術等を活用して在宅就業を営む例が見られるようになり、就業場所や就業時間といった面での選択可能性の観点から、こうした就業形態は、障害者の就業機会の拡大をもたらすものとして注目されてきています。

そこで、障害者の職業的自立の促進のための措置の一環として、障害者の多様な働き方の選択肢の一つとするべく、在宅就業障害者(自宅等において就業する障害者)に仕事を発注する企業に対して、障害者雇用納付金制度において、特例調整金・特例報奨金を支給する「在宅就業障害者支援制度」を創設しました。また、その際、企業が在宅就業支援団体(在宅就業障害者に対する支援を行う団体として厚生労働大臣に申請し、登録を受けた法人)を介して在宅就業障害者に仕事を発注する場合にも、特例調整金・特例報奨金を支給することとしました。

制度の対象となる障害者については、身体障害者、知的障害者または精神障害者(精神障害者保健福祉手帳所持者)であって、雇用されておらず、自宅のほか、障害者が業務を実施するために必要な施設及び設備を有する場所で就業する者等とされています。また、在宅就業支援団体として登録を受けるためには、在宅就業障害者に対して、就業機会の確保・提供のほか、職業講習、就職支援等の援助を行っている法人であること、常時10人以上の在宅就業障害者に対して継続的に支援を行っていること、障害者の在宅就業に関する知識及び経験を有する3人以上の者を置くこと(うち1人は専任の管理者とすること)等の要件を満たすことが必要であり、登録後は、業務運営基準に適合した方法により、在宅就業障害者との間の契約の締結等の業務を行う必要があります。

3 障害者福祉施策との有機的な連携等

障害保健福祉の分野では、授産施設等の福祉施設や作業所を機能別に再編成することにより、福祉的就労から一般雇用への移行を促進する改革を行うこととしています。

障害者雇用の分野においても、障害保健福祉施策と連携を図りながら就職支援等の支援を行うことにより、一般雇用への移行を促進するための施策を講じることとしています。

具体的には、福祉施設等がノウハウを活かしてより効果的な職場適応援助を行うことを支援すること等を目的として、福祉施設等が行う職場適応援助者による援助の実施や、事業主が自ら職場適応援助者を配置し職場適応援助者による援助を行うことについて、障害者雇用納付金制度に基づく助成金を支給する「職場適応援助者(ジョブコーチ)助成金制度」の創設や、訓練担当者の支援のもとに、事業主や社会福祉法人等がグループ就労訓練(障害者のグループが事業所で就労することを通じて常用労働者として雇用されるための訓練)の事業を実施する場合に、障害者雇用納付金制度に基づく助成金を支給する「グループ就労訓練助成金制度」の創設等を行いました。

このような改正事項のほか、特例子会社を設立した企業グループに対する調整金・報奨金の支給先について、これまでは親事業主にのみ支給できることとしていたものを、親事業主の選択により、親事業主または特例子会社のうちのいずれかで支給を受けることができることとしたこと、また、発達障害者支援法に規定する発達障害者についても、職場適応援助者(ジョブコーチ)助成金を支給できること等の改正を行いました。

(障害者雇用促進法の改正の詳細につきましては、厚生労働省のホームページ(http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha.html)に掲載されておりますので、ご参照ください。)


障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律概要

図 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律概要拡大図・テキスト