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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年9月号

日本身体障害者団体連合会における権利擁護活動の取り組み

森祐司

日本身体障害者団体連合会(以下「日身連」という)は、創立以来約半世紀にわたり、わが国の障害者の中核的役割を果たしてきています。昨年秋、念願の「障害者権利条約」にわが国も署名し、現在その批准に向けて、国内法制の整備等が行われつつあります。このような時期にあたり、日身連は、障害者団体と協力関係を密にしながら、障害者に関する「権利擁護活動」を実質あるものとして進めていくことが課せられた責務であると考え、活動に取り組んでいます。

1 日身連の権利擁護活動の概略

日身連は「障害者基本法」をはじめとして「障害者自立支援法」「発達障害者支援法」「障害者雇用促進法」「バリアフリー新法」など障害者に関する法律の趣旨に基づいて、各種の障害者に関する権利擁護にかかる事業活動を行ってきています。

(1)日本身体障害者福祉大会の開催による権利擁護に関する啓発活動の展開

日身連設立以来、毎年開催される参加3000人を超える全国大会において、障害者の権利およびその擁護に関する問題をテーマに、障害当事者を中心に意見交換や情報提供などを行い、権利擁護についての啓発活動に努めてきています。

(2)障害者相談員活動強化事業による権利擁護に関する活動

日身連は、身体障害者相談員全国連絡協議会(1999年設立)を設立し、相談員事業にかかる諸問題について協議、検討を行うとともに、相談員の資質の向上と相談員活動の発展のために、全国的に活動を支えています。

また、障害者に関する権利擁護をはじめ、最新の障害者関連法制および情報等の提供や研修会を実施しています。

さらに、「相談員会報」や権利擁護に役立てるための「改正障害者基本法ガイドブック」や「障害者相談活動事例集」といった書籍の発行・配布を行い、障害者相談員等の業務の円滑な実施に役立てるものとして活用されています。

(3)中央障害者社会参加推進センター事業を通じての活動

障害者の人権擁護問題を含め、地域で生じているさまざまな課題について、障害者を取り巻く人権擁護問題等を主なテーマとして、毎年1回「障害者110番事業研修会」を開催しています。この研修会を通じ、相談技術の向上だけでなく、交流の場を提供し、より有効な相談業務を展開しています。

(4)障害者の職業自立にかかる啓発活動を通じての権利擁護

障害者特に重度身体障害者の職業的自立に関しては、「障害者自立支援法」の施行により、雇用に向けての取り組みは所得保障との関連性で大きなものがあります。また、いまだ就労・雇用できない障害者の「働く権利」をいかに実現していくかも大きな課題です。そのような状況の中で、職業的自立を目指す重度障害者に対して、個別的に関係情報の提供および具体的な相談支援、職業的自立のための支援システム(ハローワークや地域障害者職業センターさらには職業能力開発関係施設等)に関して、その活用等に関する相談・情報提供などを行うために、職業自立相談員を2002年から日身連事務局に設置し、相談業務に応じています。

さらに、身体障害者の職業的自立を目指し、働く権利を実現することを目的として、広く障害当事者を対象に「身体障害者職業自立啓発セミナー」を2002年から毎年2回程度開催し、「働く権利」の大切さの啓発に努めてきています。

(5)人権擁護に関する課題の国の行政機関並びに政党等に対する要請活動

加盟団体からの国等に対する要望事項に関して、中央省庁や関係機関に対して要請活動を行うとともに、国や政党などが設置する各種委員会や審議会等に積極的に参加、提言し、その実現を目指して活動しています。特に、バリアフリー関連については、「バリアフリー新法」に基づく街の基盤整備の促進が図られるよう、国等に対し、要望や提言をする等、積極的に取り組んでいます。

2 その役割と成果

設立当初から身体障害者相談員の設置をはじめとして、最近の「障害者自立支援法」や「バリアフリー新法」等における各種の障害者の権利擁護に関する事業を進めてきています。また、「障害者基本法」の改正の際には、障害者差別禁止条項を規定するように要請活動をしてきたところです。

「障害者自立支援法」の成立については、障害者のさまざまな権利を擁護する法体系とするために、全組織をあげて努力をしてきました。特に、小規模作業所への助成制度の継続については、努力をしてきたところです。また、「バリアフリー新法」においても移動に関する権利の確保と擁護、「障害者雇用促進法」においては重度身体障害者に対する働く場を確保し、働く権利を擁護するための行動なども行っています。

さらに、「障害者権利条約」の批准に向けてさまざまな関係法令の改正等が予想されることからも、「障害者権利条約」の精神が忠実に各法制に反映され、障害者の権利擁護がより完全なものへと進んで行くために努力をしていきたいと思います。

3 今後の課題

日身連は、これまでの間、障害者の立場から権利擁護に関する活動を行ってきていますが、これからの大きな課題は「障害者権利条約」の批准に向けての動きであると考えています。障害者関係団体各位と歩調をとりながら、よりよい諸法制度の成立を目指し、活動していきたいと思います。

(もりゆうじ 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会常務理事・事務局長)