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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年4月号

暮らしの実態から考える

年金、手当と作業所の工賃収入で生活

阿部幸恵

私は脳性マヒがあり、常時車いすを使用しています。不随意運動、言語障害もあります。実家は小さな町にあり、障害者が利用できる施設はありません。以前は、作業所のある旭川市へJRで通っていましたが、7年前から市内のアパートで一人暮らしをしています。

作業所では、縫製の仕事をしています。ひと月の収入は、障害基礎年金82,508円と特別障害者手当26,520円、作業所の工賃8,000円ほどです。収入に対し、支出は家賃40,000円、食費約30,000円、光熱費約15,000円、国民年金の保険料が1,330円、冬は灯油代が8,000円ほどかかります。プラス2006年4月に施行された障害者自立支援法により、原則1割の応益負担の導入で、それまで無料だった施設利用料と給食費がかかるようになり、施設利用料は法人減免を受け7,500円。給食費は1食200円でひと月およそ4,200円。毎月家計は、ぎりぎりか赤字になります。さらに同年10月の障害者自立支援法の全面施行により、補装具などにも1割負担が課せられるようになりました。

作業所の工賃は利用料に消えてしまいます。なぜ働いているのにお金を払わなければいけないのか。なぜ生きるために負担を課するのか。どこが自立支援なのか。この一年たくさんの矛盾を感じてきました。働くほど家計は赤字になり、作業所を辞めると一人での外出が難しい私は、必然的に家にひきこもり社会との接点がなくなってしまう。一体どうすればよいのだろうか。多くの障害者がこのような生活を強いられているのではないでしょうか。

この法律により、障害者の負担は膨らんでいます。一方で多くの障害者にとって唯一の収入である障害基礎年金は少しずつですが、年々下がっています。十分な所得保障もないまま、応益負担を導入したことに無理があったのではないでしょうか。

全国的な反対運動により、国は2007年4月より負担を4分の1に軽減することを決めました。しかし、3年という期限付きです。

現在は、居宅サービスなどは利用していませんが、障害が重くなるにつれ、さまざまなサービスが必要になると思います。将来について不安の尽きることがありません。

日本国憲法第25条に「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と謳っています。この意味を心に踏まえ、障害者自立支援法や所得保障について見直す必要があるのではないでしょうか。どんな障害があっても、地域で生き生きと暮らせる社会になることを願いつつ。

(あべゆきえ あかしあ労働福祉センター第一作業所)