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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年6月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●身近なコミュニケーションツール、他●

提案者:白井誠一朗 イラスト:はんだみちこ

白井誠一朗(しらいせいいちろう)さん

フリースペース彩副代表。先天性ミオパチーによる心臓および呼吸機能障害。難病や内部障害といった見た目には分かりにくい障害者の問題に取り組んでいます。4月からは大学院に進学して障害者福祉の研究もしています。


身近なコミュニケーションツール

私は気管切開をしていて、スピーキングバルブというものを取り付けることで初めて声を出せるのですが、普段よりも痰が出やすくなったり喉がすごく乾燥したりするので、常時声を出せる状態にはしていられません。

そのため、普段から声を出せない状態の時にはメモ帳を使った筆談や携帯電話のメール作成画面に文字を打ち込むなどして相手に自分の意思を伝える工夫をしています。

たとえば、電車移動の際にはあらかじめメモ帳に降りる駅名を書いておきます。そうして、改札を通る時に駅員さんに降りる駅名が書かれたページを開いて見せるとすぐに伝わって対応してもらえます。1ページにつき1つの駅名で、なるべく大きめな字で書くと駅員さんが分かりやすいと思います。

メモ帳や携帯電話など、とても身近なものではありますが、使い方によっては意外とすごく便利になったりすることもあるので、こうした身近なもので自分に合った活用法を考えてみるのも楽しいかもしれません。


ICカードの有効利用

車いすに座ったままの状態で電車の切符を買う時のちょっとした工夫です。

鉄道会社や駅によって券売機の形状は異なる場合もありますが、券売機が垂直ではなく斜めになっていて、上の方にいくほど体から離れていくようなタイプの形状をしているものがあると思います。特にそうしたタイプの券売機の場合だと、下の方の液晶画面は手を伸ばして届くものの、上の方の液晶画面にはどうしても届かない、なんていう経験をされることがあると思います。

そんな時にお勧めなのが、PASMOなどのICカードの角を使って液晶画面にタッチする方法です。これなら必死に手を伸ばさなくても少し余裕を持ってタッチすることができます。そして、切符の値段までタッチし終わった段階でカードをそのまま押し込めば切符が出てくる、というわけです。

券売機によっては液晶画面が反応しにくいものもあるのが難点ですが、ちょっとしたことで必死に手を伸ばして切符を買わなくて済むので、試してみてください。


髪の毛の侵入防止策

気管切開をしている人にとって髪の毛を切るということは、実は地味に怖いことなのです。なぜかというと、切った髪の毛が首に巻いたクロスの隙間からするすると気管の中に入ってしまうかもしれないからです。実際、普通にクロスを巻いただけだと、カット終了後は首回りに髪の毛がたくさんくっついていて、とても怖い思いをしたことがあります。

どうしたものかといろいろ考えた結果たどりついたのは、クロスを巻く前に縦長のタオルを軽くねじって厚みをつけてから、喉の気管切開したところよりも上の部分に巻きつけて、そのタオルの上からクロスを巻きつけるという方法でした。

そうするとクロスの隙間から髪の毛が侵入してもタオルが髪の毛を受け止めてくれるというわけです。この方法にしてからはカットした後の首回りについている髪の毛はそれまでよりずっと少なくなりました。気管切開をしている人もそうですが、カットした後に首回りに髪の毛がくっついているのが嫌だという人にもお勧めできると思います。