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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年3月号

知り隊おしえ隊

目が見えなくても使える・楽しめるグッズたち

岡田弥

はじめに

私は日本ライトハウス情報文化センターのサービスフロアで視覚障害者向けの用具や機器、パソコンなど200点あまりを展示・紹介・販売しています。視覚障害者が使える機器や用具というのは、一般にあまり販売されていないものが多く、手に触れて確かめてもらう機会も少ないので、ぜひ足を運んで体験していただこうというのが趣旨です。

視覚障害者用の道具と言えば白杖や点字器、拡大読書器など特殊なものを連想しがちですが、実は一般に売られているグッズの中にも視覚障害者が便利に使えるものが結構あるのです。

今回は、私の職場で展示・紹介しているものや私が個人的に集めたものなどの中から、一般に手に入りやすいグッズを何点か紹介してみたいと思います。

大きければ見やすい

視覚障害者の中には、大きなものなら見えるというロービジョンの人がたくさんいます。

電気屋さんで売られているデジタルカメラが大変役に立ちます。最近のデジタルカメラは低価格なものでも、解像度も高く、ズーム倍率も高くなっているので、簡易の拡大読書器として十分に利用可能です。

また、ジョークグッズとして売られているジャンボサイズのグッズなどが意外と便利に使えます。

私はA4サイズの電卓というものを持っています。普通の電卓の5~10倍くらいの大きなサイズで、買ってはみたもののじゃまなので私は使っていませんが、ロービジョンの人たちはかなり興味を示します。

あるいは「ジャンボトランプ」。100均ショップでも売っていますが、通常のトランプの3倍くらいの大きさがあります。

こうした商品はおもしろ半分に作られた商品ですが、結構いろいろなものが発売されていますし、ジョークグッズとして安く手に入るものが多いのが良いところです。

コントラストと反転で見やすくなる

ロービジョンの人の中には白地に黒の文字より黒地に白の文字のほうが見やすいとか、コントラストがはっきりしていると見えるという人もいます。そういった人には、黒い商品というのは便利です。

たとえば、「黒いしゃもじ」。ご飯をよそう時に使いますが、ご飯は白い場合が多いので、しゃもじは黒いほうがコントラストがついて、ずっと見やすいのです。歯ブラシを選ぶときも、歯磨き粉が白いので、毛先の黒っぽい歯ブラシを選ぶなんていうのも、ロービジョンの方は意識しておられるケースが多いです。

触って分かるグッズ

大きくしたりコントラストをつけたりすることで見えるという人もいますが、それでも見えない人は、視覚の情報を触覚や聴覚に置き換えることになります。

メガハウスから発売されている「オセロ 極(きわめ)」にはコマの黒い面に凹凸が付けてあり、触って分かるようになっています。また、このオセロはコマと盤が一体になったオセロで、盤に組み込まれたコマをクルクル回して使用します。コマがなくならないというのも、特に視覚障害の人にはありがたいかもしれません。

音が出るグッズ

最近は音が出るグッズが増えてきて、視覚障害者でもこうしたグッズを利用している方がたくさんおられます。

昨年の12月、セイコークロックから「ピラミッドトークDA205」が発売されました。この時計はピラミッド型で、時間表示が裏面にしかなく、時間を知りたいときはピラミッドのてっぺんのボタンを押すと音声で案内してくれます。これは夜中に目が覚めて暗い中でも時間を確認できるようにという機能のようですが、ここで、時刻やアラームの設定などすべて音声で読み上げる機能を付けるところが、さすがセイコーさんというところです。

ソニーから発売されているシンセサイザーラジオ「ICF-RN933」は、本体表面に黄色い「音声」ボタンが付いており、これを押すことで現在の放送局名や時刻を読み上げます。通勤の満員電車の中でわざわざラジオを取り出して液晶を確認しなくても、放送局名や時間が分かるようにという配慮で付けられた機能のようです。

ご存じの方も多いと思いますが、NTTドコモの「らくらくホン」シリーズは、ほとんどすべての操作を音声でガイドしてくれます。もともとはお年寄りの操作ガイド的な意味合いだったようですが、今ではすっかり視覚障害者も含めて開発されているようです。

姿を消す名品たち

7、8年前にタカラの「バーチャルベースボール」というゲームを手に入れました。ピッチャーの投球音を聞いてタイミングを合わせてバット(ゲーム機本体)を振ると「アウト」「ヒット」「ホームラン!」など音声で言ってくれるものです。晴眼者も視覚障害者も全く関係なく使えるので、大いに盛り上がって遊んでいたのですが、すぐに製造中止になり、テレビにつないで画面を見ながら遊ぶものに変わってしまいました。

同じ頃、セイコークロックが販売していたドラえもんの目覚まし時計は、ドラえもんの鼻を押すと「今、○時○分だよ」とドラえもんの声で知らせてくれました。時刻セットやアラームセットもすべて音声で利用でき、癒し系グッズとして人気でしたが、これまたすでに製造中止となってしまいました。

ほかにも、日本ビクターが販売していた音声フルガイド付きの電話機や、パナソニックの耳式音声体温計など種々の名品がありましたが、いずれもメーカーがその分野から撤退してしまったり、モデルチェンジによって製造中止になったりして姿を消してしまいました。

共用グッズの誕生と消滅

ここまでの例でも分かるように、視覚障害者も便利に使えるような共用グッズの機能というのは、最初から視覚障害者用に開発されたものは少なく、たまたま使ってみたら、視覚障害者にも便利だったというものが多いようです。そして、たまたま装備された機能が人気を呼び、次期モデルでさらに改良される場合もありますが、次のモデルではその機能がなくなってしまうという残念な結果になることが多いのが現実です。

たまたま見つけた共用グッズの使い勝手の良さを、多くの人に知ってもらい、メーカーにも確実に伝えていくことが、こうした名品をなくさないでおくには必要なのでしょうね。

おわりに

一般にも手に入る便利なグッズを紹介してきましたが、もちろん、ほかにも多種多様なものがあり、簡単に紹介しきれるものではありません。

視覚障害は情報障害と言われますが、こうしたちょっと便利なグッズの情報自体もなかなか必要な人に届かないという難しさがあります。今後も、視覚障害者も使える・楽しめるグッズの情報収集とともに、その便利さや使い方を多くの人に知ってもらえるような情報発信に努めたいと思っています。

(おかだあまね 日本ライトハウス情報文化センターサービス部)