音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年1月号

1000字提言

権利条約―アフリカ―日本

森壮也

現在、私がもっとも力を入れているのは、『障害と開発』と言われる分野である。簡単に言うと開発途上国の障害者のことなのであるが、開発関連研究者の学会である国際開発学会でもこれに関連した発表・報告がいくつも見られるなど、研究者も少しずつであるが増えてきている。

国連障害者の権利条約は日本では、日本の国内法との関連で議論されることが多いが、実は、これも『障害と開発』と関連が深い。メキシコ大統領から提案が出されてから後の展開を見るまでもなく、国連、しかも開発の分科会が舞台となったということは、開発の問題として障害者の権利の問題が出てきたということが背景にあるのだ。つまり、日本国内の問題であると同時に、途上国を支援する側としての日本の国際問題として権利条約を受け止めていく必要がある。

2008年の5月末、横浜で行われたTICAD IV(第4回アフリカ開発会議)というのをご存じだろうか。ここで、日本はアフリカから招いた参加者を前にアフリカ地域への支援の強化を約束した。そのアフリカでは、アフリカの障害者の10年(1999―2009)が今年、最終年を迎える予定だった。アジア太平洋障害者の10年がびわこミレニアム・フレームワークを採択して、さらに次の10年が現在進行中であるのは、よく知られている。次の10年はアジア太平洋地域では、最初の10年の成功をさらに域内で広げていくためである。

ところが、アフリカでは、同地域の経済の発展がアジア太平洋地域と比べると、いまだ大きなテコ入れが必要なこと、有力かつ実行力ある推進団体・支援組織の欠如ということもあって、その実施の遅れが指摘されていた。同地域では、従来のHIV/AIDSキャンペーンでの障害者の実質的排除の問題や障害児を産むことが伝統的な価値観の中で日本では想像もできない負の価値観でとらえられているという問題の指摘もある。

2008年11月、ようやくアフリカ連合(AU)から2019年の12月まで同地域での10年の取り組みを延長するという発表があった。AUの開発担当大臣会議で、出されたウィントフック宣言(ウィントフックはナミビアの首都)が53か国のAU加盟国での障害者の開発へのインクルージョンのため、さらに努力を続けることになる。

年頭にあたり、遠いアフリカを近くに思い、世界の途上国の障害者が皆、等しくその持てる権利を享受できるよう、日本からの関心と支援も拡がることを期待したい。

(もりそうや 日本貿易振興機構アジア経済研究所主任研究員)