音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年3月号

列島縦断ネットワーキング【北海道】

街中のデイケアにおける一般就労に向けた取り組み
~精神科デイケア「ほっとステーション」の紹介~

中村慎一

はじめに

札幌市は高度な都市機能と清新さを備えた街の魅力で人口180万を数える都市である。その中心街の大通公園に隣接されたオフィスビルの2階・3階のテナントに当デイケアは位置する。地下鉄直結のビルであり、デイケアに通所するメンバーの姿はさながらオフィスビルに仕事に来ている雰囲気すら見受けられる。

「通いやすい」だけの利便性だけではなく、大通公園内で行われる「雪祭り」「よさこいソーラン祭り」などの街をあげての行事にも自然に社会参加できる環境でもある。

当デイケアは平成11年に開設し、今年1月現在のメンバー登録は411人。平均年齢36.1歳。このうち統合失調症約4割。うつ病などの気分障害に該当するものが3割、それに神経症群や人格障害、器質性の障害、発達障害などが残りを占める。スタッフは精神科医2人、看護師11人、精神保健福祉士9人、心理士2人、作業療法士2人、音楽療法士1人、介護福祉士1人で構成される。

デイケアのプログラム

一日の中で同一時間帯にさまざまなプログラムが用意されている。文芸・外国語・手話・点訳などの学習系、音楽・絵画・友禅染め・フラワーアレンジメントといった芸術系、ソフトボール・卓球・筋トレなどの運動系、SSTやアディクションミーティングなどの集団精神療法、リラクゼーション・ヨガ・ダンスセラピーなどのムーブメントセラピー、その他に生活支援、就労支援プログラムなどがあり、午前・午後・夕方・夜に日々運営されている。その中から今回は、就労支援活動の内容と、当院から生まれた作業所の紹介をしたい。

デイケアにおける就労支援活動の内容

前述のように現在の利用者の平均年齢は36歳で、20歳~30歳代が全体の半数以上を占めている。通所時の長期目標では、年代の課題でもある就労を6割以上の方が挙げ、その中からさまざまな就労支援活動を展開してきた。

1.定例の就労支援プログラム

(1)「ほっとフレンド」……昼食時の喫茶(週4回)

(2)「カフェミューズ」……夕暮れ時の喫茶(週3回)

(3)「E―ジョブ」……「習うより慣れろ」をモットーに、実践的プログラム

(4)「ジョブジョブ大丈夫」……「外部講師」をゲストに、セミナー等で学べるプログラム

(5)「ジョブセミナー」……「職場見学・体験」も含めて、集大成のプログラム

2.院内就労支援

(1)「悠学塾」……資格取得や通信教育のサポート

(2)「Zone ABC」……パソコンスキルを身につけるプログラム

(3)「給食の厨房」……デイケアの厨房業務とランチの配膳活動

(4)「テナント清掃」……ビル内テナントの清掃業務活動

(5)「グループホーム」……世話人業務のサポート

(6)「めはり屋」……店舗型おにぎり屋での販売業務のサポート

(7)「大通公園どんぐりの家」……院内でホームヘルパー2級資格を取得したメンバーが、ヘルパーとしてスタッフの指導のもとに活動

(※前記就労支援プログラムについては、ジョブコーチ付きの就労支援も含め実施している。)

3.作業所での現場に近い就労支援

(1)「てくてく工房」……パソコン作業所

(2)「オベントガーデン」……お弁当屋作業所

(3)「Foot980」……リフレクソロジー作業所(認可申請中)

今後としては、現在展開している就労支援を継続しながらより発展させ、新規事業としてデイケアにおける復職支援や企業に対する直接の働きかけ、障害者雇用を促進する合同説明会、合同面接会などを計画しているところである。

作業所の紹介

デイケアが土台となり生まれた作業所であるが、いずれも街のネットワークになることを意識し、街で暮らす人々に必要とされるサービスを提供する作業をモットーに、街中の企業と軒を並べて運営されている。

1.パソコン作業所「てくてく工房」

平成12年に開設、一般企業のオフィスを思わせる環境のもと、パソコンを生業に名刺作成から学会誌・記念誌などの印刷、製本。市内企業、専門学校等のホームページ作成。各種イベントの看板・たれ幕・翻訳・テープ起こしなどを手がける。時期によってはヤマト運輸のメール便の発送業務も行っている。

開設時間は一般企業と同様午前9時からで、約12~13人がその日のスケジュールに沿って仕事を分担して行っている。9時前にはパソコン操作技術のトレーニングや事務処理的な作業に励むメンバーも多い。

特色として、一般の職場に近い雰囲気のなかで作業所を足場にして復職されるメンバーが多いことがあげられる。

2.お弁当屋作業所「オベントガーデン」

デイケアメンバー、家族会、スタッフが中心となり、平成16年に開設。街中のサラリーマン、OL、学生などの昼食弁当を主に製造販売しながら、週に1度市内グループホームの夕食弁当の配達も行っている。約10人のメンバーが通所しており、1日平均50~70食の弁当を販売し、過去には400食以上の弁当の製造も経験した。この2年で4人のメンバーが調理師国家試験に臨み、2人が合格。うち一人が一般就労につながっている。

毎朝7時、すでに厨房に立つメンバーは1か月の献立から、日々のお弁当、お惣菜の製造と自分たちのまかない食をつくる姿は、まちがいなく全員がコックさんである。近々児童デイサービスの厨房、調理業務を委託される予定である。

3.リフレクソロジー作業所「Foot980」

平成19年認可申請中の作業所である。すでに開設しており、おしゃれなサロンは、街中のサラリーマンの癒しの隠れ家的な場である。開設時間は9時~20時までで、メンバーはリフレクソロジー養成講座で必要な知識と技術を学び、サロン研修ではさらなるプロフェッショナルな技術と接客マナーを身につけサロンデビューに至る。医療機関・福祉施設へのリフレクソロジーのケータリングサービスも行っている。リフレクソロジスト以外のメンバーは、ものづくりスキルや対人スキルを学んでいる。

平成19年1月に、以上の3作業所をNPO法人リーフ&リーフコーポレーションとして申請中である。

(なかむらしんいち デイケアクリニックほっとステーション)

●NPO法人リーフ&リーフコーポレーション事務局(てくてく工房内)
〒060―0043
北海道札幌市中央区南1条西5丁目 プレジデント松井ビル9F
TEL/FAX 011―241―0650

●デイケアクリニックほっとステーション
〒060―0042
北海道札幌市中央区大通西5丁目 昭和ビル2F
TEL/FAX 011―233―5255