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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年11月号

在京5社の情報バリアフリー化への取り組み

民放各社では、情報バリアフリー化への取り組みとして、特に字幕・解説放送の拡充に向けた取り組みがこれまで以上に本格化しています。総務省が2007年10月に策定した指針に基づき、10年後の大きな目標に向けて、従来から着実に進めてきた字幕放送だけでなく、解説放送についても本年度から本腰を入れ、さまざまなトライアルが始まりました。全国各社における取り組みのベースとなる在京テレビキー5社の現状を、各社の担当者から以下に紹介してもらいます。

【日本テレビ】

日本テレビでは、幅広い年代の方に番組を楽しんでいただけるよう、さまざまなジャンルの番組に字幕ならびに解説放送を付与する努力をしています。字幕・解説放送の付与方法は番組の特性やジャンルによって異なるため、私たちは計画的に、毎年新しいジャンルへのチャレンジを行いながら、翌年の最適な実現方法を探っています。

昨年から今年にかけてのチャレンジの一つとして、今年8月に開催された北京五輪の注目種目「女子マラソン」の中継で字幕を付与しました。これは、2010年の実現を目指しているお正月の風物詩『東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)』の完全字幕付与への足がかりです。また、これまで字幕付与の要望が多く寄せられていた『24時間テレビ』では、今年初めて一部の時間帯に生字幕を付与し、2016年の完全字幕放送実現に向けての第一歩を踏み出しました。

一方、解説放送については、今年4月よりアニメ『それいけ!アンパンマン』への解説付与をスタート。同番組にはこれまで字幕は付与していましたが、お子さんたちにも、もっと番組を楽しんでもらいたいという強い思いから実現させました。さらに、現在再放送中のドラマでは、初回放送の字幕に加えて解説を付与しています。

また、ご意見として寄せられている緊急放送への対応については、真摯(しんし)に受け止め、実現する方法を継続して検討してまいります。

(編成局編成戦略センター編成部メタデータ担当部長・福田和美)

【TBSテレビ】

TBSでは1986年から字幕放送を実施しています。このうちVTR番組については、ゴールデンタイムを中心としてドラマ・バラエティー・音楽番組等、さまざまなジャンルの数多くの番組に字幕を付与しています。

生番組への字幕付与については、「リレー方式」というTBSグループが独自開発したリアルタイム高速入力方式を採用。2002年に夕方の全国ネットのニュース番組に生字幕の付与を開始したのを皮切りに、現在ではお昼のニュース、『イブニング・ファイブ』『報道特集NEXT』などの報道系番組にも生字幕の付与を拡充しています。これ以外にも、生活情報系番組の『はなまるマーケット』に2006年から生字幕を付与。また、プロ野球・バレーボール・ゴルフ・陸上・サッカーなどの比較的大きなスポーツ中継番組にも、2006年から生字幕を積極的に付与してきました。特に2007年夏開催の『世界陸上大阪大会』では全日程(13番組、計49時間6分)に、さらに今年夏の北京五輪ではハイライト番組を含むすべての五輪競技番組(13番組、計35時間53分)に、生字幕を付与しました。

一方、解説放送については、総務省の指針に基づいて本年度からスタート。初年度はトライアルという位置づけで、『月曜ゴールデン』枠(毎週月曜21時)の2時間ドラマに、地上デジタル放送の副音声にて年間10本程度を予定。4月の開始以来、10月末現在ですでに8本の放送を実施しました。

TBSでは今後も引き続き、字幕放送および解説放送のさらなる拡充を図っていく所存です。

(編成局編成部部次長・形山晋治)

【フジテレビ】

フジテレビは、新たな字幕放送拡充計画に基づき、本年度は従来のニュース番組のリアルタイム字幕放送に加え、『LIVE2008ニュースJAPAN』でリアルタイム字幕放送を実施、今後もニュース番組のリアルタイム字幕放送の拡充を図る予定です。また、スポーツ中継では、北京五輪をはじめ野球・ゴルフなどのスポーツ中継でリアルタイム字幕放送を開始しましたが、今後は競技の流れを視覚的に妨げず、より見やすく楽しめる字幕表示を目指し、検証を重ねながらリアルタイム字幕放送を増やしていく予定です。

VTR番組は現在、一部を除き字幕付与可能な番組のほぼすべてで字幕放送を実施していますが、今後は放送直前に納品される番組にも可能な限り字幕付与するべく、編集現場と直結した字幕制作の構築や設備の開発を進めていきます。

解説放送については、本年度より本格的にトライアルを開始。『金曜プレステージ』『土曜プレミアム』などの2時間ドラマや、『ザ・ノンフィクション』などドキュメンタリーにも定期的に解説放送を実施しています。今後はバラエティー番組のほか、さまざまなジャンルに範囲を広げるとともに、解説放送に適した表現方法や制作工程、費用等についても検証を重ねていきます。

(編成制作局編成部字幕放送担当部長 泉裕子)

【テレビ朝日】

テレビ朝日では総務省の指針に基づき、2017年度までに7時~24時の字幕付与可能番組に100%字幕を付与すべく計画を立て、目標達成に向けて取り組んでいます。生番組などに対応するためのリアルタイム字幕制作体制を整備し、サッカー・野球・マラソン・フィギュアスケートなどや北京五輪の中継といった大型スポーツイベントに積極的に字幕を付与してきました。さらに今年4月からは、一部のストレートニュース番組においても字幕付与を始めています。

今年10月のレギュラー編成において、字幕付与可能な番組分数に占める字幕付与番組分数の割合は、系列局制作番組を含めて約9割で、今後も字幕放送を拡充していきます。

リアルタイム字幕制作において生じる字幕表示の遅延の短縮や、番組素材の搬入が放送直前となった場合に、時間的制約がある中で少しでも字幕制作を可能にすることなどが今後の課題で、技術・運用両面で検討中です。

解説放送については、一昨年末に『日曜洋画劇場』で放送した『武士の一分』などで対応してきましたが、総務省指針の2017年度での付与率10%に向けた本格的な制作体制構築のため、技術・運用両面から研究、検討を行っています。その一環として今年7月から『徹子の部屋』で解説放送を開始しました(毎月2回)。今後もさまざまなジャンルの番組での付与に取り組んでいきますので、視聴者の皆さんのご意見、ご感想をどしどしお寄せください。

(編成制作局編成部編成担当副部長・池田慶介)

【テレビ東京】

テレビ東京は2007年度に約4,500番組、3,350時間の字幕放送を実施しました。7時から24時までの字幕付与可能番組の8割以上、全放送時間の4割に字幕を付与しました。

字幕放送の制作にあたっては、映像情報をなるべく活かすよう字幕表示位置を考慮しています。また音符マークを表記したり、ふり仮名を付けるなど音声情報を極力、字幕化するよう工夫しています。

2008年4月からは、夕方時間帯の生放送ニュース番組に字幕付与を開始。今後、字幕放送の拡充を図ると同時に、デジタル技術の進展に伴う字幕制作の効率化や制作時間の短縮化に向けた方策を検討し、必要な体制構築、機材整備等を図りたいと考えています。

一方、解説放送は、ドラマや映画等で過去に付与していましたが、総務省の指針に基づいて長期的プランの作成準備に入りました。2011年の完全デジタル化までを、今後の本格的実施に向けた制作体制の確認やノウハウの蓄積等に努める期間と位置づけ、当社関連の制作会社で解説放送の脚本家・ディレクターを育成しつつ、条件の整った番組には実際に解説を付与していくことにしています。今年度は6月と9月に1本ずつ、2時間ミステリードラマの再放送枠で、デジタル・アナログ両方で解説放送を実施。今年度中に、あと数本実施する予定です。来年度以降については、ドラマでの実績を重ねながら、他ジャンルについても実施する方向で研究を進めていきます。

(デジタル事業推進局デジタルメディア開発部長・加藤和昭/編成局編成部副部長・門司玲子)

(とりまとめ・日本民間放送連盟番組部)

【参考情報】各社の字幕放送付与番組は次の各社ウェブサイトから確認いただけます。

〔日本テレビ〕
http://www.ntv.co.jp/jimaku/index.html
〔TBSテレビ〕
http://www.tbs.co.jp/company/koujou_jimaku.html
〔フジテレビ〕
http://wwwz.fujitv.co.jp/jimaku/index.html
〔テレビ朝日〕
http://company.tv-asahi.co.jp/contents/jimaku/index.html
〔テレビ東京〕
http://www.tv-tokyo.co.jp/main/yoriyoi/jimakuhousou.html