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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年1月号

市区町村首長

湖南市長(滋賀県)
谷畑英吾(たにはたえいご)

障がい者福祉施策の持続可能性とは?

明けましておめでとうございます。

湖南市では、一昨年の6月に「障がいのある人が地域でいきいきと生活できるための自立支援に関する湖南市条例」を制定し、発達段階からの支援に加え、就労支援や地域生活支援などに取り組んでいます。この条例の趣旨は、障がい者福祉を持続可能なものにしていこうというところにあります。

特に、就労支援では企業が中心になって検討が進み、地域生活支援では障がい者福祉の枠にとどまらずに高齢者福祉や児童福祉との連携を探る事業者もあり、最近では芸術交流も盛んになってきております。

ところで、施策の持続可能性は財政との関係が重要になってきます。

昨年、滋賀県では、知事が新幹線新駅工事を中止する際に「利便性が低く必要性が低い」ということを最大の理由に、過去20年以上にわたる検討結果を一刀両断にしました。

しかし、そのとき私が恐れたのは、その先に必ず現れるはずの、利便性が低く必要性の低い施策の整理方針でした。これが「聖域なき改革に命がけで臨む」という知事の基本方針となれば、障がい者福祉施策などは風前の灯になってしまうからです。

一方、障害者自立支援法の施行により、障がい者世帯が分離されて個人世帯となったことは、障がい者施設が多く立地する自治体の財政に少なからず影響を与えています。

たとえば湖南市内には県立を含め多くの施設があり、県内の施設入所者のうち5分の1の障がい者が住んでいます。当然本市の国民健康保険を利用することになりますが、湖南市民は滋賀県民の4%でしかないのに、20%分の障がい者の健康政策を担わされることになっているのです。

それまでは所在世帯の市町村国保で対応してきたものが、世帯分離により、福祉施設を多く受け入れた自治体ほど財政負担が大きくなるという矛盾に出会うことになりました。

本市としては、障害者自立支援法施行前から気づき、県や国に指摘してきましたが、いまだに解決していません。県に対しては、住所地特例として元の市町村から財源を移転してもらうスキームを組んでほしいと頼んでいますが、2年経っても実現せず、現在も湖南市民の税金で支えているのが実情です。

国においても、たとえば障がい者の人数を地方交付税の基準財政需要額に算入して国全体で支えるくらいの思い切った施策がなければ、地域での障がい者支援が持続的になることはないでしょう。なぜなら先進的な自治体は、「足による投票」で常に爪先立ちを強いられることになるからです。

みんなで持続可能なさりげない支えあいができる地域、日本国であってほしいものと願っております。