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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年10月号

1000字提言

壁のないコミュニケーション

尾濱由里子

私が視覚障害者だということを大人の人に伝えるのは割と簡単です。なぜなら白杖を持っているから。何て便利な杖でしょう。たまに私の実家のある田舎に行くと「足が不自由なんですか?」「その棒は何ですか?」なんて聞かれることもありますけど(笑)。まぁどんな見え方だとか、どんなことが不便とか細かく伝えるのはちょっと大変ですが、それでも漠然と「目が見えない人」ということは分かってもらえるようです。

今、私には夫と5歳の娘がいます。娘が生まれた時、私の目のことをどうやって伝えたらいいのかな?と考えてみたものの、赤ちゃんのお世話はそれはそれは大変なのであまり深く考える余裕もなく日々が過ぎていきました。

月日が経つうちに、娘は私に何かを見せたい時は私の手をとって、その見せたい物に触らせるようになりました。スプーンでごはんを食べさせようとするとそのスプーンを自分でつかんで口に入れてくれます。ある時は、私の手をとって引っ張るので、何かな?と思い触ってみたら、おむつ換えの時に転がり出たころころうんちでした(笑)。言葉が話せるようになると、テレビに何が映っているかを「ママ、ぞうさんやで~」と関西弁で伝えてくれます。

どれも教えたわけではないのに、夫やヘルパーさんが私に接しているところを赤ちゃんの頃からじい~っと見ていて、私とコミュニケーションするにはどうしたらいいのか、自分で考えて一番いい方法を見つけたのでしょう。娘のお友達が私に「○○ちゃんのママ~、見て見て~」と何かを見せにきた時も「ママは目が見えへんからおててで触るんやで~」と私に見せる方法を教えてあげてました。お友達もそれを聞いて早速私に触らせてくれました。こういう順応の速さやコミュニケーション能力の高さを見るにつけ、子どもってすごいなぁ~!って思います。

保育所にお迎えに行くと、娘のお友達が私のところにわらわらとやってきて「その棒なぁに?」「何で目が見えへんの?」と率直な質問をしてくれたり「これ見て見て~」と自分のかわいい服をアピールしてくれたり、「○○ちゃんのママの帽子かわいい~」と褒めてくれたり、私が視覚障害者ということが全く壁にならずに普通に接してくれることが本当にうれしいんです。何で目が見えないかなんて、大人なら、ちょっと聞きづらいですよね。本当はどんどん聞いてほしいんだけど、白杖が壁をつくっちゃうのかな。やっぱりちょっと引いちゃいますよね。

子どもたちの素直なコミュニケーション、私もシャイな大人の一人としてぜひ取り入れていきたいものです。

(おはまゆりこ 障碍者自立生活センター・スクラム、障碍者生活支援センター・いきいき)