「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年2月号
私たちが感じる差別や偏見について
わかば会役員一同
私たちはこれまでも、いろいろな大会やセミナーなどで、「いじめ」「差別」「偏見」について、同じ障がいのある仲間たちで話し合ってきました。
今回原稿の依頼があり、わかば会の役員で、あらためて、このことについて話しあった事や、昨年7月に行われた「北海道手をつなぐ育成会・全道大会」の本人大会で話し合われた事の一部を書きたいと思います。
1 私たちに向けられる差別や虐待について
1.職場で
- 職場の従業員に「お前、障がい者なんだからチョロチョロするな」と言われた。
- 上司や従業員に「お前らのためにお金(税金)払っているんだ」と言われた。
- 自分ではちゃんとやっているつもりなのに「ちゃんと仕事しろ」「返事しろ」と言われ、どうしてよいか分からない。
- 気を利かせて他の仲間の手伝いをしたら、「余計なことをするな」と言われた。
- 障がい者と関わったことのない職場の人は、プライベートなことまで干渉してくる。
- 給料が3か月遅れの人がいた。
- 仕事先で盗難があり、疑われた。
- 不満や改善を訴えると、仕返しが怖い。
2.学校や施設時代、暮らしの中で
- 職員に、「言われたことをちゃんとやりなさい」と言われ、殴られたり、嫌がらせをされた事もあった。
- 中学で仲間はずれにされた。「ばい菌がつく」「お前なんかいなくなれ」と言われた。
- 仲のよかった友達に、「施設に入った」事を伝えたら、それから絶交された。
- 障がい者がいると迷惑をかけると言われた。
- 自分の親は、障がいのない兄弟は叩かないのに、自分だけがいろいろ言われ、叩かれたりした。
- 小さいときから施設に入り、そこでは自分だけが障がい者で、無視されたり、職員からの暴力があった。園長には話せなかった。
- 作業所に行っているが、挨拶をしても「私は口がないの」と言って、無視する職員がいる。
- ゴミの捨て方が悪いと、近所の人から疑われた事があった。
- 親にお前を残して死ねない。一緒にみんなで死のうかと言われたことがあった。
2 「知的障がい」について、「知的障がい者」と呼ばれることについて
- 頭の悪い人、頭の回転が悪い人、IQの低い人、動作の鈍い人。
- 知的障がいと呼ばれるのは嫌だ。普通の人と一緒に見てほしい。
- ついこの前まで認めたくなかった。でも、富山大会(昨年の、手をつなぐ育成会全国大会)に行って、たくさんの仲間たちの声を聞いて、「できないことはあっても、自分は一人の人間なんだ」と思えるようになり、ある意味、開き直れるようになった。
3 本人活動に関わるようになって変わった事
- みんなに会うと、会社で嫌なことがあっても忘れられる。
- 一人で家にいるより、みんなと会っている方が楽しい。
- 大会や会議の司会をやって自信がついた。
- 人前で喋れるようになった。
- 兄弟にほめられ、励ましてくれるようになった。認めてくれるようになった。
- 他の本人の会の人たちに会えて、よいものが吸収できると思った。
- 自分より弱い人のことを考えられるようになった。
- 怒りっぽかったが、「優しくしなくちゃ」と思うようになった。
- 人の話を聞き、アドバイスできるようになった。
- 職員の勧めで始めたが、実際にやってみて感心した。暗かった性格がパッと明るくなった。やりがいがあると思った。
4 地域の「障がい者」に対する理解は変わったか?
- 何かあってもかばってくれる人もいる。
- 伊達は理解があると思う。街の中にたくさんの仲間が住んでいるし、以前よりも理解されるようになったと感じる。
- 他の地域から移って来たけど、前は人の見る目が違った。伊達では嫌な目で見られたことはない。温かい目で見てくれるし、安心していられる。
- 街の中に仲間がいた方がいい。ここがいい。
5 差別や虐待にどう立ち向かう?
- 話し合うこと。言えないときは紙に書いたりして読んでもらう。
- 職場やグループホームなどのミーティングで、自分の気持ちや考えを伝え、解決してもらうようにする。
- 味方になってくれる人を見つけて相談する。
- 家族や身近な人、信頼できる人に相談する。
- 困ったときに駆け込んでいく所を見つける。
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今回の話し合いは、座談会形式で、支援者が進行をし、テーマに沿って話しあいました。皆さんは、まだまだ話したりないようでしたが、時間の関係と原稿の締め切りでこの辺で……。