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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年4月号

暮らしの実態から考える

生活保護を受けながらセルフヘルプグルーブの代表として活動

徳山大英

僕は徳山大英といいます。今年50歳になります。20歳の時、精神分裂病という病名をつけられ、33歳までの間に12回、精神科病院に入院しました。若かった時はどんな仕事でもしました。家庭崩壊していたので働かなければ食べていけなかったからです。障害年金はもらえませんでした。再発を繰り返すたびに長兄に迷惑をかけました。

35歳の時、生活保護を受給しました。現在アパートで猫と暮らしています。14年前、セルフヘルプグループのリーダーになり、現在NPO法人「全国精神障害者ネットワーク協議会」の代表をしています。

収入は、生活保護費の12万円弱です。家賃が28,000円、パソコン・電話・通信料が8,000円、電気代が5,000円前後、水道代2,000円、ガス代2,500円ぐらいです。だいたい5万円くらいが必ず出ていくお金です。交際費をけっこう使っているので食事は毎日3食、ほとんど家で安い材料を使い簡単に作って食べています。だいたい食費は18,000円くらいになると思います。栄養補助食品を上手に食べて、栄養管理をしています。

たまに講演を頼まれます。その講演料は会に一度入れて、領収書をとって当事者会活動費にしています。

生活保護ですので、僕自身は障害者自立支援法の影響はほどんど受けていません。会の活動をしているので、けっこう忙しく、デイケアやその他の施設も利用していません。

ただ、仲間の当事者は障害者自立支援法で生活が苦しくなったという人が大多数です。

僕たちが作った「第2回精神医療ユーザーアンケート」という調査報告書の中でわかったことは、現在の経済状況を聞いたところ「余裕がない」と答えた人が12.3%、「あまり余裕がない」と答えた人が43.2%、「明日のことが不安」と答えた人が13.9%と、ほとんどの人に経済的な余裕がないという答えが出ました。驚いたことに「普通の生活」と感じている人が21.2%しかいません。たった2割の人しか自分を標準世帯と思っていなかったのです。精神障害者の家庭の経済的厳しさがうかがわれました。

障害者自立支援法では働くことを中心に考えられています。しかし退院して、作業所などの居場所があるおかげで、やっと入院せずにいる当事者もたくさんいるのです。

居場所を失った当事者がどんな悲惨な生活になるか、政府、行政、医療従事者はもっと考えてほしいです。回復できない環境にしばられている当事者のことをもっと考えてください。

(とくやまおおひで 熊本県精神障害者団体連合会)