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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年3月号

解説2 平成19年度障害保健福祉関係予算案

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課

障害保健福祉関係予算については、今回の障害者自立支援法円滑施行特別対策に加え、平成19年度予算案についても、対前年度10.7%増の9,004億円を計上しており、障害者の自立した地域生活を支援するための施策を推進するとともに、発達障害者施策の拡充なども行います。

対前年度10.7%の伸びは、政府全体の予算(一般歳出)の伸びが1.3%、厚生労働省全体の予算の伸びが2.6%であることと比較しても、大幅な伸びとなっています。

平成19年度障害保健福祉関係予算案の主な内容は以下のとおりです。

1 障害者の自立した地域生活を支援するための施策の推進

障害者の自立した地域生活を支援するため、良質な障害福祉サービスを確保するとともに、福祉施設で働く障害者の工賃水準の引き上げを目指す新規事業にも取り組みます。

さらに、障害者自立支援法の着実な定着を図るため、必要な事業を実施します。

(1)良質な障害福祉サービスの確保

ホームヘルプ、グループホーム、就労移行支援事業等の障害福祉サービスについて、障害福祉計画に基づき、各市町村において推進を図るとともに、今回の特別対策の実施により、居宅で生活する障害者が通所施設やホームヘルプ等のサービスを利用する場合に、利用者負担のさらなる軽減を図ります。

(2)障害児施設に係る給付費等

知的障害児施設等の障害児施設において、障害のある児童に対する保護・訓練を行うために必要な経費を確保し、また、今回の特別対策の実施により、障害児の保護者など家庭の負担感が大きいといった事情に配慮し、利用者負担のさらなる軽減を図ります。

(3)障害者に対する良質かつ適正な医療の提供

障害者の心身の障害の状態の軽減を図るための自立支援医療の提供や精神科救急医療センター事業の推進など、必要な医療等の提供を行います。

(4)地域生活支援事業の実施

地域の実情や障害者のニーズを踏まえ、各自治体において移動支援や地域活動支援センターなど、障害者の地域生活を支援する事業を実施します。

(5)工賃倍増計画の推進(新規)

福祉施設で働く障害者の工賃を、平成23年度末までに現在の水準から倍増させることを目標とする工賃倍増計画を各都道府県が策定し、その達成のために必要な施策の促進を図ります。

(6)障害者自立支援法の着実な施行の推進

障害者の自立支援の推進のための先駆的・革新的なモデル事業に対する助成を行うことにより、障害保健福祉サービスの一層の充実を図る障害者保健福祉推進事業や、既存の障害者施設等が就労移行支援等の新たな障害福祉サービスを実施するために必要な設備等の整備に助成する障害者就労訓練設備等整備事業など、障害者自立支援法の着実な施行を推進するための事業を実施します。

2 発達障害者支援施策の拡充

平成19年度予算案における発達障害者のための支援施策については、対前年度200%増の8億円を計上しており、これまでの発達障害者支援センターによる相談支援や発達障害者支援体制の整備に加え、新規事業として、発達障害者支援開発事業を創設するとともに、発達障害情報センター(仮称)も新設します。

また、発達障害支援に携わる人材を育成するため、研修事業の充実を図ります。

(1)発達障害者支援開発事業の創設(新規)

発達障害のある子どもの成長に沿った一貫した支援ができるよう発達障害者支援のモデル事業を実施し、発達障害者への有効な支援手法を開発・確立する発達障害者支援開発事業を創設します。

(2)発達障害情報センター(仮称)の創設(新規)

発達障害に関する知見を集積し、全国の発達障害者支援機関への情報提供を行うとともに、発達障害に関する情報の幅広い普及啓発活動を行うため、発達障害情報センター(仮称)を新設します。

(3)発達障害研修事業の充実

小児医療、精神医療、療育の3分野について、発達障害支援に携わる職員に対する研修を実施し、各支援現場等における対応の充実を図ります。

(4)発達障害者支援センター運営事業の推進

各都道府県・指定都市に設置する発達障害者支援センターにおいて、発達障害者やその家族などに対して、相談支援、発達支援、就労支援及び情報提供などを行います。

(5)発達障害者支援体制整備事業の実施

発達障害者の乳幼児期から成人期までの各ライフステージに対応する一貫した支援を行うため、都道府県・指定都市に発達障害の検討委員会を設置するとともに、圏域において個別支援計画を作成するなど、支援体制の整備を実施します。

3 障害福祉サービス提供体制の整備

障害者が身近な地域で自立した生活を送れるよう、新たな障害福祉サービス体系である生活介護、自立支援、就労移行支援等の日中活動に係る事業所の整備を計画的に促進します。

4 障害者に係る手当等の給付

特別児童扶養手当、特別障害者手当等について、直近の受給者数を勘案し、必要な経費を確保します。

5 自殺対策を含む地域精神保健福祉施策の推進

平成18年10月に施行された自殺対策基本法を踏まえた総合的な自殺対策に取り組むとともに、こころの健康づくり対策の充実を図るなど、地域精神保健福祉施策を推進します。

(1)自殺予防総合対策センター機能の充実

総合的な自殺対策を実施するため、自殺予防総合対策センターにおいて、国内外の情報収集、Webサイトを通じた情報提供や関係団体等との連絡調整を行うとともに、人材の養成・資質の向上のための研修を実施します。

(2)地域での効果的な自殺対策の推進

先進的な取り組みを実施しようとする地域を選定し、それぞれの地域の実情に即した自殺対策を行い、その成果を検証し、効果的な自殺対策を全国に普及させることを目的とする地域自殺対策推進事業を新たに実施します。

(3)自殺問題に関する総合的な調査研究等の推進

データの収集と分析による自殺の実態把握を行うとともに、自殺関連予防プログラムの開発等に関する研究を推進します。

(4)こころの健康づくり対策の推進

思春期児童の心のケアの専門家やPTSD(心的外傷後ストレス障害)専門家の養成研修を行い、精神保健福祉センター、病院、保健所等で専門相談等を取り入れ、各機関での精神保健活動の充実を図ります。

6 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療体制の整備

心神喪失者等医療観察法を適切に施行するため、引き続き、指定入院医療機関の確保を図るとともに、医療従事者等の研修を行うなど、医療の提供体制の整備を推進します。