「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年6月号
列島縦断ネットワーキング【神奈川】
「かわさき基準」による福祉産業の推進
―福祉産業都市かわさきを目指して―
福田克実
1 かわさき基準作成の経緯
川崎市は、市民が高齢者になったり、疾病にかかったり、障がいをもったとしても、住み慣れたまちで、誰(だれ)もが自立して楽しく安心に暮らせるためには、産業面から市民生活を支援することが必要であり、また、同時に「福祉産業」は、今後の高齢化社会の進展を踏まえると、発展を期待できる「未来産業」であるとの認識のもと、川崎市に集積する企業の持つ技術力やノウハウを活かした福祉用具・サービスを創出するため、新たな福祉産業振興の指針として「かわさき福祉産業振興ビジョン」を平成20年3月に策定し、その中で、福祉製品(福祉用具や共用品など)の開発ガイドラインおよび評価基準である「かわさき基準(Kawasaki Innovation Standard)」を定めました。
2 かわさき基準について
(1)かわさき基準とは
かわさき基準とは、自立支援を基本概念とした川崎市独自の福祉製品の基準であり、どういった配慮がなされていると良い福祉製品であるかを示した、福祉製品の開発ガイドラインです。
理念の作成にあたっては、福祉先進国であるスウェーデンにおける福祉の基本方針や理念を参考にしつつ、わが国の介護保険における理念をも包含しながら現状を踏まえ、8つの理念として整理しました。
かわさき基準は、「理念」と「製品開発ガイドライン」から構成され、相互に整合性を有しています。
「理念」を踏まえつつより具体的に福祉製品のあり方を示したものが「製品開発ガイドライン」です。
「製品開発ガイドライン」は、本文と細則から構成されています。本文は、福祉製品の種類を問わず共通的に適用される事項を示したもので、細則は、アクティビティ・利用者像ごとに詳細化し配慮すべき事項を示したものです。
「理念」と「製品開発ガイドライン」を用いて、利用者にとって最適となる福祉製品の開発目標を企業に提示することで、企業にとって「かわさき基準」は競争力の高い製品を生み出す源泉となり、川崎市の福祉産業の振興に寄与することが期待されています。
(2)かわさき基準の中心概念
かわさき基準の中心概念は、「自立支援」です。
自立とは、すべてを自分でできることを意味するものではなく、「自ら望む」、「主体的に選択、自己決定できる」ことであり、家族や地域が協力することも含めて実行、実現できることです。
(3)かわさき基準の理念
かわさき基準の理念は、
ア「人格・尊厳の尊重」
利用者の人格が尊重されていること。
イ「利用者意見の反映」
サービス提供システムや福祉製品の開発過程に利用者が参加しその意見が反映されており、利用者が利用したくなるような福祉製品であること。
ウ「自己決定」
あらゆるサービスがサービスの提供の各過程において、十分な説明と理解がなされ、本人の自己決定に基づいて行われること。
エ「ニーズの総合的把握」
利用者の心理的・身体的・社会的ニーズを総合的に捉えていること。
オ「活動能力の活性化」
利用者の残存能力を引き出し、心理的・身体的・社会的活動能力が活性化されるように配慮されていること。
カ「利用しやすさ」
必要なサービス・相談・アフターフォローが身近なところで速やかに提供されていること。
キ「安全・安心」
サービス提供のすべての過程において、安全・安心が保障されていること。
ク「ノーマライゼーション」
どのようなニーズを抱えていても、できうる限りの住み慣れた環境で社会生活が営むことができるように配慮されていること。
以上の8つの項目で表現することができます。
3 「かわさき基準推進協議会」の設立等
かわさき基準の「理念」と「製品開発ガイドライン」に基づく福祉産業の振興を担う組織として、福祉関係団体等で構成する「かわさき基準推進協議会」を平成20年6月に設立し、同時に実務機関として福祉用具の専門家等を委員とする企画評価運営委員会を組織しました。
また、かわさき基準推進協議会の事務所兼情報発信基地として「かわさき福祉開発支援センター」を川崎市産業振興会館7階に開所しました。
4 かわさき基準による福祉製品の認証について
(1)かわさき基準による認証
かわさき基準推進協議会では、かわさき基準の理念の普及、福祉産業の振興の一環として、かわさき基準による福祉製品の認証事業を行っています。これは、福祉製品の公募を行い、かわさき基準に基づいて審査のうえ、認証を行うというものです。
審査にあたっては、かわさき基準推進協議会の福祉専門家の意見のほか、福祉関係者によるモニター評価を行っています。
モニター評価の実施にあたっては、市内の福祉施設、かわさき基準推進協議会の構成団体へ依頼しています。モニター依頼先については、公募製品の利用者像を考慮して選定しています。
公募製品のモニター評価は、かわさき基準の理念である「利用者意見の反映」に基づくものであり、かわさき基準の認証の特徴でもあります。
平成20年度より認証事業を行っており、3年間で、52製品の認証を行いました。
(2)認証福祉製品のPR
認証された福祉製品は、川崎市産業振興会館にあるかわさき福祉開発支援センターに展示できるほか、かわさき基準推進協議会のホームページや認証福祉製品パンフレットに掲載します。
また、国際福祉機器展など展示会へかわさき基準推進協議会が出展する際に、当協議会のブースに展示しPRを行います。
(3)かわさき基準認証マークの使用
認証事業者は、かわさき基準推進協議会と契約を締結した後、かわさき基準認証マークを使用することができます。
かわさき基準(KIS)認証マーク
(拡大図・テキスト)
5 今後の事業展開
かわさき基準推進協議会では、かわさき基準に基づく福祉製品の認証事業を推進することにより、認証福祉製品の普及を図っていきます。また、川崎市では、市内中小製造事業者が行うかわさき基準の理念に沿った福祉製品の開発・改良や福祉機器展示会への出展等に対して補助等を行うことにより、川崎発の福祉製品の創出を図ります。
今後も川崎市・かわさき基準推進協議会が連携し、福祉産業の振興を図っていきます。
(ふくだかつみ 川崎市経済労働局産業振興部新産業創出担当)
○「かわさき基準」Webサイト
http://www.k-kijun.jp/
かわさき基準推進協議会
- 会長
- 特定非営利活動法人日本アビリティーズ協会会長 伊東弘泰
- 特別顧問
- 千葉商科大学学長・川崎市市政アドバイザー 島田晴雄
- 構成団体
- 特定非営利活動法人日本アビリティーズ協会
- 社団法人全国脊髄損傷者連合会
- 社団法人日本リウマチ友の会
- スウェーデン・クオリティケア
- 財団法人テクノエイド協会
- 日本ALS協会
- 社会福祉法人川崎市社会福祉事業団
- 財団法人川崎市身体障害者協会
- 川崎市身体障害者協会
- 川崎市福祉サービス協会
- 川崎市工業団体連合会
- 川崎商工会議所
- 財団法人川崎市産業振興財団
- 川崎市