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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2011年9月号

列島縦断ネットワーキング【福岡】

就労と社会参加の推進
―大牟田市障害者協議会の取り組み

大場和正

どの地域にも、そこに住む人々が誇れる祭りがあります。私たちの街にも古い言い伝えに基づいたおおむた「大蛇山(だいじゃやま)まつり」があります。今年50周年という大きな節目を迎えるその祭りのハイライトの一つは、1万人の市民総踊りです。ただ、長い間その踊りの輪の中に障がいのある人たちを見ることはありませんでした。

しかし、今から14年前、重度の障がいのある女性の「私も総踊りに参加したい」という小さな願いに、祭り実行委員会が応え、総踊りの枠に障がい者団体枠が設けられました。その時、市内のすべての障害者団体や親の会や支援施設が一堂に集まりました。その出会いが、障がいの種別を超え、当事者・家族・支援者という立場を超えた本会開設の母体となり、3年後の1999年12月9日に本会が設立されました。

ノーマライゼーションを目指す本会が、特に力を入れたのは、就労と社会参加です。就労に関しては、三つの方向を目指しています。

一つ目は、「社会的事業所」の開拓です。社会的事業所とは、地域社会の中で解決が求められている障がい者の就労という課題に、本会が一つの事業体として、障がい者や就労困難者と言われる人たちを直接雇用していく試みです。

本会が立ち上がった頃、リサイクル資源手選別事業を行うリサイクルプラザが建設されることとなりました。本会はこのリサイクル手選別事業を、障がい者就労施策として、本会に委託するよう市に働きかけました。市と共にその実現性や現実性について話しあったり、他市の施設を研修するなど、双方で努力と調査を重ねた結果、2002年2月、リサイクルプラザ完成とともに本会への委託契約が実現しました。その結果、ハローワークを通じた障がい者雇用で、全従業員15人中11人の障がい者を雇用することができました。

2004年には駐車券発行事務事業を受託(中心地区商店街振興組合より)。2006年には市指定袋配送事務事業を受託(商工会議所より)。2007年には障がい者等教養文化施設サン・アビリティーズおおむたの指定管理者(大牟田市より)になるなど、それぞれの受託事業ごとに障がい者雇用を進めています。今後も、さまざまな事業に挑戦し、障がい者の就労はもちろん、各種事業にユニバーサルな市民サービスを確立し、社会的事業所としての地域貢献を行っていきたいと思います。

二つ目は、「工賃倍増」です。市内の全障がい者施設が本会に加盟していますが、その中から就労継続支援B型と地域活動支援センターを中心とした、アンテナショップというプロジェクトをつくり、各施設の製品販売や役務の獲得等を通じた工賃倍増に取り組んでいます。

製品販売については、地元のスーパーとのコラボレーションによる福祉ブースの常設化にこぎつけました。参加施設の個性を生かしながらも、トータルイメージを大切に、お客様の視点に立った販売戦略を目指しています。本年オープンした大型商業施設のご協力の下、福岡市の企画会社と本会のコラボレーションで月に1回、福祉ブースと親子連れのお客様を主とした参加型のデコレーションブースを開設しています。また、行政をはじめ、各種団体のイベントでの販売や記念品の製作等も積極的に行っています。

役務の獲得については、遊具器の洗浄、海苔の選別、デコレーションパーツの製造、また2009年に市より受託した公衆便所清掃事業など、本会が窓口となり企業、事業所、行政からさまざまな業務受託しています。その業務内容に合わせて、加盟施設単独および複数の施設で業務を遂行しています。今後は、その取り組みのバージョンアップを目指して、企画・提案力を高めていきたいと思います。

三つ目は、「一般企業への就労」です。2005年~2007年までの3年間、福岡県の障がい者就労支援事業を受託。就労支援を時系列で体系的に行うためのマニュアル「アクションプログラム」の作成や、障がい者雇用が進まない課題の把握と対策を進めるために、商工会議所とともに「事業所の障がい者雇用に関するアンケート調査」などを実施しました。2009年には本格的な就労支援体制をつくるために、国・県の事業である「障害者就業・生活支援事業」を受託。就労系加盟施設との総合力で、2009年度26人、2010年度37人の就労が実現しました。

また、毎年、特別支援学校の生徒や関係者を中心に、就労系の社会資源の役割や事業内容を紹介し、個別にも相談できるブースを設けた「就労支援のための合同説明会」を開催し、社会資源情報の共有化を進めています。効果的な就労支援や就労後の定着支援を行うには、当事者を含む総合的な課題の解決の必要がありますので、今後は、本会加盟団体はもちろん、行政をはじめさまざまな社会資源との連携を深め、一人ひとりの状況に合わせた包括的な支援ができる体制を作っていきたいと思います。

社会参加に関しては、行政との協働による自立支援協議会活動や、本会独自のサービスの開発およびさまざまな啓発セミナーを実施しています。2007年、自立支援協議会が立ち上げられ、その事務局を市と本会が担っています。障がい者の社会参加を阻む課題解決に向けた期間限定のプロジェクトをつくり、現在までに就労の社会資源を紹介した「社会資源マップ」や、地域移行を進めるための手続きの仕方や社会資源を紹介した「住まい生活応援ガイド」などを作成しました。現在、本会のホームページを通じてその情報提供と更新を行っています。また、民生委員さんと合同のワークショップを開催したり、障がい児の登下校を地域のボランティアが見守るインフォーマルサービスを開発して本会がコーディネートをするなど、確実な成果が見られています。今後も、地域の障がい者理解の促進を進める具体的なプロジェクト活動を展開していくつもりです。

本会独自の取り組みにおいては、2003年に国のコミュニティー施設活用中心商店街活性化事業を受託し、中心商店街の中に、「街かど福祉・人の駅ほっとかん」を開設。障がい者の社会参加支援として、多目的トイレの開放、電動カートの貸し出し、専門家による総合相談や当事者によるピアカウンセリング等のサービスを提供しています。また、本会が指定管理者として運営している「障がい者等教養文化施設サン・アビリティーズおおむた」では、スポーツや文化活動を通じた障がい者の社会参加を進めるために、車いすダンスや障がい者スポーツサポーター養成講座等、当事者視点に立った取り組みを行っています。今後は、災害時の福祉避難所としての役割も担っていきたいと思っています。

本会は、これからも、総合力を最大限に活用し、障害福祉のカテゴリーも超えて、さまざまな市民団体や行政との協働で、障がい者の就労と社会参加を進め、非営利法人としての社会的使命を果たしていきたいと思います。

(おおばかずまさ NPO法人大牟田市障害者協議会事務局長)