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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年7月号

被災状況・被災者支援
視覚障害者への支援の取り組み

三浦久幸

被災状況

3月11日、午後2時46分、マグニチュード9.0の東日本大震災による岩手県内の被災地域は、県内34市町村中沿岸地域(太平洋側)12市町村に及んでいる。人的被害は死者4,542人、行方不明2,607人となっている(6月16日現在)。

市町村役場・工場・商店、そして住宅が津波による流失と火災、浸水を受け、一瞬にして市街地が壊滅し甚大な被害を受けた(テレビ等の報道でご承知のとおり)。

岩手県視覚障害者福祉協会(以下、視福協会)に所属する会員は、被災地域に74人が居住しており、いまだ行方不明の会員が3人いる。被災状況は、家屋流失が9棟、損壊2棟、浸水(2階まで)が6棟であり、23人の会員が被害に遭った。また、4月7日の余震では、県内陸地域で2棟が倒壊する被害を受けた。

避難所生活(学校・公民館・寺・知人や友人宅を含む)を余儀なくされた方は19人いる。現在も、避難所生活を続けている会員が7~8人いる。

支援の取り組み

会員の被災者支援に当たり、安否確認と状況把握が重要と判断した。しかし、停電により通信網が遮断され、早急に把握することができなかった。頼りになったのはラジオとインターネットであった。地元のIBC岩手放送とNHKに、視覚障害者の安否情報の提供と避難所等における支援のお願いを繰り返し放送していただいた。

一番頼りになったのは、インターネットgoogle安否確認サイトであり、視福協会役員と家族は、安否確認のできない会員を登録し、情報の提供を依頼した。このことにより、結果として20人くらいの安否確認ができた。

実際の支援行動は、地域格差もあり数週間経過した後となった。従って、視福協会としての具体的支援活動には震災発生後、1か月を要した。この間、日本盲人福祉委員会東北関東大震災視覚障害者対策本部や支援ネットワークインタッチ等の協力を得て、情報収集にあたった。また、被災地区民生委員の方々と近隣住民の方から情報提供をいただいた。

視福協会として、電話連絡や知人友人を介して状況確認に努力する一方、各支援団体と関係者個人からのこうした情報をもとに被災地域を3日間かけて回った。直接、個別に面談して、具体的にどのような支援を求めているか、必要であるかを確認した。さらに電話を通じて再確認を行い、日常生活用具の支援を行った。同時に、各支援団体に必要な用具の支援協力を要請した。

一方、視福協会として支援できる内容には限界があるものもあるので、行政機関に「各種制度支援の情報提供、手続き等代筆・代読、居住支援と職業自立支援、日常生活用具給付等」の協力要請を行った。

今後の展望

大震災による被害が甚大であるため、被災地の復旧・復興は、長期間にわたると思われる。そして、視覚障害者への支援の取り組みもまた、長期にわたるものであり、決して一過性のものではない。このことを視福協会としても、しっかりと明記しておくことが重要と考えている。

しかし、安定した日常生活を送るには、住居の確保と生活安定のための支援が早急に解決されなければならない緊急かつ重要課題である。

また、視覚障害者は情報障害者でもある。避難所内での掲示物等の情報は活字であり、視覚障害者はそれらを読むことができない。視覚障害者への情報支援は重要な課題である。加えて、在宅視覚障害者も自宅孤立の傾向にあり、生活と移動のための支援と情報提供が必要である。

視覚障害者に対する情報提供があらゆる機会と場所において、適格かつ迅速に行われることが大切である。視福協会としてもあらゆる通信手段を活用して、被災地居住の会員に対して、随時情報発信していかなければならない。

また、前述の視覚障害者の被災状況は視福協会所属の員数であり、その他、中途失明者や当協会以外の人を含め、ある組織の調査では岩手県内で4,591人いる。被災地域では、その約10%の450人が居住していると考えられる。

避難所と在宅におけるこの人々への支援は一体どうなっているか、状況を把握することができない。地域社会で、知人や住民、家族そして支援ボランティアと行政の支援を受けていると推測される。推測は視覚障害者の実態把握ができないからである。それが故に、視覚障害者を含め身体障害者の災害時における情報提供は、個人情報保護法等の特例扱いとしてできるような、組織づくりと法的裏付けのある制度とすることが重要であると考えられる。

最後になりましたが、未曾有の大震災で犠牲になられた方や、被災された皆様方に衷心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。そして、一日も早く復興され安定した生活ができるよう願うばかりである。

東日本大震災の教訓として、会員の家族構成や緊急時の連絡先等、情報を的確につかんでいることが大切であると痛感した(個人情報厳守保管で)。それは安否確認を含め、状況把握のため被災地市町村役場や関係機関を訪問し、視覚障害者に係る情報は皆無といってよかったからである。

(みうらきゅうこう 岩手県視覚障害者福祉協会副理事長・岩手マッサージセンター所長)