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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年10月号

ぬくもり福祉会たんぽぽにおけるソーシャルファームの取り組み

働く人の声

たんぽぽのソーシャルファームで働く人たち

岡田尚平(おかだしょうへい)

朝8時、おはようございますと元気にタイムカードを押すAさん。障害者就労支援センターに登録していたAさんは、2年前ハローワークを通じて応募してきました。昨年、たんぽぽがソーシャルファーム事業を始めましたが、Aさんには当初から参加してもらっています。今ではリーダー的立場で、他の障害をもった方の指導をしてもらうまでになりました。

朝は出勤すると、まず事業所内にある厨房に向かいます。法人が経営するデイサービス、グループホームで使用する野菜の注文をとるためです。そして注文に合わせ、野菜を揃え、納品します。それが終わると、畑に向かい、種まきをしたり、草取りをしたり、水まき、収穫と忙しい時間が過ぎていきます。夕方になると、厨房から出る生ゴミの回収です。生ゴミは、畑の片隅に設置してあるコンポストに入れ、肥料としてリサイクルされます。

Aさんに「仕事は辛い?」と聞くと、「今年は暑くて、外での仕事は大変でした。でも畑作業が自分には合っているんです。自分たちが世話をした野菜が育っていくのが楽しみで、収穫の時には、キズをつけないように気をつけています。そして、思っていた以上にたくさんの野菜が収穫できた時は、非常にうれしいです。家の人も、いいところに勤められてよかったねといってくれています」と答えてくれました。

Bさんは、出勤するとAさんとともに畑に出かけます。Bさんに話しかけると「たんぽぽに入ってもう1年経つので、後輩が入ってきたら、きちんと指導できるようにもっと頑張って仕事を覚えたいです」と元気に答えてくれました。彼は、以前一般企業で出荷の仕事をしていました。

「あの時は大変でした。仕事の仕方もよく分からないのに、指導してくれる人が変わると、違うことを指示するんです。どう作業してよいのかわからず、まごつきながら毎日忙しい日々を過ごしていました。そんなこともできないのかと怒られたり、時にはゲンコツが飛んでくることもありました。今は、自分のペースで仕事ができ、気持ちいい汗がかけます。

今年は暑くて大変だったけど、家の中にいても暑いし、そんなことは言っていられません。それよりも、採れた野菜の出来が悪かったり、せっかく収穫しても保存しているうちに腐ってしまったときのほうが辛いです。自分で食べるならいいけど、(お金を払って買ってくれた)人が、食べるものだから(いいものをつくらないといけない)。毎日が忙しいけど、ケガをしないように注意して、失敗を恐れないで、次に何をやるか考えながら、これからも仕事をやっていきたいと思います。そして、もっと多くの人にたんぽぽ(の自分たちが作った野菜)のことを知ってもらいたいと思っています」

今回紹介させていただいた2人は、無断欠勤もせず毎日元気にファームにやってきます。おそらく今までの職場では体験できなかった、働くことの喜び、生きがいをここで見つけ、また周りの人に喜んでもらう喜びを発見したと思います。