音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年11月号

知り隊おしえ隊

「ゲゲゲの女房」のロケ地を訪ねて
~深大寺界隈のおすすめスポット

長谷川恭子

NHKの連続テレビ小説、「ゲゲゲの女房」をご覧になりましたか? 漫画家、水木しげる氏の妻、武良布枝(むらぬのえ)さんが夫婦の半生を綴った同名の著書がテレビ化され、今春4月から9月まで放映されました。ドラマの舞台は布枝さんの故郷、島根県安来市から始まりました。布枝さんは境港市に住む妖怪漫画家、水木しげる氏とお見合いを通して知り合います。わずか5日後には結婚式を挙げ、上京して新居を構えます。舞台は東京都「調布市」に移ります。放送以来、東京都調布市と鳥取県境港市は訪れる人たちでさらに賑わいを見せているようです。

ところで、妖怪漫画家で知られる水木しげる氏は現在88歳で、調布市の名誉市民でもあります。戦時下、ラバウルで左腕を失うのですが生きて日本に帰れたことから、幼少時代から好きだった漫画を描いて身を立てる決心をします。極貧の生活の中にあっても片腕がなくても連日、筆舌に尽くしがたいほどの努力をする夫を布枝さんは支え続けていきます。「墓場鬼太郎」「河童の三平」「悪魔くん」などの漫画が次々にヒットし、1968年「墓場鬼太郎」は「ゲゲゲの鬼太郎」と改題されてテレビアニメとなります。以後も、夫婦の二人三脚が続いていきます。

では、水木ご夫妻が結婚以来50年の時を過ごされている「調布市」と隣接する各市についてご紹介します。

東京都は23区と26市からなり、調布市はその中部に位置します。市の中心部を京王線(新宿~京王八王子)が走り、調布市内の駅は8つあります。また甲州街道、旧甲州街道、東八道路、中央自動車道が通り、「調布インター」があります。京王線からJR中央線(東京~高尾)へと北に広がるエリアに調布市はあり、ロケ地「深大寺」を始め、「都立神代植物公園」「宇宙航空研究開発機構(JAXA)」、大島・新島・神津島へ毎日運航する「調布飛行場」、その一角には「プロペラカフェ」があり、離発着する飛行機を見ながら食事やお茶を楽しむことができます。またコンサートやスポーツ会場の「味の素スタジアム」、個人購入が可能な「調布卸売市場」等があります。

武蔵野市には「東京都井の頭恩賜公園・動物園」の緑が広がり、三鷹市にはスタジオジブリの「三鷹の森・ジブリ美術館」「国立天文台」「都立野川公園」「国際基督教大学」「近藤勇墓所」等が点在します。そして、府中市には「東京競馬場」「武蔵野の森公園」「府中の森公園」と、非常に緑豊かな公園と見どころスポットを有しています3)

お待たせしました。では「ゲゲゲの女房」のロケ地、深大寺界隈を見てゆきましょう。

「深大寺」の開山はとても古く、奈良時代の天平5年(733年)満功上人(まんくうしょうにん)によります。東京都台東区浅草の「浅草寺」(628年)に次ぐ古刹で正式名を「天台宗別格浮岳山昌楽院深大寺」と言います。名前の由来は水の神「深沙大王」を祭った「深沙大王寺」を縮めて「深大寺」になったという説があります。開山当時は法相宗でしたが天台宗の高僧を遣わせて改宗します。東国随一の密教道場として非常に栄え、十二坊を有していたと言います2)

「山門」は茅葺き屋根で深大寺にある建造物中最古のものです。天保3年、慶応元年と二度の災禍からも逃れました。

境内へ行くには階段を上り、さらに山門をくぐります。車いすの場合は、山門に向かって右側の坂道を利用しましょう。

境内の右手には「鐘楼」があり、平成13年まで使われていた旧梵鐘は永和2年(1376年)に造られ、都内で3番目に古い重要文化財です。今は境内の釈迦堂に安置されています。

「本堂」にも重要文化財の「釈迦如来金銅倚像」が安置されています1)。これは関東最古の仏像で白鳳期(645~710、文化・美術史上の時代区分)に造られ、金銅仏の傑作と言われています。

本堂左手の「元三大師堂(がんざんだいしどう)」は慶応3年に建立され、その名は正月3日に没したので元三と言うのだそうです。

御開帳は50年に一度で、次回は2034年だそうです。毎年、3月3日と4日は厄除元三大師大祭《だるま市》が開かれます。その由来は元三大師がだるまに似ていたことから苦難に遭っても七転び八起きで立ち直りを願う、と言う説と、当時、関東の地は養蚕が盛んで、蚕が無事に育つようにとだるまに似た繭玉を人形にして願いを込めた、と言う説があるそうです4)

春とは言えまだまだ寒く雪のちらつく年もあますが、参道はだるまを買い求める人たちで大変な賑わいをみせます。

参道脇には清らかな湧き水が流れ、土産店が立ち並び、甘味も楽しめます。参道前の「鬼太郎茶屋」はテレビ放映でさらに人出が出ています。

深大寺と言うと「深大寺蕎麦」を思い浮かべる人も多いかと思います。江戸時代、東叡山門跡の大明院法現王に献上し賞賛を得たことから始まったと言う説と、徳川三代将軍家光が推奨した、と言う伝えもあることから、よほど古くから有名だったのでしょう。「関東の色々な地に蕎麦を植えたがこの地のものに及ぶものなし」と言われていたそうです2)。門前の「嶋田屋」一軒から始まり、今では寺の周辺に二十数軒を数えるまでになりました。

蕎麦屋に車で行く場合は、営業時間と駐車場の有無のチェックをお勧めします。昼前でも満車ということが度々あって、調べると朝の9時、10時から営業している店もありました。有料駐車場もあります。

蕎麦屋が軒を連ねる「深大寺通り」は、春になると見事な桜の花のトンネルになります。道は緩やかにカーブし、先へ先へと伸びる美しい光景に心が躍ります。

そして、散策に疲れたら近くにある「深大寺温泉ゆかり」の湯に浸ってみるのも楽しいと思います。風水を生かした12種類の風呂があり、夕焼け割引、シルバー割引などもあるようです。ただし、館内は車いすで移動することができないので、利用の際は、事前に問い合わせされることをお薦めします。

深大寺へのアクセスは京王線「つつじヶ丘駅」と「調布駅」から、またJR中央線「三鷹駅」と「吉祥寺駅」からそれぞれバスが出ています。

では深大寺を後にして、今度は参道左側の角を曲がり、坂を上がって行きましょう。この坂道の距離は短いのですが、かなり急勾配です。車いすの場合は、一気に押し上げてもらうしかないと思います。上がった先に「都立神代植物公園」のもう一つの入り口「深大寺門」があります。一方、「正門」は武蔵境通りに面した所にあり、アクセス可能な京王、小田急のバス停があります。駐車場は正門の北側です。

「神代植物公園」は47万平方キロメートルの面積を有し、以前は街路樹などを育てる苗場として使われていました。昭和36年、都内初の植物公園として開園しました。散策に絶好の道、神代植物公園通りを挟んで南北に広がっています。現在4800種類、10万株の植物が植えられ、四季折々の花と緑を楽しむことができます。園内は平坦で玉砂利の部分、コンクリート部分、芝生とあります。車いすトイレは11か所あります。

圧巻は、やはりバラ園です。5月と10月の二度開花し「バラフェスタ」の開催時期は夜間のライトアップも楽しめます。午前9時半に開園すると朝露をまとったバラを前にカメラ、三脚を構えシャッターチャンスを待つ人、キャンバスと絵の具を広げる人たちが集まり始めます。また、遠足の園児や児童の歓声が噴水を取り囲んだバラ園一体に響き渡り心安らぐひとときです。大温室の前のカリヨンからは季節ごとの曲が流れます。

園内では花や盆栽、山野草の展示会・講習会等も開催されています。入園の「年間パスポート」もあります。深大寺と合わせてぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

最後に、境港市の「水木しげるロード」は800メートルに渡って続き、ねずみ男や鬼太郎など妖怪のブロンズ像が並ぶ人気スポットです。こちらの街歩きもお薦めです。

(はせがわきょうこ 東京都三鷹市在住)


【参考図書】

1)「調布市史」上巻
2)「深大寺とその付近」(深大寺発行)
3)「東京生活」No.27調布・三鷹(枻出版)
4)「深大寺ものがたり」

【参考URL】